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春の高校バレー2021~アンダーカテゴリの今

今年の春高バレーは、世界を席巻している新型コロナウイルスの影響をまともに受けながらの開催となりました。

「シンプル・バレー」の重要性をみた女子

 セッターにピンポイントにボールを返球し、最速でアタックまでもちこむスピードを要求し、セッターとアタッカーの阿吽の呼吸ともいえる目にも止まらぬコンビバレーを目指し・・・。といった戦術の完成を標榜している強豪チームが多い印象が多い、高校女子バレー。
 強力な指導力を発揮する指導者のもと、一糸乱れぬ統率された練習や規律で動き、一年に一度の大勝負に全精力を懸けて挑む印象のある高校女子バレー。
 そんな彼女らのひたむきな姿や表情に胸を打たれることも多い一方、長年、もっと伸び伸びと大胆にバレーボールというゲームで個性を発揮してもらいたいという願いも秘めながらみてきました。
 そのような中、新型コロナウイルス流行のあおりを受け、様々な制約を受けながらのチーム活動。当然のことながら例年のような準備やチーム作り、トレーニングができなかったことは容易に想像できます。

 地域によっては、シーズンの大半を活動自粛を余儀なくされたチームも多く、例年よりも練習もトレーニングもできない中、目指すバレーボールのゲームモデルやプレイスタイルも例年にはないものになったのではないかと影響を考えたりします。

 しかし今年の女子の勝ち残ったチームのバレーボールを観ると、いい意味でシンプルな戦い方、オーソドックスなゲームであったようにみえました。
 複雑なコンビネーションと称した攻撃パターンの成功を追究するのではなく、芸術的な美しいディフェンスを追究するのでもなく、コートの上にボールをしっかり上げ、しっかり上がったファーストタッチのボールを、さらにしっかりセット(トス)し、そこまでつながってきたボールであれば、ボールの状態の如何に左右されすぎずにしっかり打つ。
 互いに手の内はわかりきった状態での、ハイパフォーマンス勝負。見ごたえがありました。
 そのハイパフォーマンスの根底にあった、サーブとブロック。ネットを挟んだ攻防のシナリオの土台をなす要素をしっかり行う。派手なコンビネーションや芸術的な守備ではない地味なものだけど、しっかり行う。
 高校女子バレーで、ようやくバレーボールの基本に向き合うゲームをするチームが増えてき始めたのかなと思いました。今までは、下北沢成徳しかないかなと思っていましたが。
 これは、コロナによって生まれた副産物なのか。意図的に練られたものなのか。今後のトレンドの推移をみていきたいものです。

アップデートの風が感じられ始めた男子

 高校男子バレーは、女子に比べて、凝り固まったバレーボール観や固定概念がない一方で、毎年のようにトレンドがころころ変わっている印象があります。
 鬼のレシーブ、チェーンブロック、高速立体バレー、サーカスバレー、バンチリードブロック・・・。そしてその年に全国優勝したチームのゲームスタイルが、全国でもてはやされるようになっていく。そして次の年にはまた別のスタイルのチームが勝つ。結局、何が大事なのか?が見えにくいなと思ってきました。

 今年の男子決勝は、いい意味での「コンセプトの戦い」。
 両チームとも、ゲームスタイルが違うものの、選手個の成長や将来性、同時にチームとしての発展と成長を工夫してのチーム作りが見えたような気がします。
 かたや現代バレーを系統的に落とし込んだ組織的なゲームプラン。そして対する方はそういったシステムを踏まえたうえで個の特性を最大限に発揮してブレない戦いを追究するスタイル。見ごたえがありました。

 女子も男子も、何かと新型コロナウイルスで、できるはずのことができなかったという見方が多い中、私は、そうではない、むしろ日本のバレーボールのアンダーカテゴリの指導や育成に一石を投じる内容がちりばめられていたように思います。


(2021年)