ガチャで三題噺を書く 第13話『草食系男子 積極的 天狗の鼻』
youtubeで行った
ガチャで三題噺を書く 第13話『草食系男子 積極的 天狗の鼻』
の完成テキストです。
お題は太字にしてます。
所要時間は約1時間4分でした。
詳しくは動画もご覧いただけると幸いです。↓
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「ねえ、次の連休は小樽に行かない?」
朱音が昼食後のポッキーを食べながら言った。
公園には散歩しているおじいさんや、コンビニの袋を掲げて私たちと同じようにここで昼食をとろうとうろうろしているサラリーマンがいた。
そんな私たちを見守るように公園の周りには木が生い茂り、さらにその周りにはオフィスビルが立ち並んでいた。
「また~? この前京都に行ったばっかじゃん。」
私はシュークリームの袋を開けながら答えた。
私と朱音の仲はこのベンチに隣り合って座る距離のように近かった。
大学のサークルで出会ってからすぐに仲良くなり、なんでも相談できたし、ケンカをしてもすぐに仲直りをして関係を続けてきた。
それは二人が社会人になってからも変わらなかった。
だからこうして二人で泊りがけの旅行だってする。
だが私は朱音からの旅行の提案には素直に乗る気にはなれない理由があった。
「なんで私を誘うのよ。」
「いやなの? お金厳しい?」
「そうじゃなくて。彼氏はどうすんのよ、彼氏は。」
そう、朱音には現在彼氏がいるのだ。
会社間のパーティーで知り合った男性で、優しく気配りができるとてもいい人だった。
朱音からはしょっちゅうのろけ話も聞かされる。
実際、今お昼を食べていたときもこの前のデートはどこ行っただとか、何を話しただとかを私は聞かされたのだ。
「旅行だったら彼氏と行くべきでしょう。」
私は至極まっとうな意見を言った。
私は朱音のことが好きだ。
一緒にいるのは楽しいし、旅行も行きたい。
だが旅行を彼氏とではなく私とばかり行くのはおかしい。
「だって一人で行くのは寂しいんだもん。」
「だから彼氏と行けって。」
朱音は少し寂しそうな顔をした。
「彼氏と旅行行くの何か問題あるの?」
「特にないよ。温泉旅行とかも行ったし、年末にもどこか行こうって話はしてるし。」
「じゃあなんで。」
朱音は恋愛に積極的な人間だ。
付き合い始めると、周りが見えなくなるくらい相手のことを愛する。
大学時代に先輩と同棲をしたときは、大学に来ないどころか2週間くらいアパートの外に出ないこともあった。
「旅行自体が目的じゃなくて、私には現地で買いたい物があるの。」
買いたい物?
そういえば朱音は旅行に行くと必ずお土産屋さんを回る。
そのときはいつも一人にしてほしいと言う。
一度だけ買い物をしている彼女を遠くから見たことがあるが、なにかを手に取り骨董品を鑑定するように真剣に吟味していた。
合流すると、彼女の掲げるエコバッグは膨らんでいた。
「コレクションしているものでもあるの? それを彼氏には知られたくないとか?」
追及を逃れられないと思ったのか、朱音は気まずそうに話し始めた。
「私の彼さ、優しい人なんだけどいわゆる草食系男子ってやつでさ。私のこと本当に愛してくれてるってことはわかってるんだけどさ、すごくおとなしいみたいで。それが少し不満ていうか物足りなくて。」
「おとなしい?」
「夜が。」
「あー。」
なるほど、朱音の彼氏は恋人にもそれほど夜の関係を迫らない人というわけだ。
私は大学時代2週間も部屋にこもっていた朱音に電話した時の、彼女のうつろとした、だが幸せに満ちていたあの声を思い出した。
確かにこういう話はお昼の公園でするような話ではなかった。
朱音に打ち明けさせてしまった自分を私は心の中で責めた。
だがそれで疑問が解決したわけではなかった。
「だけどそれと旅行で買いたい物って何の関係があるのよ。」
朱音はポッキーを指先でくるくると回しながら答えた。
「私旅行に行ったら必ず天狗のお面を買ってるの。」
「天狗のお面?」
私は驚いた。
朱音は大学時代民俗学などは専攻していなかったし、私の知る限り彼女には妖怪だとか工芸品の収集だとかいう趣味はない。
「同じお面と言ってもね、各地によって結構形が違くてね、それで私いろいろ買いあさって探しているのよ。」
「コレクションしてるってこと?」
「ううん、彼氏のに似ているのを探してるの。」
「似ている? 顔が?」
「ううん、天狗の鼻の形が。あれに。」
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~感想~
結構すぐに思いついた話なんですが、なんでこんなに時間がかかったのでしょう。
とりわけ情報の開示に気を遣うオチでもないのですが。
というか下品なネタが続いてしまいました。
反省してます。
全国各地の天狗の名所を調べたら小樽に天狗山があるとわかって書いたのですが、あとで天狗山と書こうと思っていたのですが書き忘れてしまいました。
ラストら辺でも旅行先はすべて天狗の名所だったというケアは必要だったと思います。
これじゃわかりづらいです。
それにしても2行目にポッキーを出した時点で私はオチを確信しています(笑)。