2022シーズンについて
〜はじめに〜
横浜FMの優勝で幕を閉じた2022シーズン。声出し応援も戻ってきた。少しずつではあるが普段の姿に戻りつつあるJリーグ、その中でも今シーズンのサンフレッチェ広島の戦いについてまとめてみる。
〜2021シーズン〜
まず、昨シーズンを軽く振り返る。
まあ振り返る必要すらないシーズンだが、、、
良くも悪くも普通だった2021シーズン
J2に落ちることも無ければ、リーグもカップ戦も上に行けない。ある意味安定感抜群の城福広島。2021シーズンこのチーム1番のトピックが関西1部リーグのチームに1-5で大敗したことなのが頷けるレベルで何も無かった。結局城福浩は堅守速攻を目指していたのか、自らボールを握るポゼッションサッカーを目指していたのか、迷宮入りのまま退任する運びとなった。
〜NEW BOSS〜
ミヒャエル スキッベ
ドイツ出身
2021シーズン終わりに決まっていた新指揮官
経歴、、、シャルケ、、、ドルトムント、、、レヴァークーゼン、、、フランクフルト、、、ガラタサライ、、、ギリシャ代表
とんでもない経歴を持つ監督が来たといつ期待感とクラブを転々としてる不安が入り混じる。
ドイツの攻撃的なクラブから守備的なギリシャ代表??スタイルの一貫性は??考えれば考えるほど地雷臭が漂う。ただチームとして"何か変える"という気持ちをこのドイツ人指揮官の招聘というので感じた。
〜不安〜
シーズン開幕前の主な加入選手
MF 野津田岳人←甲府(レンタルバック)
MF 川村拓夢←愛媛(レンタルバック)
MF 満田誠←流通経済大学
新加入と言える選手はゼロ。いや、待ってくれいくらoutの選手が居ないからって昨年中位以下だったチームに選手の上積みなし??勘弁してくれ、、、
ただ、開幕前からドイツ人指揮官はこんな事を言っていた
「いい選手が多くいて楽しみである」
外国人によくあるリップサービスか?
それともこの時点で既存戦力の見極め+レンタルバック、大卒で足りるという確信があったのか。それならこの指揮官の選手を見る力がとんでもないと思う。
〜開幕〜
迎えたシーズン開幕
新指揮官を迎えたサンフレッチェ広島だが、1つ問題があった。コロナの入国規制でスキッベ監督が入国できない。リモートで迫井暫定監督とやりとりはしているらしいが、やはり生の声とリモートではまるで違う。
"高い位置からボールを奪いに行く"
"ボールを奪ったら少ないタッチでゴールへ"
これがスキッベ監督が掲げたテーマである。
開幕戦 vs鳥栖
注目のスタメン、、、、
昨年からの変化、、、、
強いて言うなら大卒の仙波大志の起用くらい。
申し訳ないが、この時点で去年との変化は何ひとつ感じなかった。前から行こうとする意識はあるが、ハマりきってない。取りに行くタイミング、取り切りたいエリアの設定が中途半端。まだまだ時間はかかるか、、、
その後、vs札幌(1-1)、vs神戸(1-1)と引き分けが続く。スキッベ監督がベンチに入ったのは神戸戦からだが、本格的に指揮をとったのはvs東京(1-2)からだった。4戦終えて3分1敗。
負けこそ1試合だが、「勝ててない」この事実に焦っていたのは私だけじゃないはず。
そして勝ちなしで迎えた2連覇中の王者川崎戦
結果は0-2負け。スコアだけ見れば完敗だが、スキッベ監督も言っていたが、内容を見れば互角、いや互角以上だった。
