競技復帰に導くACL損傷の術後リハ-ジョギング開始まで-
ACL再建術から競技復帰までは、Dr.が定めたリハビリプロトコールに沿ってリハビリを進めていくのが基本となります。
しかし、機能改善が追いつかず、プロトコールに遅れをとったり、再損傷につながるケースも少なからず経験することもあるかと思います。
このような状態に陥らないようにするためにも、術後リハ早期から逆算して競技復帰までのリハビリのスケジュールを構築していく必要があります。
ACL再建術後のリハビリテーションプロトコール
ACL再建術後のリハビリプロトコールは、施設によって様々ではありますが、一般的にジョギング開始までは以下のような流れになります。
ジョギングが開始すると徐々に横方向へのアジリティトレーニングやジャンプトレーニングなど競技復帰に向け、必要なトレーニングを行なっていきます。
競技復帰時期は、状態(健患比やHQ比)によってですが、多くのところで術後8-9ヶ月が目安となり、早いところでは術後6ヶ月で許可が下りる場合もあります。
(ACL損傷診療ガイドライン2019では、復帰時期を遅くすることにより再受傷率を抑制できる可能性が示唆されていますが、至適な復帰時期については明らかになっていません。)
リハビリにおいて、このようなプロトコールにそって進めていくには、個々の関節・筋機能を整えるだけでなく、動きの改善を図る必要があります。
膝関節の痛みにつながるような動きのエラーがある中で、経過日数や個々の機能だけでリハビリを進めていくと、必ず頭打ちとなりプロトコールに対して遅れをとることになります。
ジョギング復帰(開始)基準
ジョギング復帰基準の一例として以下の要素が挙げられています。
(引用:「予防に導くスポーツ整形外科」)
なかでも片脚スクワット時の動的マルアライメント(キネマティクスの非対称性)は、動作中の再損傷や膝関節痛や炎症につながるリスクになります。
筋力の健患比やパフォーマンステストにおける結果が良好であっても動作中のアライメント不良が認められることが多かったと報告されています。
そして、このアライメント不良は再受傷の予測因子にも活用できると報告されています。
そのため、膝屈伸筋力の健患比だけでなく、動作時のアライメントもジョギングや競技など復帰の条件となります。
この他にも、ACL再建術後の機能回復を推し量るものとして片脚立ち上がりテストも簡便に評価できると報告されています。
ACL再建術後のリハビリのポイント
前述したように、スポーツ復帰を目指して再建術後のリハビリをする上で、重要なポイントとなるのが動作時の安定(動的マルアライメント改善)です。
以下のような動作は、再損傷や膝関節痛につながりやすいと考えられています。
ACL損傷は急激な膝関節外反によって引き起こるとされ、支持側への体幹側屈やtoe-outは、この急激な膝関節外反を誘発する要因としても考えられます。
そのため、再建術後のリハビリにおいては動作時の膝関節外反だけでなく、体幹や足部での代償運動も確認することが重要となります。
これらの代償運動は、以下のような機能不全が原因であることが多く、このような要素に対して詳細に評価していく必要があります。
また、術後の大腿四頭筋を中心とした膝関節の機能不全や股関節伸展筋群の機能不全によって、片脚立位時に身体重心が後方変位もしくは膝関節が屈曲してしまうケースを多く経験します。
このような動的マルアライメントでは、膝関節前面へのメカニカルストレスが増大してしまい、膝蓋腱や膝蓋下脂肪体の痛みが取りにくくなります。
特に、膝蓋腱を移植して行うBTB法では、術後の病態に加えて動的アライメントの崩れが膝蓋腱へのストレスを助長させ、膝関節前面痛が慢性的に残りやすい印象です。
さまざまな機能不全から患部へメカニカルストレスがかかることで痛みの慢性化や再損傷のリスクが高まります。
そうなると運動レベルを引き上げることができず、リハビリも頭打ちになってしまいます。
再建術後のリハビリにおいて重要なことは、許可が下りる動作に対し動的マルアライメントが出ないように逆算してアプローチしていくことです。
今回のnoteでは、術後からジョギング復帰までのリハビリテーションについてまとめていきたいと思います。
ACL再建術後のリハビリテーションの流れ
ジョギング開始までのリハビリテーションの流れは以下のように考えています。
ジョギング開始までには、片脚立位の獲得や片脚スクワットでの痛みの消失および動作の安定など段階的なゴール設定をし、そこに対して必要なリハビリテーションを提供していくように考えています。
片脚立位獲得まで
術後早期からの問題として、膝関節前面痛が挙げられます。
これは、再建術として活用されるSTG法、BTB法どちらにおいても膝蓋下脂肪体や膝蓋腱への侵襲が避けられないことと、動的マルアライメントによる膝関節前面へのストレスが原因として考えられます。
脛骨大腿関節および膝蓋大腿関節の機能は、のちの立位動作に大きく影響するため、術後早期から積極的に介入していく必要があります。
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