筆ペンラブ
今日は仕事中にこれが横から出てきた。
数秒考えたが、さっきまで飲んでいたりんごジュースのおかわりがほしいのかどうかを聞きたかったのだと思う。特に日曜などに仕事をしなければならないとき、こういうメモをもらうと嬉しいものだ。
ジースっておばあちゃんの言うカタカナみたいでかわいいと思ったので、とっておくことにした。
夫は筆ペンが好きだ。筆も好きで、習字バッグを持っている。私も子どもの頃にランドセルと一緒に小学校に持っていった、習字道具が一式入ったあの小さなかばんだ。母から誕生日プレゼントにもらったらしい。
毎日習字バッグを開けて、半紙を取り出し練習するのはなかなか大変だけど、ちょっと筆のようなものでさらさらと文字を書いてみたい気分のときには筆ペンが最高らしい。字がうまくなったような気がするし、何といっても「オレ、いま筆で漢字書いてるぜ!」とヒーローになったような気持ちになるらしい。そしたら日本人はみんなヒーローだなぁと思う。新しい漢字を勉強するときも、鉛筆じゃなくて、筆ペンを使っている。A4の紙に、いつ受けるのか知らない日本語能力検定試験2級用の漢字がいくつも書かれているのをときどき見かける。
だから、無駄に、といってはいけないけど、スペインに何本も筆ペンを持って帰ってきている。彼なりの理由で太字と細字を使い分けているのも見ていると面白い。
時々、筆ペンラブが行きすぎて、冷蔵庫にしまってある作り置きのおかずの容器にも筆ペンでラベル記入してあるときがある。とにかく、かっこよく見せたい時には筆ペンに限るらしい。
ただ、日本みたいにいつでも筆ペンを買いに行ける状況じゃないから、今持っている3本のインクがなくならないようにしないと! と言って最近は使う回数を減らしているのを見ると、ちょっとかわいそうに思う。
スペインでも買えるようになるといいのだけど、なかなかこの田舎では難しそうだ。でもそれを言ったら、「筆ペンは日本で買うからこそいいのだ!」と夫は言っていた。日本でしか買えないという事実があるからこそ、余計に自分の中での筆ペンの価値が上がるらしい。そして、その筆ペンで文字を書く時は、ヒーローにだってなれるのだから、多少ハードルを高くしておかないとそんな簡単にヒーローになれたら楽しくないのかもしれない。
ひょっとしたら、私よりも夫の方がはやく日本に帰りたいんじゃないかと思うが、外国人の入国はまだ認められていないようだ。筆ペンと煎茶も、もうちょっとだけ我慢だ。