前からボールを奪いに行こうとする意識、奪ったら素早くゴールへ向かう意識、この2つが凄く伝わった。選手からも「また勝てなかった」よりも「川崎相手にこのサッカーが出来た」という自信が見えた気がした。
・野津田岳人
広島ユース史上最高傑作と評された逸材。悪魔の左足を持つレフティーモンスター。トップ昇格当初は得点もあげ、一気にチームの顔になるかと思われたが、そこから伸び悩み、新潟→清水→仙台と武者修行を繰り返す。その後復帰を果たすも結果を残せず甲府へ再度レンタル移籍。しかし、ここで伊藤彰監督に鍛えられボランチとして1シーズン戦い抜き大きくなって帰ってきた。
・満田誠
ユースからトップ昇格は叶わなかったが、流通経済大学で4年間技術的にも精神的にも鍛えられて内定を掴んだ。ルヴァンGS名古屋戦で東俊希の怪我で回ってきたチャンスでJ屈指の名手ランゲラックからゴールを奪ってみせた。
この選手はとにかく走る。90分間走り続ける。
攻撃の選手が故に攻撃が取り上げられがちだが、広島の守備のスイッチは彼。彼のプレスから一気に最終ラインを上げて凝縮にかかる。
何より謙虚で、向上心の塊、試合後も群れない一匹狼タイプ。
〜念願の〜
川崎に敗れ、開幕後5戦勝ちなしとなった広島
やりたいサッカーは見えた。あとは結果のみ。
第6節 vs湘南
お互い開幕から勝ちがない17位vs18位の裏天王山。ここを落とすと流石にまずいという一戦
前線からプレスをかけ、幅と深さを使った攻撃で攻撃の糸口を探る。後半スピードスター藤井の突破からのクロスを満田が合わせて先制。この虎の子の一点を守り抜いて今シーズン初勝利を掴んだ。
スキッベ監督になりクロスの入り方の練習に時間を割いたという話を聞いた。城福時代からクロスは多く上がっていたが中の選手に合うシーンはほぼ無かった。右WB→左WBのゴールが生まれるなんて去年から考えられなかった。
〜上昇気流〜
初勝利を掴んだ湘南戦から中3日、後の2022リーグ王者横浜FMとの対戦。マリノスが志向するfootballこそ今の広島が目指すところであったので試金石となる一戦。序盤こそマリノスの前線からのハイプレスに手を焼いたものの、森島の2Gで2-0。被シュート数も4本、スコア以上に内容でもスタッツでもマリノスを圧倒した。今シーズン3本の指に入るレベルのベストゲームだったと個人的に思う。
次の福岡戦、途中出場の大ベテラン柴崎の土壇場弾で1-0。こんな劇的な勝ち方も昨シーズンからは考えられない。その後vs磐田(2-2)、vs清水(2-2)と静岡勢2チームとは引き分けで終わるものの5試合負けなし(3勝2分)
・ナッシムベンカリファ
元スイス代表FW、グラスホッパー時代にスキッベ監督と共闘した選手。スキッベ監督の求める前線からの守備、献身性を持った選手。献身的過ぎて、カード貰っちゃったり相手サポの反感買っちゃったりするのがたまに傷。でもチームメイトのインスタの投稿に絶対コメントするとにかくいい奴。この選手が居たからこそ2列目の満田、森島があれだけ点を取れたと思ってる。
〜新システム〜
静岡勢2チームに引き分け後、柏に1-2で敗れて、3戦勝ちなしとなった広島。
「新システムも考える」とスキッベ監督。
3試合連続複数失点の守備を見直すのか?それとも人選の変更か?4バック??
