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ソーシャル坊主起業奮闘記 #2 「勢いあまって起業に向けて一歩踏み出してしまった話」

このnoteでは、ビジネス経験のない僧侶たちが新電力会社の起業に至った物語や、いまなお悪戦苦闘し続けている様子を、取締役・霍野の視点で赤裸々に告白します。

今回は、新電力会社の実例を聞いて、心を鷲掴みにされ、起業に向けて一歩踏み出してしまった話を書き進めます。

ワクワクドキドキ磯部社長との初対面

竹本(たけさん)が、環境と仏教の勉強会で、電力自由化の仕組みや海外の実例を聞いてから、1ヶ月も経たないうちに、先駆的な地域新電力の事例として注目を集める、みやまパワーHD株式会社の磯部達社長(当時)とお会いすることになりました。

僕たちが電力事業と出会った事の発端についてはこちら。

2018年3月中頃、新大阪から歩いて数分のビルの一室で、後にテラエナジーの立ち上げに尽力していただく磯部さんと初めての対面。

閉ざされた宗教界に身をおく僕たちは、会社訪問の経験も少ない。ましてや、社長とお会いするなんて初体験。

福岡で事業をやってるのに、大阪にも事務所もってるんだ、すごいな。しかも、新大阪駅から徒歩圏内の高いビルで上の方の階じゃん。うぉぉぉぉぉー。

メディアにも度々登場するような社長にお会いすることへの高揚感と、得体の知れない電力業界の社長に騙されるんじゃないかという不安感を胸いっぱいに抱えながら訪問。そこに待っていたのは、色白で、ちょっとふくよかで、柔らかな笑顔が印象的な60代ぐらいの男性でした。バリバリ事業をやっている社長がこんな物腰が柔らかいはずがないと、ひそかに警戒心を強める(いま思えばビジネスや株式会社への偏った先入観が半端ない)。

パナソニックを辞めて起業に至った想い

磯部さんは、パナソニックを辞めて電力業界に飛び込んだ経緯や想いを、初対面の僕たちに赤裸々に語ってくれます。

私はパナソニックで、住宅や建築の事業に携わるなかで、テクノロジーがどんどん進化し、IoTを通した豊かな暮らしが拡がっていく可能性を目の当たりにしました。ただ、大きな会社にいると、事業も多く、複雑で、どうしても縦割りのような形態になってしまいがち。そうすると、我々が提供するサービスがお客さまの幸せや豊かさにどれほど貢献できているのか感じられにくいのも正直なところ。私は、よりお客さまの顔の見える距離感で、事業に携わりたいなと思うようになっていました。

そんなときに、パナソニックが開発している「使用電力の見える化」と「家中の機器の最適制御」ができるHEMS(ヘムズ)というIoTサービスが、生活者の暮らしをより豊かにすると確信しました。一方で、このサービスを普及するのには課題も山積み。

パナソニックを飛び出し、自分たちで事業を始めた方が、理想とする地域の在り方を実現できるのではないか。そしてなによりも、お客さまの顔を見ながら自分たちのサービスを提供できることにやりがいを感じ、起業することになりました。

柔らかい口調ながら体温熱く語ってくれる磯部さんの話にどんどん引き込まれていきます。

電力を手段として、地域課題を解決する

続けて、福岡県みやま市で実施している事業についてお伺い。

福岡県みやま市は県南部に位置し、熊本県に接する人口3万8000人ほどの小さな市です。高齢化や地域コミュニティの希薄化、単身世帯の増加、晩婚化などといった様々な地域の課題があります。程度の差こそあれ、全国各地の地方が抱える共通のテーマでしょう。私たちは、電力事業の収益を活用して、市民の方々に喜んでもらえるサービスを生み出したいと思っています。

具体的な事業の一つに、みやま市役所の隣接地に立つ木造2階建ての「さくらテラス」にあるカフェ&レストラン、特産品販売コーナーを運営されています。市内で1番オシャレで居心地が良いと評判だそう。

