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【愛の不時着】今になって気付いたソ・ダンのこと

2年ぶりに『愛の不時着』を見て、見落としていたシーンがあったことに今になって気が付いた。
リ・ジョンヒョクの婚約者、ソ・ダンのことがその一つだ。

古いアニメの話で恐縮ですが

ソ・ダンのことを考えていたら、子どもの頃テレビで見たアニメの、ヒロインのライバルを思い出した。

例えば『エースをねらえ!』のお蝶夫人、はたまた『魔女っ子メグちゃん』の郷ノン。
(古すぎる。ところで、『エースをねらえ!』ってすごく面白そうですね。ちゃんと漫画を読んでみたい)

正直言うとアニメの細かいストーリーは覚えていない。
それでも、お蝶夫人やノンを、なんてカッコいいんだろうと思ったことはよく覚えている。

彼女らに共通しているのは、ライバルでありながらある時はヒロインを助け、心の支えとなる存在であること。
彼女らはヒロインを表立って手助けすることはしない。表向きは冷たく接するが、心の中ではヒロインを想っている。
ツンデレの原型かもしれない。

例えば『魔女っ子メグちゃん』の郷ノンは、悲しみに暮れるヒロインが木の下で雨に濡れながら泣いている様子を見て、離れた場所から指をそっと一振りする。
ノンの指の一振りの魔法で、メグが雨に濡れないよう木の枝を倍に増やした。
そんな優しい振舞いを、ヒロインの見ていないところでやってしまうところが心に沁みる。(アニメにそんな場面があったと記憶していますが、違ってたらすみません)

話が逸れたが、ソ・ダンもまた、奇しくも最後はユン・セリを助けることになる。
ク・スンジュンの復讐を果たすためではあったが、ユン・セリの次兄の罪を暴き、ヒロイン、ユン・セリのを窮地を救ったのは偶然だろうか。
ソ・ダンの果たした重要な役割を考えると、ライバルがヒロインを影で手助けするという王道のストーリーに乗っ取っているような気がする。
恋愛の物語というよりは成長譚のそれではあるが。

ソ・ダンときたら、「復讐してやる」と言いながらユン・セリを助けるし、リ・ジョンヒョクのカメラを「捨ててやる」と言いながら修理してリ・ジョンヒョクに渡してあげるし。

故障していたカメラをソ・ダンに修理してもらったおかげで、スイスでのユン・セリとの運命の出会いシーンを再現でき、ニヤニヤが止まらない幸せを噛みしめるリ・ジョンヒョク。
しかしリ・ジョンヒョク、この時ちゃんとソ・ダンにお礼は言ったのかな。(言ってないよね?)
ソ・ダンに冷たすぎる、リ・ジョンヒョク。お礼の一言くらい言えばいいのに。

リ・ジョンヒョクを守りたかったソ・ダン

恋愛ドラマで、恋のライバルが魅力的でないとつまらないだろうから、ソ・ダンが魅力的なのはもっともなこと。

だが、ソ・ダンはユン・セリのライバルなんだろうか?
ライバルというには、リ・ジョンヒョクがあまりにも冷徹過ぎる。
親同士が決めた婚約者というだけで、あくまでソ・ダンの片思い。

兄の死後、ピアノを辞めて軍人となり、人生も諦め親の敷いたレールを歩くだけのリ・ジョンヒョクにとって、結婚相手はレールの上に置いてあるアイテムの一つに過ぎない。

第七話で、ユン・セリが南から来たことを偶然知ってしまったソ・ダン。
それはリ・ジョンヒョクとの結婚式のウェディングドレスを選んでいる最中のことだった。

この数時間前、ソ・ダンはリ・ジョンヒョクに「好きな人ができたので結婚はできない」とはっきり言われている。
リ・ジョンヒョクに決定的なことを言われたにもかかわらず、ソ・ダンはそれでも結婚する、スケジュールに変更はない、と言い切る。
その話を聞かなかったかのように、母とウェディングドレスの店に行くソ・ダン。
もうやけになっているとしか思えない。

ユン・セリが南から来たことを知ったソ・ダンはすぐさま、リ・ジョンヒョクの入院する病院に駆けつける。そして病院からいなくなったユン・セリを追おうとするリ・ジョンヒョクを引き止める。
あなたがユン・セリを命懸けで守ると言うのなら、私も同じ。私も全力で婚約者を守ります。あなたを死なせたくない

このソ・ダンによるリ・ジョンヒョク引き止めのシーン、すっかり見落としていた。
意を決したソ・ダンの力強い言葉である。
それまでソ・ダンは、リ・ジョンヒョクに正直な自分の気持ちをぶつけたことはなかったのに。

リ・ジョンヒョクが結婚に乗る気でないことはわかっていて、悲しかったり悔しかったしたけれど、そういう気持ちは心の中にしまっていた。
平壌のホテルで、リ・ジョンヒョクがユン・セリと一緒にいた時も、
「困りますわ。私の立場も考えて頂かないと」みたいなことを言ってツンツンしていた。
ん? さては立場を盾に(リ・ジョンヒョクが別の女とホテルにいる、という同級生からのタレコミがあったため。面目がないという意味なんでしょう)、リ・ジョンヒョクに抗議したな。
本当はすごいショックで落ち込んでいたのに。
自分の気持ちは言えないソ・ダン。

