繰り返すねんざに終止符を!足関節内反捻挫に対する理学療法-❶背屈可動性の獲得-
スポーツ選手における足関節捻挫の発生率はどの怪我よりも多く、再発率も高いのはセラピストの方以外でも周知の通りかと思います。
この怪我の面倒なところは、再発率の高さだけでなく可動域制限や筋力低下、固有感覚受容器の機能低下によるバランス能力低下など多岐にわたる後遺症があるところです。
このような後遺症は、パフォーマンスの低下だけでなく足関節以外の部位の痛みや機能低下につながる原因になることもしばし。とくに多いのが、足関節背屈制限や底屈筋群の機能不全が残ってしまったまま競技復帰するケース。
このような機能不全が残ったまま復帰してしまうと、慢性的な痛みが残ったり、再発のリスク上昇、競技パフォーマンスの低下を招いてしまいます。
足関節捻挫に対してリハビリを担当するセラピストやトレーナーのかたは、リハビリ早期から痛みの改善だけでなく、後遺症の予防を念頭におきながらリハビリ介入をすることを求められます。
これから数回に分け、足関節捻挫に対するリハビリテーションの進め方を段階的に解説していこうと思います。このnoteでは、受傷直後から解決しておきたい足関節背屈制限に対する評価や介入例についてまとめていきます。
スポーツ現場や臨床で足関節捻挫を担当することの多い、セラピストやトレーナーの方々にオススメしたい内容です。基礎的な内容も含むため、若手のセラピスト、トレーナーの方々にもオススメです。
足関節内反捻挫と背屈制限
捻挫による背屈制限の原因となる要素は大きく分けて3つあると考えられま
す。
靭帯組織(おもに前距腓靭帯)の損傷によるアライメント不良、周辺軟部組織の損傷や腫脹による伸張性および滑走性低下、またそれに伴う関節運動の制限、多くのケースではこれらが絡み合い、背屈制限につながっていると考えられます。
ひとつひとつ確認していきましょう。
|アライメント不良による背屈制限
足関節内反捻挫による前距腓靭帯の損傷は、距骨の内旋アライメントを助長すると考えられています。
距骨内旋アライメントは、距腿関節面がずれてしまうため適切な背屈を行うことができず、背屈制限につながると考えられています。
|関節運動の制限による背屈制限
背屈運動に必要な関節運動は、大きく分けて3つ。
前述したアライメント不良によって、距腿関節の不一致が距骨後方滑り運動を制限し、背屈制限につながります。また、この距骨の運動は後述する周囲軟部組織の柔軟性(滑走性)低下によっても制限されることが多々あります。
さらに、距骨の動きに連動して距骨下関節およびショパール関節の運動も重要となります。この連動が適切に行われることで、内側縦アーチが円滑に降下することができるようになります。CKCにおける背屈運動で制限が認められるケースでは、この連動性が制限されていることが多い印象です。
また、下腿過外旋アライメントおよび内旋運動制限も距腿関節における関節運動面の不一致の原因となるため、必要に応じて着目する必要があります。
|周囲軟部組織の伸張性低下による背屈制限
前述した骨・関節運動の制限因子の多くは、足部・足関節周囲軟部組織の伸張性(滑走性)低下が影響していると考えられています。
距骨後方滑りの制限因子となりやすい軟部組織は、以下の通りです。
|長母趾屈筋《FHL》や|Kager's fat pad《KFP》は距骨後方に存在する組織で、これらの柔軟性や滑走性の低下は距骨の制限に直接関与します。
また、アキレス腱および下腿三頭筋の柔軟性低下も、距骨後方滑りに必要な背屈時の踵骨背屈運動を制限してしまいます。
踵骨の運動は、距骨下関節やそれに連動するショパール関節の可動性にも影響を及ぼします。内果から走行する屈筋支帯は、距骨下関節外返しに必要な踵骨の運動を制限すると考えられています。
また、前脛骨筋や長腓骨筋、母趾外転筋などは内側楔状骨に付着したりその周辺を走行するため、ショパール関節外返し運動を制限すると考えられています。
背屈制限に対する理学療法評価
漠然とした背屈可動域の評価だけでは、どの要素が原因因子であるか判別することが難しくなります。それぞれの動きを詳細に評価することで、原因因子の判別を行うことが可能となります。
また、OKCでの評価だけでなくCKCでの評価も行うことで、距骨下関節やショパール関節の連動性も評価することができるため、必ずCKCでの評価も行いましょう。
|OKCでの評価
OKCでは、それぞれの骨・関節運動の可動範囲だけでなく、制限につながる軟部組織等の柔軟性・滑走性に対しても評価しましょう。そうすることで、原因因子の判別を行うことができます。
1)mortise test
距骨後方滑りが適切に行われ、背屈位での距腿関節安定性を評価する方法になります。
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