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ピアノという呼吸法

ピアノを弾くとき、僕は呼吸が少し深くなる。気功の呼吸法に近いのかもしれない。5秒吸い、2秒止め、10秒かけて吐き出す、っというやつだ。

ピアノに向き合い、指と脳そして身体と精神を統一し音楽に没入するとき、明らかに普段とはちがう呼吸をしている。僕は僕自身に集中している。もっと芯に近い骨格よりやわらかい部分に。

内側からプラスとマイナス、両方のエナジーが流れだす。そして考え、感じながら弾くことで新たなエナジーを回収するのだ。ミストーンはミスじゃない、発見だ。バカげているけれど、僕はそんな風に捉えて、演奏をやめない。ピアノは作曲の大事なツールであり自己発見と、新しい財宝の採掘のためのパートナーだ。

しばらく前に気功の呼吸を習ったとき、ピアノの演奏時にかんじる落ち着きとエナジーを感じた。身体の内側がすこし火照り、でも心はしっかり落ち着き、感情は様々に描かれる、そういう感覚だ。

大人になるにつれ思い込みという心の自動処理の運動で当たり前のことをくりかえしてしまう。

ピアノという呼吸法は僕をいくらか自由にしてくれる。ここにいること、にもっと意味をあたえてくれる。遠い場所にわざわざ行かなくても僕らは旅をし、戻ってこれることを教えてくれるのだ。

一昨年までの暮らしに戻ることはないだろう。ワクチンも世界を完全に救済することは今のところ不可能で、僕らの国のリーダー達は未来を見誤ってミスをかくすことで精一杯だ。

苛立つより、深く呼吸をして、変わってしまった未来の先の明るいトーチを探す。ピアノや音楽は、その一助になるはずだ。


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