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バレーボール「戦い方」ポイント➁(ゆるーい戦術論中級編)

(2019年記事)
東京五輪を翌年に控えたワールドカップが開幕しました。
女子の試合から開幕です。
男子は、10月1日からスタートです。

来年やってくる2020年東京オリンピックでは、
開催地であるがゆえに出場が決まっているとはいえ、
前年のこのワールドカップは、五輪の結果を占う試金石となる重要な大会。
また、地上波のテレビ中継でバレーボールの試合が放送されるという点でも
貴重な機会だと思っています。

過去に、バレーボールに少しでも関心をもってもらえたらいいなという思いで、こんな記事を書いてみました。

今回のワールドカップでは、大山加奈さんの解説がとても分かりやすく、バレーボールの試合の見どころが理解しやすいです。これからもみなさんには大山さんの解説によく耳を傾けてもらえたらいいかなと思います。

 そういうわけで、今回は、
『バレーボール「戦い方」ポイント(ゆるーい戦術論)のその2中級編
でいきたいと思います。
 中級編とはいっても、バレーボールをやったことのない人や、あまり見たことのない人でも十分ついてきていただける内容だと思います。ぜひテレビ観戦や会場での観戦の参考にしていただけたら、もっとバレーボールの試合にのめり込めると思います。

 バレーボールの試合で、優勢劣勢、好不調、勝因敗因を見ていく中では、もはや「気合い」や「強い気持ち」、「集中力」、「高さやパワー」、「スピード」、「ヤマ勘」だけでは説明し切れないのです。

◆数的優位の視点

 攻撃枚数の多さこそ、相手ブロックを遅らせ分断し、ブロック枚数を減らせる要因となる。
 ブロック枚数の多さこそ、相手スパイク決定力を弱め、自チームのディフェンス力を上げそこからの攻撃チャンスを増やす。
 これまでのような、選手個人のナイスプレーばかりに注目していた時代は、とっくにアウトオブデイト(時代遅れ)であり、得点失点の最大の要素である「スパイク決定率」の攻防からすると、スパイカーVSブロッカーの数的優位がどちらにあるか?数的優位を確保した方がボールを制しているという点に着目する時代となっています。

①ブロックの数的優位
 6人制バレーボールにおいては、ブロックはフロント(前衛)の3人、つまりブロック枚数は最大3人です。ネット幅9メートルの中で相手が仕掛けてくる攻撃(アタック)に対して、ブロッカー3人が対応することになります。1人のスパイクに対して、ブロックは1枚(1人)よりも、2人、3人と跳べた方が、もちろん相手の攻撃を無効化に近づけることができます。やはり、可能な限りアタッカーとの1対1、1枚ブロックは避けたいところです。
 特に「MB」(ミドルブロッカー)は、どのゾーンにもブロックすることが必須です。試合では、MBがブロックに確実に行くことができてるかに注目すると良いと思います。
 
➁アタッカーの数的優位
 ブロックの人員は最大3人(3枚)ですが、アタッカーの人数は、フロント3人に加え、「バックアタック」もできるところから、3人以上、4人のアタッカーの攻撃参加も可能になります。
 ゲームの中では、アタッカーが何人いても「ここしかセットできない」状況に陥ると、相手ブロックはいちはやくターゲットを絞り込み、枚数をそろえることが可能です。
 ところが、アタッカーが複数人とも十分な攻撃態勢を整えている場合、いずれからのスパイクもあり得ることから、ブロッカーはターゲットを絞り込むことが「遅れ」枚数をそろえるのが間に合わなくなります。こうなる場合は、アタッカー側の「数的優位」が成立していることになります。ですから、現代のバレーボールでは、この数的優位を得るために「バックアタック」を確保することは、大変重要なポイントとなるわけです。
 試合では、攻撃する際のスパイカーの何人が、十分な助走距離を確保し助走に入っているかに注目すると良いと思います。

