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君たちはどう生きるかネタバレ感想(口さがなし)

以下遠慮なく申し上げますのでご承知おきください。いいことも悪いことも勝手な憶測もいっぱい書きました。

<総括>宮崎駿の内宇宙冒険譚≒地獄めぐりの旅。サンプリング感が強くてもしかして〇〇のリライト?


・総括としては面白かった。個人的には風立ちぬよりは面白いという感じ。冒険活劇は冒険活劇だけど、あくまで胎内回帰地獄めぐりであって内へ内へとディープに潜っていく内宇宙冒険譚なので、閉塞感は否めず、あからさまに哲学的すぎて子供向けではなかった(誰向けだったのかは後述)。
 そして「宮崎駿的ワクワクシーンの詰め合わせ」なので一つ一つの冒険がすごく面白くみれてしまうのだけど、シナリオとしてのまとまりには欠けていた。でもこれは「千と千尋」以降どんどん傾向として深まり続けたその延長という感じがした。この方向性で行き着くところまでいってしまったようで、例えるなら夢十夜みたい。子供も大人も「なんかよくわかんねーけど面白かったな?」と感じる映画だと思う。
 過去の作品を想起させるシーンが随所に…というより、全編にわたって全てのシーンが過去の映画を彷彿とさせるので、「宮崎駿AIが作ったのでは?」とすら感じさせるほどに、ミックスコラージュ風味・サンプリング感が強かった。そういう意味では「ゲド戦記」や「アリエッティ」の延長にある感じがしたし、むしろ「ゲド・アリエッティのリライト」なのかもしれない。

宮崎駿の悪意に満ちた作品。悪意に晒されまくる主人公


・序盤から宮崎駿の悪意を感じた。後妻の新しい義母が母そっくりな妹で、思春期迎えつつある眞人にいきなりお腹触らせるところとか何とも言えないいやらしい感じがしてけっこうウヘッ…💦てなった人いるんじゃないかな。固まってしまう眞人の描写を見ても明確に「ほのぼのした健全シーン」じゃなくてすごく陰鬱な性的な感じに描いてたと思う。眞人が可愛らしい美少年なのでまたなんか眞人が可哀想に感じるくらい性の感じを直接お出しされて大人としてはキツい。多分小さい子供にもあの嫌な感じは理屈はわからなくても伝わってしまうだろなー。今回の宮崎駿は主人公少年を悪意に晒すことに抵抗がないんだなと思った。

美少年眞人さんはなぜ"美少年"なのか。息子(たち)へのメッセージ?


・主人公眞人、美少年だと思う。ハウルの感じじゃないけど、パズー・アシタカラインの造形の中で最上位の美人って感じ。個人的にはアシタカよりかっこいい子だと思います。作中でも母親に似て綺麗と言われているし、この造形ライン(宮崎駿の自己投影ラインの主人公顔)で、セリフ補強までして主人公の美貌を担保するの珍しいと思った。
 この美少年感で思い出したのは「これシンジくんじゃね…?」だった。陰鬱で繊細な思春期の美少年ですよ。あと母親似の美少年という設定から吾朗監督のことも想像した。この映画、これまで「子供たちのために」という名目で映画を作ってきた宮崎駿が「息子(たち)のために」描いたんじゃないだろうか。だから大人向けだし、遺言的だし、説教だし、悪意に晒すことに抵抗がないのでは。

序盤のキモさに子供が恐怖する映画


・とにかく君どうバード改めアオサギの気持ち悪さ・怖さがすごい。序盤のホラーみはスリル満点。アオサギのキモい歯から目が逸らせない。悪意満点でつけ回し襲ってくるターミネーターアオサギ・ジョジョ6部ばりに遅いくるキモキモガマガエルに恐怖してたら会場の子供が「怖いィ……!」とグズる。サンキューお子さん!おばちゃんも怖いけど子供はもっと怖いよね!だってこれ息子に向けて容赦なくやってるもんきっと!
 映画館の醍醐味「子供の反応」を吸えて元気になってしまった。トラウマにならないといいな。

ひたすらキモい鳥たち…。鳥好きっておおらか…。


・宮崎駿、鳥嫌いじゃね…?鳥のこと本当に平気でキモく悪く描く。アオサギの中から見え隠れするきったねーブツブツ鼻のオッサンの一部、口に入るものはなんでも食べる悪魔のようなペリカン集団、鼻がやたらデカくて常に鼻息が荒く繁殖限界迎えてぎゅうぎゅうのインコたち…なんでこんなに鳥を悪様に描くのに躊躇がないんだ。そう、今回の宮崎駿は躊躇がまるでネェ。こんなん鳥好き涙目だろ…かわいそうに…とか思ってたら、映画館から出る時にお客が「鳥すごかったね!最高!鳥好きにはたまらん😋」ってニコニコ話しながら歩いてたので、(鳥好きって懐が深いなぁ…)と感心してしまいました。

・出たッ!肥後守!!


