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膝MCL損傷におけるリハビリテーションマネジメントの考え方
今回は、スペシャルライターとして中陳 慎一郎(なかぜ しんいちろう)さんをお招きして配信します!
理学療法士・アスレティックトレーナーの資格を持つ中陳さんからスポーツ現場で対応することの多い、膝関節内側側副靱帯損傷に対する理学療法について解説していただきます。
以下、本文となります。
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皆様はじめまして。
ジャパンラグビートップリーグのクボタスピアーズでアスレティックトレーナーをしている中陳(なかぜ)と申します。
私はキャリアの大半をラグビーとアメリカンフットボールの現場で過ごしてきました。
現在は受傷した選手を競技復帰まで導く事が私がチームから与えられたミッションになります。
まず、私が考える競技復帰を目的としたリハビリテーションのゴールは「チームから求められた条件を達成する事」になります。
これは選手によって求められるレベルが異なる事を意味しています。
例えば、ラグビーでは強度の高いランニングとコンタクトを80分間繰り返す事が要求されますが、80分間フィールドで高いパフォーマンスを発揮する事を求められる選手もいれば、試合出場が目標ではなく練習の一部分だけでいいのでそこへ参加し、「チームにエナジーを与える」という事を求められる場合もあります。
したがって医学的な側面だけでなく、チームとしてその選手をどのような位置付けで考えているかという部分も含めてプランニングをする必要があると考えています。
競技復帰を目的としたリハビリテーション
競技復帰を目的としたリハビリテーションは「Off-fieldでのリハビリテーション」と「On-fieldでのリハビリテーション」に分けることが出来ます。
それぞれは独立して行うわけではなく、多くの場合は並行して行ていきます。
フルタイムでチームや選手と関われる環境であれば、受傷から競技復帰までのコンディショニングを含めたコントロールが可能ですが、医療機関や治療院など後方支援という形でサポートしている場合、コンディショニングまでをフォローしていくことが難しいケースもあるかと思います。
例えば、病院で復帰を許可された直後にいきなりチームのトレーニングに合流したり、試合に出場するようなことがあれば、再受傷や他の組織の損傷が発生する可能性も高くなります。
局所の機能が復帰条件をクリアしていたとしても、練習や試合に復帰するための条件にはならないという事です。
そこはアスレティックトレーナーや理学療法士がしっかりとコントロールしなければならない部分です。
また、近年では事前に作成したプロトコルに沿ってリハビリテーションを進めていくのではなく、「個別性」や「機能」ありきで考えていく風潮が強いように思います。
もちろん、身体機能の回復を見ずに構造的に破綻した組織の修復だけを考慮して競技復帰させる事は多くの場合、良い結果を生み出さない事は理解できます。
しかし、受傷から医師の診断を経て、選手が復帰していくまでのストーリーを出来る限り早期に描き、そのストーリー通りに競技復帰させる事は多くのコーチ達が我々アスレティックトレーナーや理学療法士に求める重要な要素になると思いますし、腕の見せ所でもあると思います。
そのためには受傷した選手のOn-fieldでのパフォーマンスがどのような過程を経て上がっていくのか?を知る必要があります。
そこで今回は膝関節傷害の中でも頻発する膝内側側副靱帯(MCL)損傷をテーマとして、臨床的な部分に加えてOn-fieldでのランニングプロトコルの考え方についてもお話しさせていただきたいと思います
MCLの基礎知識
内側側副靱帯(Medial Collateral Ligament: MCL)は浅層線維(Superficialis MCL: sMCL)と後斜走線維(Posterior Oblique Ligament: POL)、深層線維(Deep MCL: dMCL)に分かれており、sMCLは大腿骨内側上顆から脛骨内側面まで付着しています。
また、POLはsMCLの後方を走行し、関節包内側角に合流しており、内側の安定性に関与しています。さらにdMCLは脛骨関節面の近傍まで付着しています。
MCL損傷はラグビーやアメリカンフットボール、柔道などのコンタクトスポーツにおいて頻繁にみられる外傷のひとつです。
受傷機転は接触型と非接触型に分かれ、接触型損傷は主に膝の外側から直達外力が加わることによって発生することをいいます。
一方、非接触型損傷は主に地面反力が影響しており、着地動作や切り返し動作、ストップ動作などによって発生することをいいます。
いずれも受傷時の姿位としては
膝関節外反強制もしくは外反+大腿骨に対する脛骨の外旋負荷の組み合わせ
によって受傷します。
MCL損傷の病態
MCL損傷が発生する部位は、「大腿骨側」「実質部」「脛骨側」の3箇所に分かれます。
大腿骨側の損傷が最も多いですが、これは外反によって大腿骨内側上顆にてこの力が働き、MCLの大腿骨付着部にストレスが生じるからです。
また、脛骨側損傷は大腿骨側損傷に比べ重症度が高くなるケースが多いです。
特にsMCLの断端が鵞足を乗り越える病態はStener Lesionと呼ばれ、手術適応となります。
次にMCL損傷の重症度分類についてです。
臨床的には以下の3つのGradeに分かれます。
MCL損傷の治療方針は原則的に保存療法を選択する事が多いのですが、前述の通りStener Lesionを認める場合には修復術を選択します。
また、関節内靭帯の損傷を合併する場合には再建術と同時にMCL修復術を行うこともあります。
我々は損傷部位と重症度を考慮して、治療展開をしていく必要があります。
MCL損傷受傷から競技復帰までのプロトコル作成
医師の診断から損傷の程度が確定すれば、おおよそ復帰までの時期が把握できると思います。
初回受傷か再受傷、もしくはMCL単独損傷かその他組織の合併損傷の有無なども影響してきますが、以下に復帰までの目安となる日数を示しました。
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