◆パフォーマンスの視点 


①ファーストタッチのパフォーマンス
 ファーストタッチ。つまりレセプション(サーブレシーブ)やディグによってセッターに返球するボールがどういう状態が望ましいのか。
 今は、「高くゆっくり」がスタンダードになってるように見受けます。
 要因としては、やはり先ほど挙げた「数的優位」、アタッカーの数的優位の確保のためです。セッターの準備体制の確保、より多くのアタッカーがそれぞれ助走距離を確保し、スパイクの準備体制を確保する。そのための「時間的猶予」を確保する必要があるわけです。セッターへの返球が、低く球速がはやいものになってしまうと、これらの準備体制が整わず、攻撃の数的優位が確保できず、相手ブロック優位になる局面を作ってしまうことになるのです。
 「Aパス」という返球評価区分があります。ここではAパスかどうかにはあまりとらわれないようにします。それよりもセッターやアタッカーの状態をより良く導く返球に注目し、試合では、セッターへの返球の状態と、その直後の攻撃への影響に注目すると良いと思います。

➁セッターのパフォーマンス
 セッターからのセット(トス)は、いろんなテンポの攻撃を導くのですが、そのためには、セッターが様々なセットの可能性を選択できる状態、身体的にはボールの落下点で静止できていること、そして思考力的には静止できるからこそ相手ブロックや味方アタッカーなど周囲の状況を把握できる状態にあること。これができているかがまず重要です。
 次に、セッターからセットされるボールの状態にも注目しなければなりません。セッターからアタッカーへのボールのセットは、アタッカーが十分な打点からしっかりと打ち切れる状態のボールをセットすることが求められます。
 ところが、これが必要以上に球速の速いボールでスパイカーに合わなかったり、スパイカーのもつ打点を生かせない極度に低いボールでスパイクにならなかったりするなど、セットのパフォーマンスとしては悪い場合もよく見受けられます。
 試合では、セット前のセッターの状態とセットされたボールの質に注目し、セッターのパフォーマンスを考えてみるとゲームの得点との関係性が見えてきます。

③アタッカーのパフォーマンス
 助走をとるための準備をとっているか
 十分な助走距離をとっているか
 十分なジャンプと高い打点をとっているか
 しっかり打ち切っているか
こういう視点でスパイクを見ていくと、パフォーマスンの良し悪しだけではなく、アタック決定率との関係つまりは、得点できてる状態がどういう状態なのかが見えてくると思います。

④ブロッカーのパフォーマンス
 動き出しは、正確に(間違わずに)セットの方向に動けているか
 2枚以上のブロックがつけているか
 しっかりとしたジャンプから高いブロックを形成できているか
ブロックのパフォーマンスを見る場合には、ものすごく細部にわたる部分にポイントがあるのですが、でもこういった点に注目していくと、ブロックのパフォーマンスが発揮できているかどうかを、バレーボールをやられていない方にも見えてくると思います。

⑤サーブのパフォーマンス
 ざっくり言うと、①パワーサーブ(強いサーブ)と、➁コントロールサーブ(狙うサーブ)とがあります。
 パワーサーブでは、強烈なジャンプサーブや球威のあるジャンプフローターサーブなどによって、サービスエースが期待できます。
 一方で、コントロールサーブは、決して弱いサーブというネガティブなものではなく、相手の特定の攻撃を封じたり、特定の選手の動きや攻撃を封じたり、ある選手にストレスを与えてミスを誘ったり、相手の攻撃の選択肢消させてブロックでしとめるなど、より戦略的な意図をもったサーブだと言えます。
 現代バレーボールにおいては、サーブを見る際は、入れとけばオッケーというものはあり得ないと考えた方がいいでしょう?その選手が見せるサーブがどのようなパフォーマンスなのかに注目するのも面白いかもしれません。

◆つながり・関係性の視点

 バレーボールは、個人のナイスプレーやファインプレー、得点場面が目立ちがちになりますが、一見目立たないようなプレーにも、ナイスプレーやファインプレーがあります。
 特に一つ一つのプレーとプレーとの間にある関係性や因果関係に注目すると、バレーボールのすごさというか面白さが倍増します。