父母の描写に出る明確な癖(ヘキ)


・二人のお母さんがエロ担当とロリ可愛さ担当で(駿さぁ…)って感じでわかりやすいし、お父さんが感じ悪おバカ担当(ちなキムタク)。お母さんたちが可愛くてエロい(結局二人ともなんかエロい)のが癖(ヘキ)の強を感じさせてなんとも言えず嫌でした。かわいいだけに。

妖怪みたいなババアたち


・おばあちゃんたちほぼ妖怪…可愛いけどね。頭蓋骨が眞人の4倍、眼球が10倍って感じじゃねぇか…かわいいけど、かわいいけどさ、私はカン太のおばあちゃんみたいなおばあちゃんが欲しい…リアルばあちゃんが…ちなカン太のおばあちゃん私の祖母にクリソツで可愛くて大好きなんです。顔が真四角で。

唯一好きになれたキャラ。運命の輪をもつ女


・話は面白いけど基本みんなが駿の演出する悪意に満ちてるのでキャラが誰も好きになれないな…と思いながら見たけど、一人だけいました…塔の内部世界で出会う地獄世界のキリコさん……最高。超有能海賊つよつよ魔法使いイケメンおばさん。華麗なヨット操舵術を披露するなどモテ属性てんこ盛りで、悪意に満ちた君どうワールドに涼やかに咲く一輪の萱草(着物の色より)。キリコさんの着物が現実でも地獄世界でも車輪模様というかホイールオブフォーチュンなのもめっちゃイイ。

よもつへぐいじゃない


・胎内回帰地獄めぐりなのは確かにそうだしペリカンはあの世界を地獄と称するんだけど、眞人はヒミさんに出されたバタージャムベタ塗りパンを爆食しても普通に無事に現実世界に帰ってきてるということは、よもつへぐいではないということなのであれは地獄≒死後の世界≒黄泉の世界というわけではないらしい。ポニョで描く世界と明確に違う感じなので、死生観に変化があったのかもしれない。
 生命が生まれる前の時間の概念がない世界であり、大叔父さんが心の中に描いた死生観の世界なのかな。

作画の質感


・作画がすごくて、とくに一番最初の火事のシーンの動画とか執拗に全ての線を揺らがせながら描いているのが圧巻。でも、かなり執拗にやりすぎてて、服の布や体の骨格や重心の質感が失われてる感じはしたかも。でもすごい。
 このすごさ、後半ではあまり気にならないと言うか、執拗に描くのをやめてるのかも(のめり込んじゃって作画の質感まで観察が追いつかなかった……)

大叔父さんの内宇宙


・大叔父さん、ほんと説教くさ。直接的に遺言めいててなんというか(ああ、駿は本当にこれが最後と思ってんのかな…)という感じがしてしまった。大叔父さんは自分の内宇宙を引き継ぎたかったんだけど、それはできないことがだんだんわかって、むしろ眞人くんは眞人くんの世界をつくってねと世界を託すことができるようになった、というのがこの映画の背骨だったのかもしれない。だとしたらやっぱりこれは壮大な遺言なのかもしれないな。某トシオサンのこじつけ分析みたいでいやになっちゃうけど…。

ぶつ切りのラストで放り出されるわたしたち


・私が好きなのはラピュタ・ナウシカ・もののけが3トップなんだけど、やっぱり宮崎駿の最高傑作はトトロなのかもしれないな。エンタメ的チューニングを千と千尋以降徐々に放棄して行ったよな〜と思ってて、君どうでは行き着くところまで行ってしまったのか本当にラストのブツ切り感がすごかった。過去最高のブツ切り感。でも大叔父さん(≒はやお)の世界を崩壊させてしまったのだから、駿がこの映画に描くことが本当に何もなくなったのかもしれない。だとしたらもうこれはしかたない。

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