様々な憶測が飛び交う中迎えた首位鹿島戦
注目のスタメン、、、
塩谷を本職のCBに戻してきたな、、、
佐々木LSB、藤井RSBの4バック?、、、
で、野津田の相方は?森島??、、、
サントスはシャドー起用??、、、
スタメンを見ても正解は誰も分からなかった
気になるポジション配置、、、
野津田ワンアンカーの3-1-4-2
度肝を抜かれた。3試合連続複数失点してるチームのシステムでボランチを1枚削ってFWを増やしてきた。自分のサッカー観からは信じられない人選と配置だった。
「相手は首位鹿島、まずはいい守備から」
とリスクを嫌う日本人監督ならまず考えてしまうと思う。
しかしドイツ人指揮官は違った
「鹿島に勝つなら鹿島より攻撃的に行く」
"攻撃の時間は守備しないでいいじゃないか"
こんな発想なんだと思う。
しかも守備が得意な塩谷ではなく司令塔タイプ野津田のワンアンカー
もしアンカーの両脇は使われても、失ってカウンターを食らっても、最終ラインにはJ屈指の3バックがいるから何とかなる。
このシステムはその自信の表れだったのか
そしてキックオフ
上田、鈴木の超強力2トップ擁する攻撃陣
鹿島もバカではない。開始から当然のように野津田の横に鈴木優磨が降りて起点を作る。
序盤こそ鹿島のチャンスが多かったが、3バック+大迫で凌ぎ切る。
そんな中このシステム最大の強みが発揮される
右サイドのスローインを受けたベンカリファが相手2枚を引きつけてサントスへパスを出す。サントスは持ち前の推進力でゴールへ向かう。ドリブルは阻まれるも後ろからサポートした2列目の満田がフォローしサイドを駆け上がってきたフリーの柏へラストパス。ボールを受けた柏は難なく決めて先制。
これまでのサントス1トップシステムで多く見られた
「サントスがサイドに流れて中に誰も居ない」
この現象を防ぐためにサントスが流れても中にベンカリファ、ベンカリファが流れても中にサントス居るという2枚体制で課題を難なく解決して見せた。また外国人2トップというだけで当然ながら相手に大きな圧力をかける事ができる。
終わってみれば首位相手に3-0の完勝
見ていて楽しいとはこの事かと実感した。
その後は
雨の埼玉でリカルド浦和と激戦を演じ0-0
ベンカリファの初得点など京都に3-1
野津田のおかえりFK弾で名古屋に1-0
上位争う難敵セレッソに逆転勝ちの2-1
途中出場ドウグラスの2Gなど福岡に3-1
去年は考えられなかった交代選手の活躍、逆転勝利など、今年の広島は違う。
リーグ戦は4連勝、ルヴァンカップもベスト8進出、他のJ1チームが敗れる波乱がある中天皇杯も危なげなく3回戦突破。
このまま快進撃か、、、??
〜固定〜
今シーズンのスキッベ広島
昨年と明らかに違うところは
"カップ戦でもメンバーをほとんど変えない"
ということだ。
スキッベ監督の中で「カテゴリーなんてあくまで飾り。どの試合も大事な1試合である」という考えがあるのだろう。
スキッベ監督は試合後にOFFを与えることを定番化しており、それがチームにとってもプラスでいい循環を生んでいたのは間違いなく、監督自身の眼で「疲労的問題はない」という確信があったからこそ中3日でもほぼメンバーを変えなかったのだと思う。
そんな中迎えたアウェイガンバ大阪戦
4連勝中広島とは対照的に4連敗中のガンバ。
地力はあるチームであることは重々承知だが、最近の試合を見ても負けるわけがないと思っていた。
