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日本のバレーボールとリバースエンジニアリング

私も好きで観ていた、ドラマ「下町ロケット」では、「リバースエンジニアリング」という言葉が使われていました。

 「リバースエンジニアリング」とは、出荷された製品を入手して分解や解析などを行い、その動作原理や製造方法、設計や構造、仕様の詳細、構成要素などを明らかにすること。
 機械を分解したり、製品の動作を観察したり、ソフトウェアの動作を解析するなどして、製品の構造を分析し、そこから製造方法や動作原理、設計図などの仕様やソースコードなどを調査することを指す。 
 特許技術の内容は製品の外見だけでわかるとは限りません。他社製品を分解・分析して、その技術の中身を確かめること。機械であれば、分解して内部の部品の構造を確認したり、化学品であれば、成分を分析して含まれている成分の種類や含有量を確認したりします。競合会社の製品が自分の会社の特許を侵害していないか確認したり、他社の技術の特徴や強みを把握し、自分の会社の技術開発にフィードバックする等の目的で行われます。

 そう考えていくと、日本のバレーボールでこれまで足りなかったもので、世界のバレーボール、世界の今、世界のトップレベルのバレーボールの「リバースエンジニアリング」が上手くいっていないということがあるように思います。

 現代のバレーボールのスタイルは、21世紀になってから、レゼンデ率いるブラジル男子チームによって形作られけん引されてきたように思います。オリンピックだけをみても、アテネ、ペキン、ロンドン、リオデジャネイロと、ブラジル男子はいずれも決勝まで勝ち残っています。そして他の国も次第に、このブラジルのシステム、スタイルを導入してきました。
 ところが、日本ではなかなか浸透していきませんでした。おそらく、「日本オリジナル」に固執した結果、世界の標準となっていることから目を背けてきた結果なのだろうと思います。
 「日本オリジナル」や日本の独自性を打ち出すためには、まずは現状の分析や把握をする必要があると思います。世界のバレーボールはどのような情勢にあるのか。どのようなシステムや考え方で強化されているのか。何が行われているのか。それがあって、次は、長短、メリット・デメリットの分析がなされてくると思います。
 日本の良さを生かすことや、独自性を探るのは、それが行われてから初めて議論のスタートラインに立てるのだと思います。
 つまりは、日本のバレーボールにおいては、世界から情報をおろし、世界から学ぶ「リバースエンジニアリング」が大変遅れているのだと思います。

 必ずしも世界と同じことをしなければならないとまでは言い切れません。しかし少なくとも、世界でやられているバレーボールのシステムや戦術を洗い出し、それに対してどのような対策をとることが「合理的」かつ「可能なもの」なのか。仮に打ち出した仮説が、何年かかっても実現できないような絵に描いた餅のような対策であってはいけないと思います。
 一部の指導者や選手が個人として、見解をもつだけでは、なかなか変わっていきません。組織的に技術検討をし、指導普及をしていかねばならないと思います。

 しかしながら、日本の中でも、個人としてリバースエンジニアを行い、情報発信をしている人もいると思います。そして、その分析の内容や視点は、そのような人々が発信していますし、このブログでも言及しています。
 バレーボールにおけるリバースエンジニアリング的な作業が組織として当たり前になされることを望みます。


(2019年)