アート作品紹介
【解説】
バスに乗ろうとしたら、乗客が臭い荷物を持ち込んだらしく運転手ともめていた。
「前も臭いのするものを持ち込んだでしょう。
クレームが来てるんですよ。周りの迷惑考えてください」
そう注意されても乗客は降りようとせず、堂々巡りのまま発車時刻を過ぎていった。
定刻を9分過ぎてようやく発車し、次のバス停ではしびれを切らして待ち続けた女性が乗り込んできた。
彼女は私の目の前にいた客と知り合いだったようで、遅かったじゃないの〜などと言葉を交わした。
「後ろにいるオバサンがダダこねて遅れた」
目の前の客は周囲に響き渡る声でそう言った。
「後ろにいるオバサンがダダこねた」「後ろのババアが」
何度も何度もくりかえされるトゲのある言葉。
私はその言葉が薄暗いバスの中で、その言葉が白く冷たく立ち上っているかのように見えた。
彼女はこの言葉をどんな風に聞いていたのだろう。