技術系スタートアップ支援のプロが選ぶ、これから伸びる6社が集結!「第7回 J-TECH STARTUP SUMMIT」レポート
2023年で第7回を迎えた「J-TECH STARTUP SUMMIT」。技術系スタートアップの支援組織「TEP」が、成長が期待されるスタートアップとして認定した「J-TECH STARTUP 2022」が一同に揃い、ピッチをするイベントです。
今回は、2023年2月16日に、オンラインとオフラインのハイブリッド形式で開催された本イベントの模様をレポート。「J-TECH STARTUP 2022」認定企業のプレゼンテーションをはじめ、招待講演とパネルディスカッションの様子をお届けします。
J-TECH STARTUP SUMMITとは
技術をコアコンピタンスとした事業で、今後グローバルな成長が期待される技術系スタートアップをTEPが選定し、「J-TECH STARTUP」として毎年認定しています。「J-TECH STARTUP」認定企業は、事業の革新性、経済的な規模、社会的影響力、事業の実行力などの基準で評価され、認定を受けた企業はTEPや各協賛企業による多彩なサポートを受ける権利を得て、さらなる事業成長をめざすことができます。
※J-TECH STARTUP のその後の支援についてはこちらの記事をご覧ください
「J-TECH STARTUP SUMMIT」は、その年に認定された「J-TECH STARTUP」がピッチを行うイベントで、技術系スタートアップ経営者やこれから起業をめざす研究者、そして出資や提携を考えている大手企業の皆様との橋渡しの場の役割も担っています。
J-TECH STARTUP 2022認定企業 事業紹介プレゼンテーション
【シード枠】
宇宙開発で使われた技術を地上や社会にも「株式会社ツインカプセラ」
登壇者:代表取締役CEO 宮崎 和宏氏
JAXA認定ベンチャーでもある株式会社ツインカプセラ。国際宇宙ステーションから宇宙実験サンプルの回収に成功した際に使用されていたカプセルの技術を活用した事業を展開しています。電源を必要としない、魔法瓶をベースとした超高性能断熱保冷・保温容器によって、高度な温度管理を必要とする食料品や医薬品、検体などの輸送技術向上に貢献しています。このカプセル技術によって、企業間の輸送技術のみならず個人で疾病の検査を行うための検体輸送や被験者を中心とした創薬プロセスの改善など、ヘルスケアの分野にも進出が期待されています。
J-TECH STARTUPでは、「JAXAで開発・実用化された超高性能パッシブ型保温容器を小型化する事で、温度変化に敏感な検体や薬などの輸送を宅配便で可能にしたこと。また、今後実用化されるオーダーメード医療や再生医療などの幅広い医療分野へ応用が期待できること。」が評価され、認定に至りました。
救命医の診断を補助する画像診断AIを開発「株式会社fcuro」
登壇者:代表取締役CEO 岡田 直己氏
現役の救命医が設立したスタートアップ、株式会社fcuro(フクロ)。搬送されてくる患者のなかでも特に緊急性の高い「外傷」の診断において、外観からは気がつけない損傷個所を見つけるための全身CT診断にかかる時間を短縮する画像診断AIシステム「ERATS」を開発しています。ERATSは大量の臨床データ、アノテーションの品質管理、そして独自の画像診断AI技術によって救命医が必要とするデータを即座に示すことができ、死亡率の減少にも寄与。特定の臓器や疾患の発見に用途を絞らない全身診断システムとして救命センターでの実証実験も進行中で、サービスリリースに向けた最終開発フェーズを迎えています。
J-TECH STARTUPでは、「1秒を争う救急救命医療においてAIを使ったCT診断時間の大幅な短縮を実現したこと。また、事業化の推進によって国内の救命率の向上や、今後更なるAI診断の高性能化が期待できること。」が評価され、認定に至りました。
豚の雌雄産み分け技術で環境負荷の軽減にも期待「ルラビオ株式会社」
登壇者:代表取締役 白川 彰久氏
地球上の人類が直面している食糧問題。特に畜産業においては、家畜による温室効果ガスの排出やアニマルウェルフェア、飼料価格の高騰といった問題が山積し、代替肉や培養肉の研究開発も盛んに行われています。ルラビオ株式会社では「豚の雌雄産み分け」による畜産効率の向上をテーマとして事業を展開。動物の精子からY遺伝子とX遺伝子を分離し選別する技術によって雌雄の産み分けを実現し、生産効率の向上を図っています。国内ニーズと比較して大きな市場となる米国や欧州にも目を向けており、技術を活用した企業の利益向上や、環境負荷の低減といった貢献が期待されています。
J-TECH STARTUPでは、「養豚のニーズに対応した簡易で低コストな産み分け手法の確立により、養豚産業の強化や食の安定供給が実現できること。また、海外展開を前提に事業を構築していること。」が評価され、認定に至りました。
