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【VC関係者必見!】 スカウトファンドの始め方(テキスト編)

先日のClubhouseでのディスカッションから、スカウトファンド立ち上げのノウハウ共有ニーズがあるのでは?という指摘を頂きまして、早速、noteで書いてみることにしました。GFR Fundは2016年に立ち上げた、シリコンバレー拠点に北米・ヨーロッパのBtoC領域のスタートアップに投資をするシードファンドですが、今年2月にスカウトファンドを立ち上げたことを発表しました(日本語のプレスリリース、英語のプレスリリース)。

私の肌感ではアメリカの主要VCはほぼ全て、業界全体でも過半数以上は何らかのスカウトプログラムを運営しています。GFR FundはそれらのVCとの競争上、スカウトの取り組みを2019年から行っています。今後、日本でもスカウトと言う仕組みが普及すれば、スタートアップエコシステムの底上げにもなると思い、我々が数年前から北米・ヨーロッパで構築してきたスカウトネットワークや今回のスカウトファンドの仕組みをシェアしたいと思います。

なお、こちらの内容は、大枠は今年2月にW Venturesの新さんにお誘い頂いて、Clubhouseにて話した内容とも重なりますが、更に詳細を記載しています。今回は貴重なノウハウの共有ということで有料記事とさせて頂きます。ただ、生じた収益は何らかのNPO等に寄付をしたいと思います。記事の内容等について事前にご質問等がありましたら、Twitter (@TeppeiTsutsui) のDM経由にて筒井宛にご連絡ください!

注記①:元々、本記事には英文契約書をテンプレートとして添付していましたが、契約書は不要だが、スカウトファンドの仕組みは知りたい、という方のために記事を2つに分けました。テンプレートを見てみたいと言う方はこちらの記事をご覧ください。

注記②:価格は記事公開後5日間、4月1日(エイプリルフールですね)までを特別価格500円、その後は1,000円とします。

注記③:GFR Fundの投資家の方々にはもちろん無料でこちらのコンテンツ及び契約書ひな型を共有させて頂きますので、個別にご連絡ください。

スカウトとは何か?

スカウトとは主に本業、大体はスタートアップの創業者・経営陣や、リクルーティングやマーケティング等、特定分野のスキルを持って複数のスタートアップにアドバイスを行うコンサルタントが多いですが、その本業の傍らに、VCのために投資案件を見つけてきて紹介する立場の人です。

VCはこの様な立場の人をアドバイザーや、時にはベンチャーパートナーと呼ぶ時もあり、スカウトの明確な定義はありません。要はパートタイムでそのVCで働きながら(実際の雇用関係はない場合も多いです)、投資案件を見つけてくる人のことを指しています。

スカウトプログラムの事例

スカウトの仕組みは10年ぐらい前から、シリコンバレーの著名なVCであるSequoia Capitalが始めたと言われています。

当時、Sequoiaが考えたのは、投資先の創業者・CEOが、例えばこれから起業しようとしている友人等から相談を受けることに目をつけ、これをディールソース(投資案件の発掘)に活かせないか、と考えたことから始まります。確かに、起業家からこれからビジネスを始める時には既にその経験者に相談をするのは自然なことですし、それがSequioaが投資したCEOであれば尚更です。Aクラス起業家が更なるAクラス起業家を呼ぶ、と言った狙いもSequoiaにはあったのだと思います。

それから10年、スカウトプログラムは大々的に宣伝・報道されることはありませんでしたが、水面下では静かに広がり、今となってはアメリカの主要なVCは、程度の差はあれ、全てが何らかのスカウトプログラムを持っているというのが私の肌感覚です。

それを大きく発展させ、これまた著名なVCであるLightspeed Venturesの様に、まるでアクセラレータプログラムを運営するかの様に、毎年30名程度を選考・選抜し、さらにトレーニングプログラムまで提供するところもあります。

スカウトプログラムの仕組み

Sequoiaのスカウトプログラムの仕組みは1スカウト当たり年間1,000万円相当の投資枠を渡し、その中でやりくりをして貰う、というものでした。スカウトは10社に対して100万円ずつ投資をしても良いですし、4社に対して250万円ずつ投資をしても良いですし、一社当たりの投資金額は自由だった様です。

またプロセスもファンドによって違います。Sequoiaのスカウトプログラム開始当時は、スカウトが持ってきた案件に対して、恐らくトレーニングも兼ねて、かなり細かい質問をスカウトにした様ですが、最近はかなりの裁量権をスカウト側が持っていることが多い様です。また、投資契約書への署名権も権限委譲しているケースが多く、一方でお金はVC側が管理し、契約書を元に送金自体はVC側で行うことが多いようです。

スカウトのインセンティブ

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