そんなソ・ダンの意を決した力強い言葉。
にもかかわらず、リ・ジョンヒョクはソ・ダンに背を向け、行ってしまう。

ところで、ソ・ダンのセリフに「このこと(ユン・セリを匿っていること)がばれたら、あなたは全てを失います」というものがあるが、これは本当らしい。北朝鮮では政治犯とみなされ重罪。本人のみならず家族も収容所に送られるそう。
だからク・スンジュンもそれを理由にユン・セリを丸め込もうと(リ・ジョンヒョクと別れさせようと)した。
それほどユン・セリを匿うことはリスクのあることだ。

もしソ・ダンが見栄や体裁でリ・ジョンヒョクとの結婚にこだわっているのだとしたら、ユン・セリの正体がわかった時点で婚約破棄したと思う。
ユン・セリを匿っていることがばれたら、リ・ジョンヒョクは犯罪者(政治犯)になる。婚約者が犯罪者となると、見栄や体裁どころではない。
婚約者であるソ・ダンにも累が及ぶ可能性だってある。

だからユン・セリが南から来た人間であることを知った時の、ソ・ダンの「私も全力で婚約者を守ります。あなたを死なせたくない」という言葉には、ソ・ダンのリ・ジョンヒョクに対する気持ちが表れていた。
プライドが高く、ク・スンジュンが言うように愛ではなくて執着かもしれないが、ソ・ダンなりに心からリ・ジョンヒョクを愛していたのだ。

そうまで言ったのに、リ・ジョンヒョクはソ・ダンのことは全く眼中にない。
やり切れない、ソ・ダンの想い。

実は似ているソ・ダンとリ・ジョンヒョク

ソ・ダンとリ・ジョンヒョクはよく似ている。
不器用で口下手、そして好きな相手以外の異性には目もくれない。

それに、忘れてならないのはソ・ダンが音楽家(チェリスト)であること。
リ・ジョンヒョクも元ピアニストであり、お互い浮世離れした芸術家肌の二人だ。
嘘は付けないし、客商売とかは絶対無理。
ソ・ダンの母はやり手の商売人なのに。
でも政治家である父と全然似ていないリ・ジョンヒョクとて同じ。
お互い似過ぎているために上手くいかなかったケースなんだろう。

だからソ・ダンのことはヒロインの恋のライバルというよりは、ク・スンジュンと恋愛に至るまでのもう一組のラブストーリーとして見た方が楽しい。

ク・スンジュンに対して強気に出るソ・ダン。でもソ・ダンは誰に対しても常にこんな感じで接しています。

ソ・ダンの復讐とは?

ソ・ダンとク・スンジュンのラブストーリー。
だが、それもク・スンジュンの死によって終わってしまう。
気の毒なソ・ダン。

その後、母と叔父の力添えもあり、ソ・ダンは念願の復讐を果たす。
チョン社長に頼んで、ク・スンジュンを死に追いやったユン・セリ次兄の悪事の証拠を南に送り、次兄は逮捕された。

最終話の終盤、スイスでついに再会を果たしたユン・セリとリ・ジョンヒョク。
その頃ソ・ダンは、仕事に出かけようとしていた。
母が呼んだ占い師のセリフから、ク・スンジュンとの別れから三年後であることがわかる。
当たると評判の占い師が言うには、ソ・ダンのことを「恋人はもう表れないが、海外でも活躍し、仕事で大成功を収める。結婚しなくても幸せになれる」。

チェロを抱えて仕事に出かけるソ・ダンの表情は晴れ晴れしている。
自分より大きなチェロを背負い、並木道を一人歩くソ・ダンのカッコよさ。

そこに至るまで簡単ではなかったかもしれないけれど、ク・スンジュンが「自分が幸せになることが本当の復讐だ」と言っていたことを胸に、ソ・ダンは幸せになる道を模索したに違いない。

恋愛ドラマの中で、恋愛以外の選択肢を選んだもう一人の女主人公。
このドラマのメインカップル、ユン・セリとリ・ジョンヒョクは困難な恋愛を成就させた。
だが、ソ・ダンのように、恋愛以外の別の生き方もあることを『愛の不時着』は示唆している。

ソ・ダンとリ・ジョンヒョク、将来はオーケストラで共演してほしい

リ・ジョンヒョクもまた、除隊し再びピアニストになった。
きっと近い将来、スイスでユン・セリの音楽財団が主催するオーケストラ公演が行われることもあるのではないだろうか。その時はソ・ダンとリ・ジョンヒョクがオーケストラで共演を果たしてほしい。

スイスで、ソ・ダン、リ・ジョンヒョク、ユン・セリの三人が再会したりして。
その時はまた、いつもの気高いソ・ダンらしく振舞うことだろう。
スイスで仲睦まじいユン・セリとリ・ジョンヒョクのカップルと、ソ・ダンが鉢合わせする。ユン・セリが気まずそうに「あの、実は私たち毎年スイスで―」と言いかけたところで、ソ・ダンは「それが何か?興味ありません」みたいな素っ気ない態度を取る。

もしくはユン・セリが「次兄の悪事の証拠を届けてくれたの、ソ・ダンさんですよね?一言お礼が言いたいです」と言うも、「お礼の必要はありません。あなたのためにやったんじゃありませんから」なんて言い返しそう。

『愛の不時着』初見から2年経って、そんなソ・ダンが大好きになった。

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