千歳烏山「Hanappa」 野崎さん
1. お花屋さんをやろうと思ったきっかけ、経緯は?
ーー実は、花屋の息子なんです。
実家がお花屋さんで、花屋の息子なんです。実家の方は兄が継いでいます。兄弟でやると大体喧嘩になるし、自分の思うようにできないじゃないですか(笑)なので僕は独立して花屋をやっています。特に父が立ち上げた実家のお花屋さんは、近くに大きな霊園があったので仏花などが半分を占めていたんです。でも僕は、やっぱり自分の好きな花を仕入れて、それを綺麗って言って喜んで買ってくれる、そんな花屋をやりたいと思っていました。だから絶対自分の店を持ちたいと思って、妻と二人でHanappaを立ち上げました。
2. Hanappaさんで行っている活動
まずはお店での店頭販売、生け込み(ビルのエントランス、花器を扱う会社のショールーム、今はあまりいけてないけど飲み屋さん)や、ネットで注文を受けて配送などをしています。レッスンはもうあまり今は募集してないのですが、最初に来てくれていた主婦の方が一人だけ、15年くらいずっと来てくれています。もう今はその方の時間に合わせられる人じゃないと募集してないです。
あとは、プロの方向けで、主に東北の人なのですが、コロナ禍になる前は福島まで行って、東北のお花屋さんの方達が集まるお花屋さんの全国コンテストで上位を目指すグループに教えにいっていた。
コロナで行けなくなってしまったので、ここ(Hanappa)から発信して、それを各地のお花屋さんでやってもらって、その画像を送ってもらい、それに対して僕がコメントするという形式をとっています。
3. 空間作りで意識していること
ーー空間作りにおいて、「間」を意識することが大事
僕はいつも、「間」を意識しています。日本には「間」の文化があって、絵画も書道も写真も漫才も、構図を考える時は「間」を意識することが大事。それはお花も同じで、繰り返しやっていくうちに心地いい「間」を見つけられるようになっていきます。日本人はその「間」に優れている感性を持っていて、「無い」ことに何かを感じることができると思うんです。
4. お客様に対する思い
ーーお花の世界は深かったり、難しかったりする部分が多いから、その違いをわかってもらえないことが多く、もどかしい業界だと思います
もちろん来店して注文してくださる方には感謝しかないです。
レッスンを受けてくださる方には、「自分が持っているものをちゃんと伝えたい」という思いがあります。プロの方には、先ほど話した「間」のことであったり、一本のお花が醸し出す緊張感であったり、そういうものを伝えていきたいです。一般の方には楽しんで欲しい、癒されてほしい、という気持ちがありますね。
ディスプレイや生け込みを頼んでくださる方には、「野崎さんにお願いしてよかったな」と思ってもらいたいのが1番です。でも、お花の世界は深かったり、難しかったりする部分が多いから、その違いをわかってもらえないことが多いなと感じます。正直、一般の方にはその違いがわかりにくいからこそ、成り立っているお花屋さんもあると思います。例えば食事なら、食べれば美味しいか美味しくないかがわかるけど、お花はそうではない。その面があるから、残っていけるお花屋さんと残れないお花屋さんが分かれていきます。このように、もどかしい業界ではあるけど、その中でもお客さんに喜んでもらえるのはとてもありがたいことですよね。
5. 仕事をするにあたって大事にしていること
ーー今はすごく品種も豊富で、綺麗な花が多いので、それぞれのお店の「カラー」が出せる時代になっていると思うんです
最近は特に、嫌なことはしたくないです。「楽しいことしかしたくない」っていうのが1番(笑)始めた頃は、やっぱり何年かは大変じゃないですか。子供も育てなきゃいけないって言うのもあって、「食べていく」ためにお花屋さんをやる必要があったんです。そうすると仕事を何も断れないし、利益が出るならなんでもやります、のスタンスでした。
でもこの歳になるともう体力もないし、好きなことだけでどんどん縮小していって、自分が楽しいと思うことだけやったり、自分が綺麗と思うお花だけ買ってきて売ったりする、というスタンスになってきています。それに共感してくれるお客さんが来てくれたらいいですよね。言えばお花屋さんってセレクトショップじゃないですか。昔はお花の種類は少なかったけど、今はすごく品種も豊富で、綺麗な花が多いので、それぞれのお店の「カラー」が出せる時代になっていると思うんです。なので、お客さんも、ここのお店は私の好きなお花がたくさんある、とか多肉植物がほしいからここのお店行くと種類豊富にある、とか、お客さん側の選択肢も増えてきています。なので、お客さんに合わせるのではなくて、ここでは自分の世界観、好きなものを出すのがまず大事で、その世界観やお花を好きだと言ってくれるお客さんを集められればいいなと思います。
6. なぜこの世田谷でやろうと思ったのか
お花屋さんを始めるにあたって、強みになることはなんだろうと考えた時に、やっぱり家賃がないことが大事だと思いました。不動産を買って、自分のお店にしちゃった方が続けやすいと考えたんです。当時は若かったのでお金があまりない中で、自分のやりたい商売をやれる場所を探していました。お花屋さんはそんなに広さがいらず、坪単価が高くても小さい場所で良いということで世田谷になりました。このような条件で物件を探していたので、この建物を初めて見た時には即決でしたね。
7. この地域(世田谷)でよかったと思うこと
最近はだいぶ周りの街がよくなってきました。昔の始めたばかりの頃は暗くて、お店も全然なかったんです。でも絶対いつか、自分たちが好きなようにやっていくうちに、パン屋ができたり、ケーキ屋ができたり、そんなふうになっていくに違いないと信じてやっていました。そしたら本当にパン屋やケーキ屋やいろんなお店ができてきたんです(笑) こんなふうにお店がお店を呼ぶようにして、今は街に活気が出てきているので、ここでよかったなと思っています。
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Hanappa(はなっ葉°)
ADRESS : 東京都世田谷区粕谷4-19-11
TEL : 03-3326-9505
OPEN : 10:00-19:00(月曜〜土曜)
10:00-18:00(日曜・祝日)
(水曜定休)
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「世田谷×お花屋さん」というテーマについて
私は現在、お花屋さんでアルバイトをしています。
お花屋さんとして働く中で、お花屋さんはお客さんとの対話が大事だと感じたため、そんなお花屋さんを経営する店主さんからみた「世田谷」はどんな街なのかを知りたいと思いました。
世田谷には、「世田谷花き」という市場があり、お花の仕入れがしやすいことから、個人経営のお花屋さんが多く集まっています。
そこで、私は、多く集まったお花屋さんの中から違う雰囲気のお花屋さんをいくつか訪問し、さまざまな視点を学び、普通に検索しただけではわからない、お客様への思いやお花屋さんを経営するにあたって心がけていることをお聞きして発信していきたいと思いました。
インタビュー:葉菜