レストランでは、みやま産の農作物のおいしい料理を、シェフが実際につくってメニューとして提供。ガラス張りで観葉植物も多くオシャレ空間なので、イベントスペースとしても活用されることも多く、ピアノや弦楽器の演奏会、書道展、婚活イベントなども実施されています。

私たちが実現したいのは、みやま市で暮らす方々の生活をより豊かにすること。電力はあくまでも手段に過ぎないんです。

「電力を手段として、地域課題を解決する」。なんとカッコいいフレーズ。そんな磯部さんの想いのこもった話や地域に根ざした事業についてお聞きし、もう完全に心を鷲掴みにされるなか、さらに、お寺の可能性についても言及くださいます。

全国には7万のお寺があるそうですね。しかも、そのお檀家さんも合わせると、ちょっと想像できない数字になりますね。もしもですよ、その1割でも切り替えてくれたら、うちの規模どころじゃありませんよ。しかも、お寺は地域の信頼・信用がある存在。そのお寺が地域の問題にたいして、具体的なアクションを実施することができれば、本当に社会は変わりますよ。

私たちが全力で応援しますので、是非とも新電力会社を立ち上げましょう!

………。えっ?!会社を立ち上げる…。いやいや、起業だなんて無理っす。

確かに、磯部さんの想いや手掛ける事業には心躍ったし、お寺を拠点に地域の問題を解決するなんて憧れる話であるけど、電力自由化さえもつい最近知った素人集団が電力会社を立ち上げるなんて出来るわけない。ましてや、ビジネスのビの字もしらない。あとあと、たけさんは西本願寺の研究員で、大学の講師もしているし、週末は奈良のお寺の住職。僕だってNPOや西本願寺の仕事があるし、週末は大阪のお寺を手伝ってる。起業なんて出来るわけない。お寺を拠点にエネルギーや、電力自由化について学ぶ普及啓発のプロジェクトはすぐにできそうだなと、磯部さんの話を聞きながら考えていたけれど…。いやいや、まさか、僕たちが起業なんて絶対にできるはずがない!

と考えながら、ふと横をみると、机から落ちてしまうぐらいに前のめりになって、目をキラキラさせるたけさんの姿が。このとき、なにかとてつもないものが動き出しそうな予感がしました。

勢いあまって一歩踏み出してしまう

この磯部さんとの出会いが、テラエナジーを起業する大きな契機になりました。

磯部さんと初対面から2週間後、たけさんと、後に取締役となる本多とが、みやま市を訪問し、事業の様子を視察。たけさんが興奮しながら、その様子を報告してくれます。

磯部さんが言ってた電力の収益で運営している「さくらテラス」は、オシャレで、食事も美味しかった。地域のおばあちゃんたちも利用してて、とっても良い雰囲気だったよ。僕たちもあれをやれちゃうんだと思うと、ワクワクがとまらないよ!

みるみるうちに起業を前提に話が進み始めます。他の新電力会社についてリサーチすることもなく、起業について学ぶこともなく、ただただ直感とご縁に任せて。…ご縁というと聞こえは良いけど、怖いもの知らずのビジネス素人だからこそなせた技としか言いようがありません(笑)。

次回は、起業に向けて一歩踏み出したものの、周囲に相談すると、全員から全力で止められる様子を書き進めます。

霍野 廣由(つるの こうゆう)

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1987年福岡県生まれ。浄土真宗本願寺派覚円寺(福岡県)副住職。龍谷大学実践真宗学研究科在学時に、自死・自殺や終末医療、高齢者福祉の活動に携わるとともに、寺院活動を研究する。大学院を修了し、認定NPO法人京都自死・自殺相談センターに就職し、現在は事務局長を務める。2018年、ソーシャルグッドな新電力会社、TERA Energy株式会社を立ち上げる。相愛大学非常勤講師、浄土真宗本願寺派子ども・若者ご縁づくり推進委員など。

テラエナジーでんきへのWebサイトはこちら
https://tera-energy.com/

3分で完了!テラエナジーでんきのお申込みはこちら
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