連戦の疲労のせいからか、開始から片野坂式ポゼッションを前に持ち味の前からのプレスが全く機能しない。1トップがサントスということもあったが、全くハマらない。徐々に盛り返すも、ガンバの黒川、坂本と連続ゴールを浴びて2-0。後半ギアを上げるために2トップにするも、ガンバの組織的な守備の前に何もできず。頼みの綱である右の槍藤井智也も黒川に完封され何も出来ず。しかもヴィエイラが再度怪我をするという最悪のおまけ付きで完敗を喫した。
個人的にリーグ34試合の中で3本の指に入るレベルで何も出来なかったくらい完敗だった。
その週末、磐田に3-0で勝ったものの
次週の水曜日マリノスに0-3で完敗を喫した。
内容こそ対等に戦えたもののフィニッシュ、ラストパス、交代選手の質、全ての面でマリノスに上回られた。前半戦に戦って勝ったマリノスより格段に強かった。
ほぼ11人固定で戦ってた広島に対して、マリノスは11人+αで戦ってきた。
マリノスはこの+αの質が恐ろしいくらい高い
スタメン11人だけで勝てるほど甘いリーグではないとマリノスに思い知らされた。
スキッベ監督は負けた試合の円陣でも良く
「いいサッカーをした。内容では負けていなかった」と多くの試合で言うが
「マリノスと川崎に関しては我々より上にいる強いチームである」(なんの動画かは忘れた)
と言うことを後にハッキリと認めたくらいの完敗だった。(多分この試合のことだと思う)
〜不要〜
マリノスに大敗した次の試合はさすがにターンオーバーをし、湘南と1-1、週中の天皇杯にベストメンバーで挑み群馬に1-0、その週末京都と1-1と怒涛の連戦を終えた広島。
長めのOFFを挟み、迎えたFC東京との試合
前半森島のゴールで先制するも、後半ディエゴオリヴェイラのゴールで同点に追いつかれる。
迎えたアディショナルタイム、、、
このチームある意味大きく変えるプレーが出る
90+2分広島カウンターの場面
ボールを持ったサントス、右にフリーの藤井
左にエゼキエウ、後ろからも2.3人が最後の力を振り絞り駆け上がる。
サントスは味方を使わずに狭い中央突破を選択
ボールを奪われて東京が逆にカウンター返し。左のアダイウトンにサイドを千切られてクロス
それがそのままゴールに吸い込まれた。
このゴールが決勝点になり1-2で逆転負け。
試合後塩谷はサントスに激怒し、雰囲気も最悪。その後の円陣でスキッベ監督からもサントスへの皮肉のように「我々が目指すサッカーは速いパスで、コンビネーションのサッカーだ」と言い切った。
この最悪な状態でマリノスとのカップ戦H&A、リーグ戦でアウェイ鹿島、アウェイ柏という難敵4連戦が控えている。。。
ドイツ人指揮官はどうするのか。。。?
〜予想外〜
結論、次節サントスをベンチからも外した。
ヴィエイラが復活したというのもあるが目に見える罰を与えた形になる。
そして迎えたルヴァン杯ラウンド16第1戦のマリノス戦、7月のリーグ戦で完敗を喫した相手に3-1。内容的には差のない試合だったがスコア上は完全にやり返した。
そこから中2日で迎えるアウェイ鹿島戦
週中のマリノス戦とメンバーは全く同じ。
7月に勝ちきれなかったあの頃と色々と被る。
ただあの頃と違う部分もある
・ヴィエイラ、エゼキエウのベンチ入り
攻撃に変化と厚みを出せるアタッカーの復帰は大きかった。
試合は0-0で進み、共に決め手に欠く展開
広島はWBに野上、シャドーにエゼキエウを投入して活路を見出そうとする。エゼキエウにボールが入るとチャンスになる。
その後疲労が見えていたベテラン柏に変えて、本職ボランチの川村拓夢を左WBに投入
その直後のプレーだった。
DFラインからボールを受けた川村、相手を引きつけて中央の松本へパス。松本はワンタッチでエゼキエウへ。エゼキエウ中央突破し、右フリーの野上へ。野上はダイレクトで空いた川村へクロス。川村が上手く合わせて先制。
・川村拓夢
