どーどーと呼ばれて
いぬうた市の、ぐーちゃんの大きな特徴を、
ひとつあげるとしたら、胴が大変長いところでしょうか。
そしてその長い胴のわりに短い4本の足を、
ちょこまかと動かして歩く姿は、
何ともチャーミングなものがあります。
ある時、そんなふうに歩く、ぐーちゃんを、
見て気付いた、きゅん君が言います。
「こうやって改めて見ると、本当に、ぐーの胴って長いよな。そんなに長いと、名前も、ぐーじゃなく、どーの方がピッタリじゃないか」
そう言って大爆笑する、きゅん君です。
「我ながら、ナイスネーミングだな!どー、どー、最近調子どー!私は元気よ。どーにも元気ー!なんちゃってー」
なんて、おどける、きゅん君に、ぐーちゃんの怒りは、
一気にマックスに達しました。
「きゅん!何て失礼なこと言うの!別に、ぐーのお胴が長くなって、きゅんには関係ないじゃない!それを、どーだなんていい加減な呼び方したりしてー!ぐーには、ぐーというママがつけてくれたご立派なお名前を勝手に変えたりしないでよ!」
とムキになって怒る、ぐーちゃんがまた面白くて、
「おやややや!どーが怒ってるどー!長い長い胴をブルブルと震わせながら、どーが怒っているどー!いやはや、これはどーなってるんだどー!ケラケラケラー!」
などと、とことんからかう、きゅん君です。
そのため、ぐーちゃんの怒りはなかなか収まりません。
きゅん君がどこかに行って、ひとりになっても、
ぐーちゃんは怒りに打ち震えています。
「何よ!きゅんたら!ふざけんじゃないわよ。ぐーのお胴がいくら長いからっていっても、どーなんて呼ぶことないじゃない!」
と、きゅん君への罵倒が止まりません。
「よりにもよって、どー、どーだなんて、まるでお馬をあやす時に言うお言葉みたいで何てカッコ悪いのかしら。ぐー、そんなの絶対イヤ!」
と、実際、馬の背中を撫でながら、
どーどーと言っている自分を想像する、ぐーちゃんです。
すると、ぐーちゃんの中である心境の変化が生まれました。
「おや、まてよ?」
ぐーちゃん、更に考えます。
「お馬さんって、とてもキレイよね。ぐー、何回かテレビさんで見たことあるわ。足も早くていらっしゃるし、お姿形もステキだし、そんなお馬さんが落ち着くお言葉が、どーどーな訳よね。ということは?」
ということは何でしょう?ぐーちゃん。
「ということは、もしかして、どーどーもステキなお言葉じゃない?そうよ。きっとそうよ。あんなにステキなお馬さんを落ち着かせるお言葉なんて、まるで魔法のようだわ。お馬さんをあやせる、とてもカッコいいお言葉だわ。ぐー、気に入ったわ。どーと本当に改名さんしてもいいくらい」
と、先程からまるきし180度、
考えが変わった、ぐーちゃんです。
なので、そのあとでまた、きゅん君が、
ぐーちゃんのいるとこにやってきて、
また、ぐーちゃんをからかってやろう!と、
「おっ、まだ、どーがそんなとこいるどー!」
などと言っても、
「そうよ。それがどーしたの」
って、平然と受け流し、
あれ、ぐーのやつ、さっきと全然違う態度だぞ。
と、頭の中が、ハテナハテナになる、
きゅん君なのでありました。
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