This is the Answer ~日本男子バレー29年ぶりの五輪1勝の日(2021/7/24)
いよいよ待ちに待った日本自国開催となった東京オリンピック2020。バレーボール競技がスタート。まずは男子の試合から始まりました。
初日DAY1、2021年7月24日。バレーボール日本男子代表の対戦相手は南米のベネズエラ。日本代表は、初戦という難しさと同時に、予選通過のためには絶対に落とすことのできない試合となりました。
29年前の勝利・・・1992年バルセロナ五輪
バレーボール日本代表男子は、1996年アトランタ五輪から、出場を逃し続け、2000年代では唯一2008年の北京五輪に出場するも5戦全敗。そんな中29年ぶりの一勝をかけてベネズエラ戦にのぞんだわけです。
世界ランキングでは、日本よりも格下であるベネズエラではありますが、この日の他の試合でも、イタリアの出だしの鈍さやポーランドの敗戦、フランスの調子上がらないままの敗戦など、初戦のコンディションや戦い方がとても難しい中、日本もその戦い方に注目が集まりました。
結果は、見事にストレートでの勝利。
日本 vs ベネズエラ 3-0 (25-21, 25-20, 25-15) となりました。
この勝利で、バレーボールの日本男子としては、1992年のバルセロナ五輪以来29年ぶりの五輪での一勝を手にしたわけです。
バルセロナ五輪当時のメンバーの一人が現監督の中垣内(ガイチ)氏。不思議な縁ですね。それ以上に、この29年間の期間に日本代表を背負った清水選手が若手に交じってスーパーサブな活躍で支え、さらにはこのコートに立てなかった柳田選手、五輪直前に引退を決めた福沢選手、それだけではない29年の間に日本代表として奮闘した多くの選手たちの顔が思い出されるくらい、この一勝は日本の男子バレーにとって大きいものだったと思います。
もはや個に依存した戦い方ではない
ここの記事でも、バレーボール日本男子代表チームの近年の進化とアップデートを追ってきました。この素晴らしさをより実感するためには、過去30年以上前からの日本バレーの歴史を紐解くことをお勧めしたいのですが、ここでは割愛させていただきます。
今の日本男子代表チームでは、石川選手や西田選手といったいまや世界からも注目を集めるスター選手たちが活躍しています。
しかし、もう観ているみなさんお分かりかと思います。石川選手のワンマンチームでもなければ、西田選手に依存しているわけでもありません。2019年のワールドカップからも明らかなアップデートが始まっていました。
この日の試合に出場し活躍したのは、OHの石川選手やOPの西田選手だけではなく、S(セッター)関田選手、MB山内選手と小野寺選手、L(リベロ)山本選手、そして新星のOH高橋選手に加え、途中出場したOP清水選手、OH高梨選手、S藤井選手、MB李選手と、それぞれの選手すべてに光る活躍の場面がありました。
男子バレー五輪での29年ぶりの1勝をあげたベネズエラ戦。ストレートでの完勝は、偶然でも何でもありません。
・セッターやMBの選手たちもサーブでチームを勝利にたぐりよせる
・MBの選手がディグなどのディフェンスでも活躍
・セッター以外の選手のセット(トス)能力の向上
・セッターの高さを補強するためのシステム変更への対応力
・ベテラン清水選手のスーパーサブな活躍
・ノータッチでボールが落ちなくなったトータルディフェンス力
(ブロックタッチかディグかが確実に)
・ゲーム展開で、ゲームチェンジャーとして機能しているサーブ&ブロック
・相手を手詰まり、攪乱させるゲームの中の戦略性とオプション
ベネズエラ戦では、コートに立つ選手がそれぞれ、自分のミッションをしっかり遂行し、すべての選手が最後まで持ち味を発揮していました。
清水選手の活躍や「ふじーりー」のクイックでゲームを決めるなど、今の日本男子代表のいろんな良さが散りばめられていたゲームでの勝利でした。
This is the Answer ~集合体から組織へ。ワイドに組織の中で生み出す個の育成を
