だいきらい
この土地(感覚としては町という規模)に越してきて6年ほど経った。
わたしはこの町が大嫌いだ。
今まで住んだことのあるところはどこも好きだし、そこそこいろいろなところで楽しみを見つけられるタイプだと思っていたし、たった数ヶ月の間しか住んでいない埼玉県でさえまた住んでもいいな、とよく思い出す。
住んでいた安アパートの向かいは墓地で、隣は郵便局で、真後ろにパン屋さんがあり、隣の部屋には国籍不明の外国人が住んでいた。
自転車で三郷のIKEAに行き、道すがら野っぱらに鉄塔と線路、電車が通る、薄暗くなってきて帰りを急ぐ。わたしは洗濯物入れにピッタリなあの青いIKEAの袋に車で持ち帰るべきテーブルを無理やり押し込み自転車のハンドルにかけ、角に脚をえぐられながらペダルを漕いでいた。
イオンで買った敷布団を三つ折り状態のまま自転車のハンドルの上に乗せて大雨の中家まで帰ったこともある。
グーグルマップを見ながらモスバーガーに行こうとしたら宗教団体の施設にたどり着いてしまい、急いで踵を返したこともあった。
自転車…。
自転車は埼玉県に置いてきた。ごめんね自転車…みたいなそんな数ヶ月の思い出にさえ勝てないほどわたしにとってなんの魅力もない廃れた地方の町に今現在暮らしている。
車がないとやってけないこの町においても、そこそこ交通網の発達したところに住み続けてきたわたしは当然無免許なので、職場も徒歩圏内、子どもの幼稚園も徒歩圏内、オシャレなカフェも、すてきな雑貨屋も、ブックオフも、アニメイトも、メロンブックスもないこの町に6年も住んでいる。
つまらないから嫌いなのかと問われると、う〜ん?という気もする。
友だちが近くにいないからというのも違う気がする。
ただこの半分死にかけ、デッドバイデイライトでいうともう二回は吊るされましたみたいな土地で、そのことを気にもかけずハツラツさのかけらもない(ように見える)人たちが陰気に暮らしている、というふうにしか見えないのだ。
若者だって、子どもだってたくさんいるといえばいるのだが、なんだかもうわたしは「早く逃げて!!!!!」と叫びだしたくもなるような感覚である。
本当なら原因はこれでした!と言って今後の夢とか語りだすべきなのかもしれないけれど、あいにくこの町嫌いという気持ちの発生源は不明なまま今日もコンビニと唯一あるおいしいパン屋さんに行くことだけを楽しみに生きた。
月イチで通っているこころの病院とやらも、果たしてわたしをいい方向へ導いているのか全くわからない。
前回医者に「この状態ってどうなったら正解というか、そのーなんというか…いい感じになったな〜ってあれなんすか」と聞いたところ、今すでにそのとき返された言葉を忘れているくらいには大したことないごく普通の返答がよこされた。
まあなんとなーく「自分の心に問いかけよ…さすれば道は拓かれる…」みたいなアレで嫌いなのかな、とも思うんだけれど、それにしたって陰気な町だと思う。
ここらへんの若者は進学でも就職でも、なにもなくてももうちょっといい感じの、そう、無免許でもあちこち行けるとこに住んだほうがいいと思うよ。
あとブックオフが近所にある、生活圏内にある、行きたいときに行ける、これは大事。本屋さんでもいいんだけど、お金が全然なくても本を買えた!みたいなよろこびを摂取できるのであったらいいと思います。
あとカルディも欲しいし、レコ屋も、いい感じの文房具屋もほしい。
でっかいイオンがほしい。
いかがでしたでしょうか?
今のところてぬたんさんのこの町大嫌いの原因はわかりませんでした!
今後も調査を続けたいと思います!