J-TECH STARTUP 2022認定企業 事業紹介プレゼンテーション【アーリー枠】
豊富な研究実績を強みに、ドライアイの診断アプリを開発「InnoJin株式会社」
登壇者:取締役COO 奥村 雄一氏
順天堂大学発の眼科DXスタートアップ、InnoJin(イノジン)株式会社。ドライアイの診断補助に用いられるスマートフォンアプリの開発を行っています。従来のドライアイの検査方法は対面診察による接触が必要で、症状があったとしても「時間がない」「眼科が遠い」などの理由で受診につながりにくいものでしたが、アプリを導入することで、問診や開瞼時間(何秒目を開けていられるか)の測定を行い、ドライアイの判定を行うことができます。オンラインでの受診が可能になれば、眼科専門医への受診が困難になりやすい僻地診療や、忙しくて病院に行きにくい人の診察もスムーズに行えます。今後は病院や診療所、クリニックへのサービス導入を計画しており、2025年のサービス開始を目指し関連学会との連携や他社との共同研究を進めています。
J-TECH STARTUPでは、「デジタル化が進む中で患者が急増するドライアイ疾患に着目した診断補助アプリの開発を進めていること。また、スマートフォーンを利用して非侵襲での診断補助を実現したことで、遠隔医療にも対応できること。」が評価され、認定に至りました。
独自開発のモータで精密な動作が可能に。“社会にとけ込む”ロボット「株式会社Piezo Sonic」
登壇者:代表取締役 多田 興平氏
JAXAでの共同研究員を経験してきた多田氏が設立したロボティクススタートアップ、株式会社Piezo Sonic(ピエゾソニック)。約20年後には650万人の労働人口不足が起こると予測される日本で、働き手として活躍が見込まれるのがロボットです。同社のAMR(自律走行搬送ロボット)の「Mighty」は道の凹凸や重量物の搬送にも対応しています。人間の作業を代替するのと同時に注目したいのが、Mightyに搭載された同社開発の「ピエゾソニックモータ」。電力ゼロで状態の保持ができ、高いステアリング力と共に精密な動作を可能にしています。これらの技術によって、工場内などでの搬送支援だけでなく、市街地での案内やコミュニケーションも可能なロボットとして、“超スマートシティ”の実現をめざしています。
J-TECH STARTUPでは、「小型産業ロボットや電動アシストなどの普及によって、今後高い成長が期待できる小型・軽量・高耐久性のピエゾソニックモーターを実用化したこと。」が評価され、認定に至りました。
“じぶん”に効く薬をつくる「CANDDY技術」で次世代創薬に挑戦「株式会社FuturedMe」
登壇者:代表取締役CEO 宮本 悦子氏
様々な検査技術の進歩によって、「がん」の発見や治療も進歩してきましたが、がんの原因となる「標的」は患者によって異なり、対応する薬が存在していないケースが多々あります。東京理科大学発のスタートアップである株式会社FuturedMe(フーチャードミー)の「CANDDY技術」では、従来の治療薬で用いられていた「標的の機能を阻害する」という仕組みから「標的そのものを分解する」ことで、あらゆる標的に適応し、「薬がない」という状況をなくす試みを行っています。自社での創薬パイプライン事業と基盤技術プラットフォーム事業を展開し、他社との協業も行いながら、さまざまながん標的に対応するための創薬に取り組んでいます。
J-TECH STARTUPでは、「標的薬の代わりに生体分解を利用することで、標的薬のない疾患についても有効性がある新たな創薬手法を見出したこと。また、同技術の横展開によって短期間での創薬開発が期待できること。」が評価され、認定に至りました。
【招待講演】「Why」を起点とした事業づくり
登壇者:Takeoff Point LLC. 執行役社長 石川洋人氏
Takeoff Pointは、SONYの出資のもとアメリカで設立し、私はSONYの社員として人事異動で経営を任された「社内起業家」になります。
最初は全くうまくいかず、1年も経たずに閉鎖を検討されるほどでした。今日はそこからどのように成功率を上げてきたのかについてお話しします。
Takeoff Pointとして会話をする時にまず聞かれるのが「What is Takeoff Point?」「What do you do?」「What do you sell?」などのWhatから始まる質問です。話が盛り上がれば、「How do you manage your cost?」「How do you differentiate yourself?」と“How”から始まる具体的な質問になりますが、ここで説明ができないと“Why”から始まる質問が来ます。