顔よし、スタイルよし、性格よし。同性でも惚れるレベルのイケメン。プレーは183cmのサイズを生かしたダイナミックなプレーとパンチのあるミドルシュートが武器。愛媛でコンスタントに結果を出して今シーズン帰ってきた。
ゴール後には必ずエンブレムを握る広島愛の強いクールながらアツい漢。
素晴らしいゴールだった。
川村の思い切りの良さ、エゼキエウのドリブル、野上のクロス、ヴィエイラの囮の動き
交代選手全員が見事に絡んだ得点だった。
その後、エゼキエウのトドメの1撃で2-0。
難敵鹿島相手に素晴らしい試合だった。
次節、アウェイでリーグ好調の柏と撃ち合いを演じるも途中出場藤井の決勝点で3-2。更にホームに帰り松田新体制のガンバ相手にベンカリファのハット含む大量5ゴールで逆転勝ち。
そして、今シーズンここぞという試合で当たるセレッソとの大一番も新加入ピエロスの来日初ゴールを含む3発快勝。ルヴァンのマリノスとの第2戦も制し、8月の強敵との怒涛の連戦をまさかの全勝という形で終えた。
予想外でしかない。
いかにも夏に失速しそうなサッカーなのに、彼らのプレスの強度は落ちるどころか試合を重ねるごとに上がっているのだ。これはスキッベ監督の休み制度のおかげなのだろうか、、、
〜発想〜
8月を全勝で迎えたホームでの次節の清水戦
スキッベ監督のマネジメントに衝撃を受けた試合だったので紹介させていただきたい。
前線に新たなタレントを加えて復調気味だった清水を迎えたこの試合。満田をコロナで欠いた試合。ペースは序盤から清水。後ろの踏ん張りで0-0で前半を終えるも、後半20分抜け出そうとした乾を塩谷が倒したとしてDOGSO判定
1人少ない状況になってしまう。
DFが1枚足りないのでシャドーの森島に変えて住吉を投入。システムはベンカリファ、ピエロスが前線の3-4-2へとする。しかし、FWに入った後のサポートが足りない。入ってもロストして清水のカウンターを食らう。この繰り返し。
ベンチには
・ポストプレー得意なヴィエイラ
・個で打開できるエゼキエウ
・ゴール前へ飛び出しが魅力的な川村
攻撃的なカードはこの3枚
戦術素人の私や周りのサポ含めこのシーンは前線2枚をヴィエイラ、エゼキエウに変えてヴィエイラに収めて貰って、エゼキエウの個で一矢報いたいと思っていた人が大半だろう。
しかし呼ばれた交代カードは
ピエロス、ベンカリファout
ヴィエイラ、川村in
だった。
「なるほど、1人少ないこの状況、勝ち点1を取りに行くために中盤を増やしたきた。0-0で試合を終わらせるんだな」と
まあ素人でも理解は出来る交代だった。
システムは3-5-1。野津田をアンカーに松本、川村がインサイドハーフのような形。
何が起こる、、、???
守備時は5-3-1でブロックを敷く。前線のタレントが豊富な清水でもこれだけブロックを敷くと攻撃はブロックの外でのボール回しになる
攻撃はボールを奪うとまずヴィエイラのポストプレーに賭ける。
清水の攻撃に耐えながら迎えた後半38分。
ヴィエイラへラフなボールが入る。倒されながらも後ろからサポートに来た川村へ繋ぐ。川村は左サイド柏は預けてゴール前へ。柏は仕掛けながら走り込んだ川村へ再度パス。ボールを受けた川村がダイレクトで流し込んで広島先制。
スキッベ監督が狙い通りの形だった。
仕掛けることの出来るエゼキエウよりも3列目から飛び出せる事のできる川村の起用が当たった。
エゼキエウの仕掛けは相手の脅威になるが、その分ロストの可能性も大いにある。
そこら辺を加味し、守備もある程度計算できる川村を起用して、0-0で時計の針が進めばワンチャンスあるという自信があったのではないだろうか??
