変形性膝関節症の進行予防に向けた運動療法
運動器疾患のリハビリを担当するセラピストの方々は、変形性膝関節症(膝OA)に対応することが多いと思います。
膝OAの進行要因は、加齢・肥満・遺伝的因子・力学的負荷(メカニカルストレス)などさまざまな因子があると考えられています。
臨床では、肥満度がそれほど高くなくとも膝OAと診断され、痛みに悩まされる人に多く出会います。
その多くは、既往歴などから他の関節の機能不全に陥り、膝へのメカニカルストレスが集中しています。
セラピストが介入する上で重要なことは、メカニカルストレスのかかり方を捉え、改善させることであると私は考えています。
膝OAとメカニカルストレス
膝OAの進行や症状増悪につながるメカニカルストレスは以下の通りです。
なかでもKAMは臨床でよく見る現象のひとつで、このメカニカルストレスを回避する代償運動も新たな膝関節痛の原因になります。
このnoteでは、臨床でよく見られるKAMとそれを回避する代償運動に対するリハビリについて話を進めていきたいと思います。
KAMとは
O脚のような姿勢になったときに膝関節内側部への加わる圧迫力のことを指します。
下半身質量中心を支持側へ過度に変位させることで支持基底面に重心線を近づけようとします。
前額面における姿勢制御を行う筋の機能が低下していることが原因の一つと考えられています。
KAMの増大は膝関節内側部への荷重量増大につながり、膝OAの進行や症状増悪に大きく影響するとされています。
歩行中のMst.におけるラテラルスラストもこれらの機能低下が原因の1つと考えられます。
KAMと代償運動
臨床では、KAM増大を回避するためさまざまな代償運動をします。
体幹側屈|
支持側への体幹側屈は、上半身質量中心を支持側へ過剰に変位させ重心線を膝関節中心に近づけることができるため、KAMの減少につながります。
toe-out|
toe-outさせることで、過度な下腿の外側傾斜や足底圧の外方変位を制御することができるため、KAMの減少につながります。
しかし、これら代償運動は、KAMの軽減につながりますが、膝関節動的外反(knee-in)を助長する姿勢となります。
そのため、このような代償運動も最小限に抑える必要があります。
膝OAへのアプローチのポイント
膝OAへのリハビリでは、運動療法も組み合わせることが有効であると報告されています。
OARSI ガイドラインでは、運動療法は、すべてのシステマティックレビュー(エビデンスレベル Ia)において、有効とされており、推奨度は 96%とされている。そして、理学療法士による介入についてエビデンスレベルはIVと高くはないが、推奨度は89%であった。
(引用:「変形性膝関節症理学療法診療ガイドライン」)
しかし、患部のROM-exや筋力強化-exに終始してしまうと早い段階でリハビリが頭打ちになってしまいます。
KAMや代償運動による膝関節にかかるメカニカルストレスに対する運動療法を組み合わせることが重要となります。
患部の病態は、他の関節の機能不全が影響していることが多く、他の関節との協調的な運動の獲得もリハビリのゴールの1つとなります。
✔︎メカニカルストレスの原因となる動きや関節・筋機能不全を特定させること。
✔︎他の関節との協調性を向上させ、膝関節にかかるメカニカルストレスを減らせること。
これらを意識して介入することが膝OAの症状軽減・進行予防に必要であると考えています。
膝OAへのリハビリテーションの実際
膝関節痛につながるメカニカルストレスを簡単な動作から評価し、疼痛軽減・OA進行予防に必要な具体的な介入方法についてご紹介したいと思います。
動作分析については、歩行動作を細分化してその機能が保てているかを分析していくのをお勧めします。
❶動作分析
全体像をつかむ動作分析では、大きく分けて3つの動きを確認します。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?