「Why do you do that?(なぜやるの?)」「Why you?(なぜあなたが?)」といった質問は悪いサインで、設立当初はこうした質問が続き、ほとんど答えられませんでした。「Takeoff Pointとは」という“What”と、儲ける方法である“How”はあっても、Whyがない。でも、ここで“Why”を真剣に考えたら段々うまくいくようになりました。
現在、Takeoff Pointは何をしているか
SONYはエレクトロニック、ゲーム、金融サービスなどの事業を展開していて、これらの領域を横断する横串組織があります。その一つの事業開発プラットフォームに含まれるのがTakeoff Pointで、ミッションは「新しい技術や事業を使って社会課題を解決すること」です。
事業を大きく分けると2つで、「日米のスタートアップ新規事業のビジネス支援」と「社会課題解決事業」です。マネタイズ前の技術や特許について、どのようなビジネスチャンスにフィットするかを検証しています。
Takeoff Pointが取り組む社会課題は、アメリカのDisconnected Youth(ディスコネクテッドユース。家庭の事情で就学や就職ができず、社会との関係が切断されてしまっている子供たちのこと。)。16~24歳の内、7人に1人がディスコネクテッドユースであるとされ、これを解決できないかと事業を作ってきました。
1.Oppro(オプロ)
行政による就労支援や教育支援、住宅支援、食糧支援などのサービスを受けるための各申請プロセスを、SONYの機微情報活用技術を使って1つのプラットフォームにまとめ、デジタル化する事業。日本でも横展開を検討中。
2.Studence(ステューデンス)
ディスコネクテッドユースの大学進学率向上を目指す事業。大学進学に関する情報を現役の大学生が提供するメンタリングプラットフォーム。2022年9月に売却し、初のExitに成功。
これまで上記のような事業を作ってきましたが、元々Takeoff Pointは違う目的で作られました。
設立当初のTakeoff Point
Takeoff Pointが設立されたのは、SONYから生まれた新規事業を「販売会社」としてアメリカ展開するためです。一番最初の商材は、SONY新規事業創出プログラムから事業化されたMESH(メッシュ)というプログラミング教材だったのですが、日本の市場とはプログラミング教育市場の成熟度や競合状況が大きく異なり、そのままの状態では、アメリカで全然売れませんでした。
そうした状況で、会社をたたむか、MESHの販売以外に新しい事業を作るかという選択を迫られました。いずれにしても失敗の原因分析をしようと多くの起業家や投資家に会い、自分に何が欠けていたかを考え、2つの反省点が出てきました。
反省点① 会社人と社会人の違いをわかっていなかった
これまではサラリーマンとして会社からのミッションに応えることで評価されていましたが、Takeoff Pointでは自分の仕事に価値を見出してくれる人が全然いないことに気づきました。会社にとってのベストを考えてきた一方で、社会に対してのベストを考えてこなかったんです。
反省点② Why?に答えられなかった
いろんな起業家に会い「Takeoff Pointはどうすればいいか」を聞くなかで、「Why Takeoff Point?」「Why you?」と問われても、答えられませんでした。答えがない限り、事業づくりはできないのではと思いました。
この2つはジレンマにもなっていました。会社に求められていることと社会に求められていることには、大きなギャップがあるんじゃないか…。そんななかMESHのデモ事業をしていると、学校に子供たちがいないことに気づきました。
シリコンバレーは、世界的なIT企業や有名な大学があり、教育のレベルも高い地域です。一方で、サンフランシスコ湾を挟んだ東側の一部の地域は、シリコンバレーに比べると平均所得や家賃相場が著しく低く、犯罪率も高い地域です。この地域では、子どもたちが普通の生活を維持することが難しく、ホームレスになってしまう子供がいたり、犯罪に巻き込まれてしまう子どももいて、結果的に学校に行けなくなってしまう「ドロップアウト」が増え、高校卒業までの義務教育を終わらせられる子供の数が、一番低い地域では全体の2~3割と低いところもあります。
まずこのディスコネクテッドユースのために何ができるかを考え、学ぶ楽しさを感じてもらうため、ボランティアとしてMESHを使った教育事業を始めました。
自分のアイデアを形にすればビジネスもできる、世の中の課題の解決方法も考えよう、子供たちが「自分たちにもできる」と思ってくれればと取り組んでいたら、「うちでもやってほしい」とオファーがくるようになりました。「MESHを買ってください」と言って首を縦に振る人はいなかったけど、ディスコネクテッドユースを減らすのに協力してほしいと言うと、みんなが共感してくれました。