その後、川村の2022シーズン年間最優秀ゴールが決まり2-0。後半の30分間を10人で戦ったのに追加点まで取って勝ってしまった。すごい試合を目の前で見たのだと実感した。
次週アウェイ等々力で川崎の前にワースト4失点で完敗を屈したものの、次節アウェイ名古屋でスコアレスドロー。
同じミスは繰り返さないのが今のスキッベ広島
試合後の青空ミーティングはこういうところに生かされている。
〜2つのFINAL〜
ルヴァン、天皇杯とも勝ち進んで、共に準決勝進出。
ルヴァンは福岡に初戦3-2、2戦目は大人のサッカーで試合を0-0で締めて決勝進出。
天皇杯は京都相手に120分の激闘を演じ2-1での勝利。こちらも決勝進出。
ルヴァンでは試合巧者感満載の勝ち進み方、天皇杯では途中出場のエゼキエウ、ベンカリファで試合を決めた。去年、某関西1部のクラブにボコボコにされて嘲笑われたチームが2大会での決勝進出。
「今年はカップ戦のタイトルが取れる」
どの広島サポーターも思った事だろう。
しかし、広島にはカップ戦決勝で勝てないと言うジンクスがある。カップ戦決勝に至っては全敗。勝負弱いとはこの事か、、、
でも今年の広島は一味も二味も違う。
去年なら落としていた、引き分けていた試合を勝ちに持っていくまでの力がある。
〜壁〜
迎えたFINAL1つ目
日産スタジアムでのヴァンフォーレ甲府戦
J1クラブを次々と倒して来た今大会の台風の目
J2クラブということもあり、格上J1クラブに対しても"チャレンジャー精神"でガツガツ食らいついてくる。リーグ戦こそ下位に低迷するもカップ戦は一発勝負。一発勝負の怖さは誰よりも知っているクラブ。
開始からペースを握ったのは甲府
全員で守り、攻め、走る。
「J1クラブを食ってやる」
この気持ちがプレーからも伝わる。
案の定、コーナーキックから失点。
その後も良いところなく前半終了0-1
0-1からひっくり返した試合や追いついた試合も多々あったため、焦りはなかった。
後半、京都戦で試合を決めたエゼキエウとベンカリファを投入して攻勢に出る。
明らかに試合の流れが変わった。しかし、最後のところで甲府の堅守を崩せない。
「またダメなのか。。。」
そんな空気が漂う中迎えた84分
左サイドボールを持ったエゼキエウ。内を走った川村へパス。受けた川村は迷わずにシュート
これがネットに突き刺さり同点。
これまで散々チームを救ってきたレフティーの一振りで同点に追いつく。
その後延長に突入。
試合のペースは握るも1点が遠い、、、
迎えた延長後半11分
スローイン。リスタート。
甲府守備陣の足が一瞬止まる。
バイタルエリア。シュートが上手い満田誠。
慌てて、プレッシャーをかける甲府のレジェンド山本英臣。すかさず満田はベンカリファへスルーパスを狙う。軽く浮いたそのボールがレジェンドの左腕に当たる。ハンド。PK。
この土壇場で甲府山本のハンド。
チームとしても絶望的だと言えるシチュエーション。
キッカーは満田。
シュートが上手い彼なら大丈夫。広島サポ誰もが決めると思った。
ゴール左下を狙ったシュートは甲府守護神河田の手をかすめて、ゴールから逸れる。
たらればはいくらでも言えるが、このシーンは間違いなくピエロスが蹴るべきだった。
途中から出ていた国際経験豊富な彼が最適だったに違いない。でも満田もエース。自分で試合を決める、ヒーローになるチャンスがあって易々と譲るわけが無い。
絶好のチャンスを逃した。
そのまま延長戦終了。
PK戦
1人目ピエロス、2人目松本、3人目ベンカリファが難なく決める。甲府も負けじと3人連続成功
迎えた4人目。チームを救った川村拓夢
右を狙うも多少甘くなり河田に止められる。
甲府4人目が決める。
広島5人目は延長戦で外した満田。右に決める
迎えた甲府の5人目。山本英臣
つい数分前まで悲劇の主役とも言えた彼がラストのキッカー。
甲府がJ2から初優勝。
実力はもちろんあったが、最後は彼らに運が味方した。またも決勝で敗れた。
泣き崩れる、満田と川村。
しかし誰も彼らを責めることは絶対にできない。彼らのお陰でここまで来たんだから。
ここまでサッカーの神は残酷なのか。
〜歓喜〜
甲府に敗れて天皇杯は準優勝。
しかし、悲しんでいる暇はない。次週にルヴァン決勝がある。
選手も
