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抱っこ指南

ぐーちゃんがじっと見ています。
いぬうた市の自宅で、同じ家に住んでいる、
きゅん君のことを先程から、じっと見ています。
テーブルの椅子に座ったママの横で、
床に座っている、きゅん君の動向を、鋭い目で、
じっと見ている、ぐーちゃんです。
きゅん君はどうやらママに抱っこをしてもらいたいようです。
ママのことをじっと上目遣いで見つめて、
抱っこしてくれサインをずっと送っています。
ママはワザとじらしているのでしょうか?
ちらちらと、きゅん君を見ては、にんまりしています。
そんなママの態度に気づいている、きゅん君は、
あともうひと押しとばかりに、くんくんと鳴いて、
最後のアピールです。
するとママは根負けして、きゅん君をヒザに乗せました。
見事、きゅん君の抱っこ作戦成功です。
その様子の一部始終を、
ぐーちゃんはしっかり観察していたのでした。
「ぐー、僕がママに抱っこされるまでを、ずっと見てただろ?さては、ぐーもママに抱っこされたいんじゃないの?」
そんなことがあって、しばらくして、
きゅん君はにやにやしながら、ぐーちゃんにそう言いました。
ぐーちゃんは、いきなり本心を突かれて、
思わず、きゅん君に正直に告白しました。
「うん。ママに抱っこされたい。でも、ぐー、何か恥ずかしくて、きゅんみたくバカみたいに、あんなに媚びへつらえないから」
そうなんです。
ぐーちゃんは、きゅん君がママに、
いとも簡単に甘えられて、抱っこをねだることが出来るのが、
羨ましくて、じっと見ていたのでありました。
ぐーちゃんが、言ったことに、きゅん君は気分を多少害し、
いくらか、すったもんだありましたが、結局、
「じゃあ、僕がママに抱っこしてもらう法の一切合切を伝授して進ぜよう」
「きゅん師匠!」
と言った感じで、きゅん君が、ぐーちゃんに、抱っこ指南をすることになりました。
上目遣いの送り方。切なく甘える鳴き方等々の、
一から十までを、きゅん君から教わり、ぐーちゃん、
いよいよ実践の時となりました。
しかし、いざその時が来ると、
なかなか練習のようには、上手く出来ず、
やっぱり恥ずかしくなって、ただママの横で、
もじもじするだけの、ぐーちゃんです。
「ぐー、全く、何やってんだよ。まずは上目遣いだろ」
きゅん君が、ちょっと離れたところから、
声がけしますが、ぐーちゃんの耳には届いていないようです。
ママも不思議そうに、ぐーを見ます。
しかし、ぐーちゃんは相変わらず何にも出来ないで、
もじもじしたまんまでいます。
心配したママが、ぐーちゃんの頭を撫でようと、
手を、ぐーちゃんの顔に近づけました。
すると、ぐーちゃんは、ママの指をちろりとひとつ舐めました。
それで察したママは優しく、ぐーちゃんを持ち上げて、
温かいヒザの上に抱っこをしてくれて、
ぐーちゃんはとても嬉しそうに微笑み、
きゅん君も一安心した、いぬうた市の昼下がりでした。

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