①サーブとブロック
 サーブを打った直後のブロックの状態に注目してみましょう。サーブを相手に取らせた後の攻撃が、サーブによって限定され、ブロッカーが相手の攻撃をまんまとブロックシャットまたはワンタッチ、ブロックがボールを触ってなくても後ろのディグが待ち構えて安定してボールを処理するなどの状況になれば、それは、「サーブ&ブロック」の関連性が機能していたことになります。ぜひ、サーブとブロックに注目してみましょう。

➁ファーストタッチを起点として
 相手から放たれたボールをレシーブするプレーは、身を挺してでも床に落とさずボールにくらいつくことに注目するだけではなく、セッターに向けて返球したボールによって、セッターやアタッカーがどのような動きをしているか?つまりはセッターやアタッカーが返球される間にどのくらい準備体制を整えパフォーマンスを上げられるか、またはその逆になっているのかに着目すると、レシーブと称されるようなファーストタッチがどうだったのかの見え方が変わってくると思います。
 特に、クイックを打つMBの選手やバックアタックを打つ選手の動きなどに注目するとファーストタッチがどうだったのか?の参考になると思います。

③攻撃の選択
 バレーボールの醍醐味はやっぱり迫力あるスパイクとその多彩なバリエーション(位置やテンポなど)があり、それを観ているだけでもワクワクします。
 しかし、セッターがどの攻撃(アタック)を選択しているのか、その前後との関連性に注目すると面白いかもしれません。どの場面でクイックを選択したり、どの場面でバックアタックを選択したのか、連続して同じ攻撃を選択した意図は何か・・・。スパイクを単発で見るのではなく、そういう関連性でみなさんで話し合っていると、盛り上がるかもしれません。

④トータルディフェンスの視点
 ブロックと後ろフロディフェンスとの間に、意図やねらいがシェアされているかも重要です。ブロックとフロディフェンスに連動、連携が図られているトータルディフェンスという状態は、サーブ&ブロックのところでも触れたとおり、後ろのフロディフェンスの選手が待ち構えたところに「ボールが来てしまう」状態になっているのが一番わかりやすい例だと思います。さらには、ブロックのワンタッチによってスパイク効果が無効化され、ゆるやかなチャンスボールとなって処理される場合もそうです。
 安定した守備には必ずと言っていいほど、ブロックの役割が存在していることに注目してみましょう。

⑤サーブミスで気を付けたい視点
 ラリーポイント制においてサーブミスも1点の失点になるわけですが、それで一喜一憂してはいけないということは、このブログでも話題にしてきました。
 ここではあえて、その他の視点で、サーブミス後のミスした側がしっかりサイドアウトを取れているか。つまりはサーブアウト直後に相手にブレイクされていないかという点がゲーム展開の中で心理的に大きなダメージになりかねないことを指摘しておきたいと思います。
 もう一つは、攻撃の関係性やそれまでの攻撃選択のシナリオを一度中断させてしまう危険性があるということです。セッターは、サーブミス後の攻撃選択について、場合によってはそれまでのシナリオをリセットし、もう一度組み立てなおすことも必要なことが出てきます。
 サーブミス後のチームの変化にも注目するといいかもしれません。

◆スパイクの決定率勝負


 これまでは、Aパスの返球率やサーブ効果率やミスの少なさ・・・などなどさまざまなデータで勝敗が論じられてきているのですが、何よりもまず「スパイク決定率」が高いことが重要になってきます。

 そう考えると、これまで言及してきた

・「数的優位」
・「パフォーマンス優位」
・それらを確保するための「プロセス」


というのは、自チームの得点力を上げるため条件となるものとなります。
Aパスだろうが、Aパスにならないだろうが、打つスパイクの決定率が高い状態。そのためにどのような戦術や基本技術が必要なのか、バレーボールの試合を見ながら語り合ってみると面白いですよ!

(2019年)