【エッセイ】『想像して』
具体的に何が原因かは覚えてないけど、ひどく落ち込んだ日の帰り道、電車の中で思ったことがあった。
それは確か、一つの原因じゃなくて、いろんなことが絡み合ってなんだか疲れてしまった、みたいな気分だったと思う。
なんでこうなった、その前にもっとこうしていれば、そもそもあそこでこうしなかったのが、、、
一つずつ出来事を振り返りながら、時間軸を過去へと遡っていくと、目の前の結果の必然性に打ちのめされそうになった。
現状は全て自分の行いの結果であって、やっぱり悪いのは自分じゃないか。
時間は戻らない。
来た道を振り返ったときに、これまでの人生の様々な出来事が、宙ぶらりんになって並んでいるようなイメージ。
それは、もうどうしようもないことだらけだった。
思考と感情の渦に飲み込まれながら、自分の内側を黒いエネルギーが占めていくのを感じる。
ふとを顔を上げて車両全体に目を向けると、そこには多くの乗客の姿があった。
車両端のドアは開いていて、数両先の乗客の様子も見通せる。
彼らは何を考えているのか。
それを知る術は、私には無い。
想像した。
この一人一人の乗客の中にも私が今抱えているように、それぞれの過去が蓄積している。
そして、それは様々な種類の経験や感情を含んでいる。
もちろんポジもネガも両方。
それでも、こんなに普通の顔をしているのか。
乗客の一人一人が、膨大な情報量を蓄積したエネルギー体に見えてきて、その果てしなさに眩暈がする。
もちろん私の心境も、周りからは分かるはずがなかった。
私は"普通"の顔をしていたから。
外から見えなくても、人知れず抱える傷が、わたしたちにはある。
たとえ表面上"普通"だったとしても、その傷が無いことにはならない。
それは時間が癒してくれるのかもしれないが、無いことには決してならない。
忘れる、なんてできない。
だってそれは絶対に在ったのだから、在り続ける。
ひとの内側には、毎分毎秒過去が溜まっていて、みんなもうパンパンなのかもしれない。
喜びも悲しみも全てがない混ぜで、破裂しそうなところを、あと一歩のところでどうにか保ってる。
それでも"普通”の顔をして生活している。
周りに悟られないように。
周りに気を遣わせないように。
だから、想像する。
あなたは何を見てきたのだろう。
だから、想像する。
あなたは何を感じているのだろう。
だから、想像して。
あなたは、わたしが何を感じていると思う?
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