不良姿勢改善のための運動療法
スマートフォンやパソコンの普及による生活習慣によって現代人の多くは頭部前方変位など姿勢が崩れているとされています。
現に自分もこのnoteを書いている際の姿勢はかなり崩れています。笑
このような不良姿勢は肩関節痛の原因の1つにあげられることはみなさんご存知の通りだと思います。
肩甲上腕関節の機能が改善されても不良姿勢によって可動域に制限があるケースも臨床上経験されることがありますよね。
脊柱の後弯は、肩甲胸郭関節のアライメントなどの機能不全を引き起こし、挙上動作や結帯動作などの可動域制限につながるとされています。
不良姿勢へアプローチすることは肩関節における痛みや機能を改善するために必要な1つの介入手段といえます。
ただし、あくまでも不良姿勢は直接的な原因因子でなく、腱板筋群の機能や肩甲胸郭関節機能などの低下から肩峰下インピンジメントなどを助長する因子と考えられています。
そのため、実際の介入では不良姿勢へのアプローチだけに固執することなく、病態や患部局所の機能に対してのアプローチも並行して行われるべきと考えられているので注意が必要です。
今回は、不良姿勢と肩関節疾患の関係性や肩関節痛・肩関節機能改善につながる不良姿勢改善を目的とした運動療法についてまとめていきたいと思います。
なぜ不良姿勢が肩関節機能に悪影響を及ぼすのか?
肩甲骨は上腕骨(上肢)の動きを追従するように動き、肩甲上腕関節の安定性を担保しつつ、人体最大の可動性を確保している。(中略)肩甲骨は胸郭の表面上をその輪郭にそって運動するため、胸郭と胸椎の形状と動きに影響を受ける。胸椎と胸郭の形状(肢位)と動きが変われば肩甲骨の動きも変わる。
(引用:「運動のつながりから導く肩の理学療法」)
肩関節における挙上動作では肩甲上腕リズムと呼ばれる上腕骨と肩甲骨の協調運動が重要となりますが、その機能は胸椎や胸郭の機能に依存すると言われています。
上肢の挙上運動では、両側の肩関節屈曲運動に対して屈曲90°以上から胸椎は腰椎と連動して伸展し、片側の肩関節屈曲運動では90°以上から胸椎の伸展と対側への胸椎側屈・回旋が生じるとされています。
さらに肩甲骨は、90°以上の屈曲運動に対して上方回旋・後傾方向に動くとされています。
外転運動においても屈曲運動に似ており、挙上角度が上がるにつれて胸椎の伸展や肩甲骨の上方回旋が連動するとされています。
通常の肩甲骨の運動からの逸脱は、肩関節の機能障害と関連すると言われています。インピンジメント症候群※や肩関節疾患患者では肩甲骨の上方回旋角が減少していると報告されています。
さまざまな原因でこの肩甲骨の可動性・機能に制限をかけると考えられていますが、その一つの原因として不良姿勢が挙げられます。
不良姿勢の代表例である頭部前方変位姿勢では、過度の胸椎後弯、腰椎前弯、骨盤前傾によって肩甲骨が外転および上方回旋することで肩関節の可動域低下につながると考えられています。
また、頭部前方変位による胸椎の後弯は間接的に上腕骨頭前方変位にも関与すると考えられています。
上腕骨頭前方変位は肩甲骨前方傾斜や肩関節内旋の程度が大きくなった場合に生じやすい。肩甲骨前方傾斜は胸椎の後弯増強や骨盤後傾を伴う脊柱の全体的な屈曲(後弯)により生じる。
(引用「上肢の運動器疾患発生に関連するバイオメカニクス-力学的負荷と機能解剖運動学-」)
このような観点からも、頭部前方変位や過度な胸椎後弯は肩甲胸郭関節および肩甲上腕関節の機能に直接的または間接的に悪影響を与え、肩関節機能不全や肩関節痛の原因のひとつとなります。
胸椎の可動性を引き出すための基本的な知識
肩甲上腕関節および肩甲胸郭関節の機能性を高める上で、胸椎・胸郭の機能を高める必要性はここまでで少し理解していただけたと思います。
ここからは、胸椎の運動学的な視点を整理し、肩甲胸郭関節および肩甲上腕関節の機能を保つためにできる介入についてまとめていきたいと思います。
(胸郭については今月末に臨床+内で記事が配信予定となっております)
胸椎は計12個の椎体で構成されていて、その可動性は屈曲・伸展よりも回旋・側屈の方がより大きいとされています。
胸椎を含めた脊柱は、カップリングモーションと呼ばれる3次元的な動きをします。これは屈伸など1方向の運動に対して側屈や回旋など2方向の運動を伴いながら動くことを指します。
胸椎伸展の場合、カップリングモーションは伸展+側屈+回旋になると言われています。
中には、上部胸椎(C7/Th1~Th3/4)と下部胸椎(Th4/5~Th12/L1)に分け、上部=伸展+側屈+同側回旋、下部=伸展+側屈+対側回旋とそれぞれ異なる組み合わせで動くとも考えられています。
伸展制限が生じると、これらの連動する運動方向も制限を受けることになります。
この視点から考えると、胸椎の伸展運動だけに焦点を当てた理学療法評価や運動療法を提供しても改善しきれない可能性があるため、連動する運動方向に対しても介入していく必要があると考えられます。
胸椎のアライメント・可動性評価
一言で胸椎が後弯していると表現していても、一体どこまでが胸椎後弯というのだろうかと感じる方も中にはいらっしゃるのではないでしょうか。
このあとからは、胸椎の静的アライメントや可動性を量的評価で判断する評価方法などをご紹介していきます。
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