ITと未来のすがたを語る④ ChatGPT
その名はググレカス
竹林 ググレカス。
犬塚 は?
竹林 ググレカスだよ、知らないのか? ggrksとも書く。あれこれ質問する前に、自分で検索して答えを見つけろという……まあ、どちて坊やにたいするアドバイスだな。匿名掲示板とかでよく見た。
犬塚 おれは匿名掲示板全盛のときは隠語とかネットスラングとかガンガン使ってノシてたんだぜ、とか言いたいんですか。
竹林 いや、そうじゃなくてさ、支配的だったGoogle検索というシステムが、今、変わろうとしているのかもしれないと思ってさ。
犬塚 ChatGPTのことでしょうか。
竹林 まさに。ChatGPTってこれまでの世界を変える……ゲームチェンジャーになり得る大発明だと思うんだ。
ロジックが得意じゃないGoogle検索
竹林 Google検索の弱点として、ロジック(論理)を扱えないということがある。
犬塚 どういうことでしょうか。
竹林 たとえば、タイ料理の店を探したいとするじゃないか。
犬塚 Googleはあっという間に付近のタイ料理の店をピックアップしてくれますよ。どこがおいしいのかもわかります。
竹林 ところがね、パクチーが嫌いな人が、「パクチーが入ってないタイ料理」を検索しようとすると、難儀してしまうんだ。Google検索って、基本的に単語を探すものだから。「NOT検索」という方法もあるんだけど、「NOTパクチー」でひっかかってくるのは、単にウェブページで「パクチー」という言葉を使ってないページなんだよ。だから、じっさいに行ってみたらパクチーたくさん入ってた、とかふつうにある。
竹林 検索ツールとしてのChatGPTのすごいところはそこだよね。「パクチー嫌いなんですがどういうタイ料理屋に行ったらいいですか」とか、対話のかたちでたずねることができる。
犬塚 パクチーが入ってないタイ料理、ふつうにGoogle検索できますけど。
竹林 うるさいな。たとえだよたとえ!
変わる論文とプログラミング
犬塚 海外の教育機関では、ChatGPTの使用を禁じるところも出てきています。文献のデータ量は英語が圧倒的に多いですから、英語だとより精度の高い回答が得られるそうです。
竹林 「このテーマで論文書いて」って言えばできちゃうからな。それをそのまま使ったらさすがにバレるだろうけど、たとえば3つ4つの論文を合わせるとか、ちょっと自分の意見をまぜるとかしたら、わからないんじゃないんだろうか。そのあたりのルールもこれから作られていくだろうけど、けっこう時間がかかりそうだよね。音楽の違法ダウンロードを取り締まるのも、10年ぐらいかかった。ChatGPTも同じぐらい必要なんじゃないかな。
犬塚 コードも生成できるから、プログラムもつくれますね。「Java使ってこういうプログラムつくって」と言うと、できちゃいます。
竹林 プログラムに関しては「そのままでは商用にならないのでは」という意見もある。とはいえ、補助的に使うのはじゅうぶんにアリなんだよね。たとえば、開発環境であるVSCodeには、ChatGPTの拡張機能が入れられる。バグを探してくれたりするんだよ。マイクロソフト(VSCodeの開発企業)からOpenAI(ChatGPTの開発企業)への出資も決まったし、プログラミング環境は大きく変わってくるかもしれないね。
ChatGPTはウソをつく
竹林 ChatGPTってね、ウソつきなんだよ。
犬塚 ウソつき?
竹林 おもしろい実験した人がいてね、「馬は三つの心臓をもつ」って言い張るんだよ。すると、一度は否定するんだけど、それでも執拗に言い張ると、それに添った回答を出すんだ。
竹林 「ChatGPTは押しに弱い」だってさ。おもしろいな。ウヘヘヘ。
犬塚 笑い事ですか!
竹林 こんなの、笑うしかないだろう。コンピュータとかAIとか、冷たいイメージで語られていたのに、ウソつきとか押しに弱いとか、メチャクチャ人間くさいよな。イメージ変わるよ。
犬塚 回答がホントかウソかわかんないってことじゃないですか。
竹林 その判断ができるのって、専門家だけなんだよ。馬の心臓が三つとかは、常識的にウソだってわかるけど、問題が複雑になるとそうもいかない。それが正しいのか間違ってるのか、判断がつかない。プログラムもそうだけど、しばらくはChatGPTに自由に書かせて、専門家がちがってるところを直すとか、そういう使い方をしていくことになるんじゃないかな。