MESH公認インストラクタープログラムを作り、教える人を集め、一緒に教材を作るなど社会とMESHのプログラムが相互に作用するような仕組みを作っていったら、今はベイエリアの8郡の中でこのプログラムが運用されるようになり、結果としてビジネスになりました。
「Why」からの事業の発展
元々はWhat→How→Whyの順番で考えていました。Takeoff Pointは販売会社で、新商品やサービスを売ってお金を儲ける。でも、なぜやるのか?という「Why」に対しては、答えがありませんでした。今は逆に考えるようにしていて、WhatとHowは「Why」が共感されれば後からついてくるもので、新しい発見に対して柔軟に対応していく方が大切だと思うようになりました。
つまり、「なぜやるか」が重要だということ。その「Why」に人は動かされ、事業も進化します。会社だけではなく、社会にとって何がベストかを考えると事業の成功確率は高くなると思います。そして、「Why」にあたる事業を展開する根拠が自分の中にあるのなら、まずは小さくても始めてみて、それが本当に社会の共感が得られるか検証してみると良いと思います。
【パネルディスカッション】「ニーズとシーズを繋ぐ」
パネラー:石川洋人氏(Takeoff Point LLC. 執行役社長)
岡田直己氏(株式会社fcuro 代表取締役CEO)
宮本悦子氏(株式会社FuturedMe 代表取締役CEO)
國土晋吾(一般社団法人TXアントレプレナーパートナーズ代表理事)
モデレーター:松田将寿氏(Transformation Consulting合同会社 CEO, Management Consultant)
松田:まず岡田さんと宮本さんにお聞きします。なぜご自身がその事業を進めようと思われたのか、お話しいただけますか。
宮本:私は大学の研究者として病気の原因の標的を見つける研究をしていて、標的を見つけ、そこに薬ができれば臨床に繋がると言っていました。しかし、製薬会社には「そんな簡単に薬を作れるもんじゃないですよ」と言われてしまって。なぜそんなに難しいのか、簡単な方法にしなければ個別化医療が実現しないのではと思ったことがきっかけです。
岡田:fcuroは僕の幼なじみでもある井上周祐(CTO)と始めた会社です。彼の研究が医療業界でも使えるのではと話していたのが始まりです。井上が僕の診療を横で見ながらコア部分を作ってきました。救命医を続けるか迷いもありましたが、自分が使いたいと思えるクオリティで出すという部分が、自分がやる理由になったと考えています。
松田:石川さんと國土さんはスタートアップを支援する立場でもあり、アメリカでの経験もお持ちです。日本ではなぜアントレプレナーがたくさん出ないんだ、という問いも多いと思うのですが、いかがでしょうか。
石川:リスクに対する考え方が大きく違うと思います。日本は安心・安全・安定が好きな国民性ですが、一方でシリコンバレーにいる日本人でない人たちは、もっと楽観的に見ているので起業家が生まれやすい。あとはお金に対する考え方の違いでしょうか。
國土:私はコミュニケーションが違うと感じました。日本は会社の中にいて、社外の人とコミュニケーションすることが極端に少ない。でもシリコンバレーだと、全然違う会社で「こんな面白い奴がいるから会ってみて!」と紹介してくれて、また別の誰かを紹介してくれたり、視点が違う人たちとのコミュニケーションが多いんです。
もう一つ違うのは、みんな楽しんでますね。生活のためというより、これ面白いよね、これができたらすごくない?という意識の有無が違いますね。
解決すべきプロブレムとソリューション、そしてビジネスモデルの3要素
松田:”ニーズとシーズを繋ぐ”についてですが、石川さんのお話にあった「Why」と、ニーズとソリューションのマッチングが非常に難しいのではという点と、それだけで事業を進めていけるのか伺いたいと思います。
支援側のお2人から”ソリューション”と”プロブレム”のマッチングで気をつけるべきこと、事業にする際はこの2つだけで本当に足りるのか、についてお話しいただければ。
石川:SONYで開発された技術を「ソリューション」として、どのビジネスで活用できるかを検証していたのですが、ぴったりとハマる「プロブレム」はなかなか見つかりませんでした。しかし、自分が注力している教育分野であったからこそ、「ソリューション」に合った「プロブレム」を無理やり見つけ出せた感もあったと思います。もし自分が教育業界に全く興味がなかったら、この問題は見つけられなかったと思います。「Why」がない会社だと、なかなかソリューションにフィットするプロブレムは見つけられないのではと思います。
國土:我々がサポートしている技術系スタートアップは、シーズオリエンテッドが多いんですね。自分や大学、国立の研究法人でやった内容を社会実装して問題を解決したいという思いは非常に強いけど、プロブレムを見つけてフィットさせるのがなかなか難しいケースも多い。