まだ東京オリンピックが、バレーボール競技が開幕したばかりですが、日本バレーボール、日本男子バレーは、もちろん今大会でメダル獲得を狙いチャレンジ精神で、古豪復活を世界に見せつけてほしいです。
ベネズエラ戦では、コートに立つすべての選手の活躍が光る。そして「従来の日本のバレーボール選手」よりも一人一人のプレーの幅が広い、ハイスペック化していることがはっきり分かります。
「従来の日本のバレーボール選手」・・・それは、
・短期間で試合に出場するための早期特化
・短期間で試合に出場するためのスキルの限定化
・ボールコントロールのトレーニングに偏重した、認知や思考判断の不足
・「スピード」「はやさ」を求められ、ハイパフォーマンスのプレー原則は重視されなかった
・カテゴリで分断された断片的な指導内容
など
例えば、小学生や中学生では、バレーボール選手になるや間もなく、ポジション特性をみられ、早期に特定のポジションに固定されるという、「早期特化」がなされることが多いのです。
そのため、例えば、小学生からセッターをやったことで、それ以後のカテゴリでもセッターをやり続け、スパイクやレセプションの経験が不足したままの選手が珍しくありません。同様に、高身長だとみられるや、MBに配属させられ、しかも短期集中で試合にのぞむためスキルは限定的なものを短期間で習得させられます。ブロックとクイックはできるも、その他ディフェンス面など不足する部分は他のポジションの選手が負担するなどし、結果片寄ったスキルのMBが量産されます。他にも、ポジションごとに限定的な動きやスキルの反復によって、別々に特化した選手を寄せ集め、その組合せでチームを編成して競い合っていたわけです。
翻ってみるに、今のバレーボール日本男子代表チームが見せてくれているゲームやプレーからは、そんな従来の日本型バレーボール指導を打ち破りつつある姿になってきています。
一人一人個々の選手のオールラウンド性が求められてきています。そしてそのオールラウンド性があることで、世界のバレーボールの今のゲームモデルや戦術のトレンドを標準化に近づいており、強豪国との試合でも観る側にもストレスを与えない勝負を可能にしています。
「LTAD」に基づいた、運動やスポーツに楽しみと親しみを徹底した「早期導入」、そして多様な経験のあとにバレーボールの専門色を求めていく「遅い特化」、バレーボールにおいて、すべての子供たちや若者に機会が与えられるオールラウンドで長期にわたる育成。これらの実現なくして、今、日本の男子バレーが見せ始めているアップデートの「持続可能性」は達成できないはずです。
オリンピックで見えるのが「世界のバレーの今」そして日本男子バレーの挑戦
2020東京オリンピック男子バレーボールの競技初日DAY1は、いきなり激戦が続きました。
バレーボールにも種々の国際大会がありますが、現状バレーボールでは、4年に1度の「オリンピック」が各国がめざす最大のタイトルとなっているようです。ですから、オリンピックで各国が見せるガチのプレーこそが、世界のバレーボールの今を体現しているため、注目大なわけです。
5月まで行われていた「VNL」(バレーボールネーションズリーグ)も大きな大会とはいえ、今年は特にオリンピックを控えた時期でもあり、戦い方や戦略に各国の思惑もいろいろあったのがうかがえます。
そんなVNLの各国の様子をふまえながら、このオリンピックをみていくのも面白いと思います。コンディションやピーキング、データ戦、いろんな要素が絡み合う中で、選手もスタッフもリアルガチなオーラで全力でバレーボールのゲームにのぞんでいます。
今年のオリンピックから、バレーボールのアップデートがどこに見られるのか?そして、長年の低迷のトンネルの中から光を見出しつつある、日本男子代表がどんな戦いをみせてくれるのか。
これからも、みなさんと一緒に、バレーボールをおいかけていきたいものです。日本バレーボールのこれからの発展を願いつつ。
(写真:FIVBより)
今、オリンピックが開かれてるのは、「ハイキュー!!の国」ニッポンだ!
今こそ、「リアル ハイキュー!!」 体現するのは私たちニッポンだ!
(2021年)