ユニバーサルデザインを意識したスライドづくりのポイント③「UDフォントの使い方」
UDフォントを使って視認性を高くする
私は特別な理由がない限り、UDフォントを使っています。このUDフォントはディスレクシア(読字障害)の人やロービジョンの人でも読みやすい・読み間違えが生じにくいようにデザインされたフォントです。また感覚過敏の方の中には、先が尖ったデザインだと恐怖を感じる場合もあるようで、止めや払いの先が丸くデザインされています。昨今ではUDフォントの認知度が高くなり、教育現場においても愛用者が多いようです。
一方で、単純にUDフォントを使えば読みやすくなる、というものでもなく、正しく使ってこそ効果を発揮することを理解しなければなりません。
数あるUDフォントの中でどれを使う?
一口にUDフォントといっても、大きく分けてUD教科書体、UD明朝体、UDゴシック体があり、さらに新ゴシック体や丸ゴシック体など千差万別です。 WindowsにバンドルされているUDフォントは以下の7種類です。
・BIZ UDゴシック
・BIZ UDPゴシック
・BIZ UD明朝 Medium
・BIZ UDP明朝 Medium
・UDデジタル教科書体 N
・UDデジタル教科書体 NP
・UDデジタル教科書体 NK
ゴシックと明朝のUDPと付いているものがプロポーショナルフォント、単にUDとついているのが等幅フォントです。プロポーショナルフォントとは、文字によって幅が異なるフォントで、例えばアルファベットのAとIでは文字幅が違うので、不自然なスペースが空かないように文字幅が調整されています。したがって通常の場合はBIZ UDPゴシックを使っておけば良いのですが、上段と下段を比べさせたり、数値を比較させたりなど、時たま複数行の縦方向で文字幅を揃えたいケースがありますので、その時には等幅フォントのBIZ UDゴシックを使います。
ゴシック体を例に等幅フォントとプロポーショナルフォントの違いをみると、以下のようになります。
UDデジタル教科書体には-N、-NP、-NKの3種類があります。このうち-Nは先ほど説明した等幅フォントです。-NPは欧文・数字のみプロポーショナルフォント、-NKは欧文・数字に加えてかな文字もプロポーショナルフォントになります。
スライドに向いてるのはゴシック体
UDデジタル教科書体が最初にWindowsにバンドルされましたし、学校現場で使えるように学習指導要領に準拠したデザインになっているという理由から、学校教育分野ではUD教科書体を使われている方が多い印象です。もちろん、小中学生を対象にしたスライドでは、文字の筆順や字形を学ぶという意味において教科書体を使う意義があります。
大学での授業や成人相手の研修スライドの場合、ゴシック体の方が読みやすいです。大人数の場合はプロジェクターにてスクリーンに投影することがほとんどですが、プロジェクターの投影方式からして細い線は見にくくなるので、ゴシック体の方が遠くからでも見えやすいという利点があります。
一方で、長い文章を紙に印刷する場合は明朝体の方が読みやすくなります。明朝体は縦線と横線の太さが違うので、長い文章にした時には行が浮き出るようになります。ゴシック体は見出しや強調したい語句のみに用いて、本文は明朝体というのが自然です。
MacでUDフォントを使うには
さて、私はApple信者なので(笑)、Mac版のPowerPointを使っていますが、MacにはUDフォントがバンドルされていません。そのため自分でフォントをインストールする必要があります。(株)モリサワの「MORISAWA BIZ+」に登録すればBIZ UDゴシックとUD明朝体が無償で使えます。また有償版(月額330円、年間3,960円)ではUDデジタル教科書体に加え、UD Digikyo Writing(欧文に特化したUD教科書体)やコンデンス書体(幅を狭くした長体フォント)も使用できます。
(株)モリサワ「MORISASWA BIZ+」のページへ
正しく使い分けてこそ意味がある
UDフォントを使うと視認性が良くなり、ロービジョンや読字に困難があるディスレクシアなどの方はとても助かります。また、特に困難を感じない人にとってもUDフォントは読みやすいと好評なので、まさにユニバーサルデザインの効果を実感できると思います。
ただし、せっかくUDフォントを使っても雑な使い方では効果は半減します。スライドの基本レイアウトの改善や、内容の焦点化などの工夫の上で、様々な種類のUDフォントを使い分けることが大切だと思います。