「引きずってもしょうがない」「切り替える」
という声。
しかしヴィエイラとエゼキエウの怪我。
チームの流れを変えられるジョーカーの負傷。
またも決勝前に試練を与えられる。
迎えた週末
1つのニュースが入る。
「元日本代表、工藤壮人が他界」
広島でもプレーしていた選手の若すぎる死。
どんな時でも"チームのために"闘った漢の死。
試合の前日にショッキングなニュース。
選手のメンタルへ大きな影響を与えるニュース
迎えた決勝戦当日。
「工藤壮人の魂は永遠に俺たちと共に」
この横断幕とともに難敵セレッソと戦う。
今シーズンのvsセレッソ
ここぞというところでこのチームと戦った。
全勝したものの、力の差はない。
怪我人+前週負けのショック+戦友の死
マイナス過ぎる材料しかない5戦目。
決勝戦。
お互い固い試合展開。隙を見せた方が負ける。
それほど緊張感が伝わる試合展開。
前半はスコアレスドロー。
息を呑むような展開の中迎えた後半8分。
なんでもないプレーだった。
広島のキャプテン佐々木のバックパスが緩くなる。狙っていたのは広島ユース出身の加藤。
慌てて、詰めた大迫を交わし、無人のゴールへ流し込む。セレッソ先制。
リーグ戦でも見せたこのない、キャプテンのイージーミス。しかもこの大舞台で。
「またダメなのか。。。」
不穏なムードが漂う。
ピエロスを投入し2トップにするも、組織的で固いセレッソ守備陣を崩せない。
そんな中迎えた後半35分。
この試合を大きく変えるプレーが生まれる。
クリアボール。ピッチ中央に上がる。
落下点には広島のベンカリファ、セレッソのヨニッチ。ここまでやり合って来た2人の元にボールが落ちる。共に触れなかったボールが流れる。もつれるように両者が倒れる。
ボールに関係ないところでヨニッチの手がベンカリファの顔に入る。主審VAR。
イエローカードからレッドカードへ変わる。
優勢だったセレッソが数的不利へ変わる
そこから西尾を入れ守備固めに入るセレッソ
攻撃のカードを次々といれこじ開けようとする広島。ここから20分の激闘が始まる。
しかし、最後のところでセレッソが踏ん張り続ける。このまま逃げ切りか。
迎えた91分
満田のコーナーキックからベンカリファがヘディング。目の前に立っていた鳥海の上げた左腕に当たる。VARからPK。
1週間前に同じシーンで涙を飲んだ。
ゴール裏にいた自分は直視できなかった。
キッカーはピエロス。キプロス代表の10番で腕章を巻く彼にとって、このくらいのPKはなんて事ないのだろう。いとも簡単にキムジンヒョンの逆を突く。同点。形勢が一気に逆転する。
残り時間は3分。
このまま延長に進めば勝てる広島。なんとかドローのまま時計の針を進めたいセレッソ。
川村の左CB、満田のボランチと是が非でも試合を決めに行く広島の執念が実る。
またも満田のコーナーキック。
佐々木、荒木とヘディングに強い彼らが潰れた後ろにエアポケットのように空いた空間にいたのは背番号20。右足で合わせたシュートはゴールに吸い込まれた。逆転。
あの試合展開の中誰が広島の勝利を、しかも90分での逆転勝利を予想しただろうか。
そのまま試合終了。
初めてのカップ戦タイトルをドイツ人指揮官と手にした。
試合後、工藤のユニフォームを高らかに掲げる広島の選手たち。亡き戦友の死を引きずったのではなく、力に変えて、彼と共にトロフィーを掴み取った。
キャプテンの佐々木はインタビューで
「仲間に助けられた。広島の皆さんのパワーがあってこそ。みなさんのおかげ。チームを讃えてあげて欲しい」とまずチーム、サポーターへの感謝を謳った。
満田も
「広島に恩返しがしたかった」
そう。彼らは"チームの勝利のため"、勝てば"仲間のおかげ"とフォアザチームの精神がとてつもなく強い選手たちの集まりであり、それをさらに強くさせたのが、前週の残酷とも言える負け方、戦友の死だったのだ。
〜最後に〜
今サンフレッチェ広島というクラブはとてつもない進化をドイツ人指揮官と遂げていると思う。
地元で育ち代表まで上り詰めたユース卒選手
大学を経て成長しチームに帰って来た選手
海外から広島を強くしたいと帰ってきた漢
遠い国から広島のために闘う選手
全員がチームのために走れる、闘える素晴らしい選手たちだからこそ、胸を打たれる。
今後も彼らと共に素晴らしい景色を見たい。