コロナウイルスの影響で定時株主総会の開催が難しい場合の法人税申告時期について
Gx Patnersの寺井です。実は税理士もしてます。
世界中でコロナウイルスの影響がでていますが、日本ではこれから3月決算企業が決算時期を迎え、法人税申告・株主総会シーズンに突入していきます。
今回、個人の確定申告期限は特例的に延長されましたが、法人税の申告期限は事業年度終了から2ヶ月以内(延長の承認を受けている場合には3ヶ月以内)と法律で決まっています。一般的にはいつ申告するのが正しいのか、コロナウイルスの影響で定時株主総会の開催が難しい場合にはどうするべきか、簡単に解説をしてみたいと思います。
法人税は何の数字に基づいて計算するのか?
法律で法人税の計算は「確定した決算」に基づいて行うこととされています。
なるほど、確定した決算。。。
みなさん、決算書というものをみたことがありますよね?
決算書を作ってしまえばそれでいいのか、果たしてそうでしょうか。
確定した決算とは? 正しい手続きの流れ
確定した決算とは、「株主総会で承認を受けた決算書」のことです。
とういうことで、手続きの流れとしては、必ず、
①決算書の作成
↓
②株主総会で決算書の承認
↓
③法人税の申告
(取締役会・会計監査人 非設置の会社を前提)
になるはずです。皆さん、この流れで申告してますか?
株主総会前の申告は有効? 実情に即した判例
決算の承認を受けていない決算書をもとに申告した場合の法人税の確定申告の有効性について争われた裁判が平成19年にありました(中小のオーナー企業を前提としてるようですが)。
結論は、帳簿の作成を完了して、その数字を基礎に作成した決算書をもとに申告すれば、その申告は有効である、という判決が出ました。
じゃあ「確定した決算をもとに」とかいう法律なんなんだよ、という感もありますが、中小企業の場合、オーナーが過半数の株を保有しているパターンがほとんどです。総会の開催有無に関わらず、結論一緒だし、総会を実際に開催してないような会社がほとんどである、という実情には合ってるわけですね。
詳しく知りたい方は下の鳥飼法律事務所のリンクから確認してください。
「株主総会又は社員総会の承認を得ていない決算書類に基づく確定申告の有効性」
(福岡地裁平成19年1月16日判決(請求棄却)、福岡高裁平成19年6月19日判決(請求棄却))
鳥飼総合法律事務所
既に外部株主がいるスタートアップへ
上記の判例のように、実務的には株主総会前に申告しても正しくはないけど有効、ということなのですが、外部株主がいるスタートアップについては、法律のとおりの流れで申告手続きを行うことを当然おすすめします。ファウンダーが過半数を持っている会社がほとんどなので、決議に影響は無いとは思いますが、投資家にきちんと報告をして承認してもらいましょう。
新型コロナウイルス の影響により、定時株主総会を開催することができない状況を生じた場合
法務省より、タイトルについて以下の内容がサイトに掲載されています。
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00021.html
定時株主総会の開催について
今般の新型コロナウイルス感染症に関連し,当初予定した時期に定時株主総会を開催することができない状況が生じた場合における定時株主総会の開催について,以下のとおりお知らせします。
1 定時株主総会の開催時期に関する定款の定めについて
定時株主総会の開催時期に関する定款の定めがある場合でも,通常,天災その他の事由によりその時期に定時株主総会を開催することができない状況が生じたときまで,その時期に定時株主総会を開催することを要求する趣旨ではないと考えられます。
したがって,今般の新型コロナウイルス感染症に関連し,定款で定めた時期に定時株主総会を開催することができない状況が生じた場合には,その状況が解消された後合理的な期間内に定時株主総会を開催すれば足りるものと考えられます。なお,会社法は,株式会社の定時株主総会は,毎事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならないと規定していますが(会社法第296条第1項),事業年度の終了後3か月以内に定時株主総会を開催することを求めているわけではありません。
うーん、これを読むと、コロナウイルスの影響で開催が困難な時は、株主総会は通常の時期に開催しなくてもいい、後から開催してもいいですよ、ということです。
となると、正しい手続きの流れで申告できなくなります。これは問題ないのでしょうか?
そこで先程の考え方です、私見ですが、上記判例にあるように、帳簿の作成を完了して、その数字を基礎に作成した決算書作成します。これをもとに通常の申告期限内に確定申告をすればOKかなと思います。
いや、それは中小企業を前提としてるので、大企業はどう考えるの? という意見もあると思います。上場企業などの会計監査人設置会社については、以下のような考え方が出されてるので、こちらも大丈夫かなと思います。
会計監査人設置会社においては、計算書類が法令・定款に従い会社の 財産・損益の状況を正しく表示しているものとして法務省令で定める要件(会社 計算規則第135条、下記1~4)に該当する場合には、取締役会の承認を受けた計算書類については、取締役がその内容を報告すれば足り、総会の承認を 求めることは要しない(会社法第439条、第441条第4項但書)。
1 会計監査報告の内容に「無限定適正意見」が含まれていること
2 会計監査報告に係る監査役・監査役会・監査委員会の監査報告の内容として会計 監査人の監査の方法または結果を相当でないと認める意見がないこと
3 当該計算関係書類につき監査役・監査役会・監査委員会の監査報告の内容の通 知が期限内にされないことにより監査を受けたものとみなされた場合でないこと
4 取締役会を設置していること
会計監査人設置会社における計算書類の確定は、上記1~4の要件に該当することを前提に、取締役会の承認によりなされるものと解されている。(※1)
※1神田秀樹「会社法第 十六版」P282、江頭憲治郎「株式会社法第5版」P622注6」
以上になります。日本で一番多い決算期は3月です。3月決算の定時株主総会は5月・6月に開催されますが、その時期までにコロナウイルス🦠の感染拡大が収まり、株主総会がスケジュール通り開催されることを願います。長文読んでいただいた方、有難うございます!