それが、我々とのメンタリングを通してWhyに気がついてくる。何のためにやるかというのは多分最初はないんですよね。メンタリングやいろいろな場での検証を繰り返すと徐々にはっきりしてきて。
松田:プロブレムとソリューション、活動として展開発展させるビジネスモデルの3つについて、日本とアメリカでとらえ方の違いを感じる点はありますか。
石川:まずプロブレムとソリューションがマッチしていて、そこにビジネスモデルが加わると、ビジネスイノベーションが生まれ、3つの交点が出てきます。
私のイメージだと、投資家が一番求めているのは、「プロブレム-ソリューション」の視点。ビジネスモデルは後からついてくるという印象です。アメリカのスタートアップで一番多いのは、プロブレム-ビジネスモデルを最初に見ているパターンです。こういう問題があって、解決すれば、素晴らしいビジネスモデルがあるからこれだけ儲かる。だけど、このソリューションを開発できない。
一方、日本で一番強いのはソリューションです。素晴らしい技術を持っていて、すごいビジネスにはなるけど、「誰のために必要なのか」が見えない。
Q. メンタリングを受けるときの考え方
松田:ここでオンラインでご参加の皆様からの質問をご紹介します。「メンタリングは複数のメンターから意見をもらうのがよいのか、さらにそのメンターたちが違うことを言ったらどうするか」と。これは國土さん、いかがですか。
國土:すごく信頼できる機関でメンタリングを受けるのであれば、複数から受けた方がいいかなと思います。例えばビジネスモデルを検討するときに、会計士、技術の分かる人、ビジネスディベロップメントできる人というチームから受けた方が、いろんな視点からアドバイスがもらえます。全部をわかっている人ならその人だけでもいいと思いますよ。
メンターの意見が分かれたときは、正誤ではなく見方が違うだけなので、「そういう見方があるんだな」と受け止め、自分の会社のWhyが何で、CEOが「その会社をどういう風な姿にしたいか」から、判断してほしいなと。
石川:起業家はメンターに「正解」を求めがちですが、多分正解ってないんです。得られるのは選択肢の幅だと思います。とにかく色んなスペシャリストから様々な意見をもらって、そういう選択肢があるよということを知り、CEOがピックする。それがメンタリングだと思うので、メンターに答えを求めるといい方向にはいかないんじゃないかなと思います。
Q.社内起業家の悩み「売上が上がらない」を、どう乗り越えるか
松田:石川さんにこちらの質問がきています。「企業内起業だと、売上が重要視されているのではないでしょうか?差し支えなければ、現在ブレークイーブンまで行っているのか。そうでないなら、本体からの突っ込みはどのようにかわされているのか。また、全社的にコンセンサスは取られているのでしょうか。」
石川:コンセンサスは多分ないと思いますね(笑)。社内起業の永遠のテーマだと思いますが、最初は売上が立たなくて利益も出なくて、この会社絶対潰した方がいいよねという議論もあったのが、設立してから1~2年目のことでした。
でも、暫くしたら、新しい事業を作りはじめ、徐々に売上を作れるようになり、それから通期で黒字にならなくても単月で黒字が出せて、とちょっとずつ積み上げてきました。
たまたまその時期にSONYの社長が変わり、SONYは経済的価値と社会的価値の両方を追求する会社だと発表されたこともあって、「社会課題を解決することをやってみたい」と言ったら「徹底的にやってみたら」とチャンスをもらえた。おそらく「Takeoff Pointってなんだよ」と社内で思ってる人はいっぱいいると思います。ただ、自分は「Disconnected Youthを支えること」がTakeoff Pointのパーパスなので、それを愚直に信じて、事業作りを追求しようかなと考えています。
「Why」と向き合いながら、素早く検証を続けていくこと
松田:本日のパネルディスカッションをまとめていきたいと思います。今日のお話のテーマでもある「ニーズとシーズを繋ぐ」。投資家がよく見ている点だというお話もありましたが、さらに事業を進めていく上ではビジネスモデルがその次に入り、この3つを回していくことがとても重要ということでした。
大企業の場合は技術=シーズとビジネスモデルの2つに特化しがちというお話と、アメリカ系のスタートアップではとにかくニーズとビジネスモデルに特化しがち。このどこかに特化しがちでは物事がうまく進まないというのが今日のお話から見えてきたと思います。
また、Whyに直面しながら手早く仮説検証を回していくことが重要だったというお話かと思います。また、行き詰まったらメンターに意見をもらうのも必要。それぞれの視点を大切に受け取って、自分のビジネスに合わせる形でフィットさせていくことが重要だというお話でした。