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朝方は友達

冬の、いぬうた市の夜です。
しかし夜は夜でも、今は、もうすぐ朝を迎えようと、
太陽がそろそろ出る準備をしている頃になりました。
それでも空はまだまだ真っ暗で、
誰もがまだ眠りの中にいるようです。
なので、きゅん君と、ぐーちゃんの自宅の辺りは、
シンとして静かで、穏やかで、1日の始まりのスタートも、
もうちょっとだけ待っていてもらっていて、
とても、ゆるやかに時間が流れているのでした。
そんな中、きゅん君はすでに起きていました。
ぐーちゃんも、ママも、飼い主も、夢の中で、
活躍している時に、ひとりだけ、ベッドを抜け出して、
ベランダの入り口がある廊下に座って、
窓の外を見ています。
何か、きゅん君、目が覚めてしまって、
仕方なく、ぽつんと外を見ているのでしょうか?
いやいや、そうではありません。
きゅん君は、この明け方のちょっと前の時間が大好きなのです。
だから、今日も率先して、早々と起きて、
このポジションに移動して来たのです。
「僕と、この明け方前の暗闇の君とは友達なんだよ。そうだよね?」
と、窓越しに暗闇に語りかけます。
本当はベランダの外に出たいのですが、
外は何せ寒いので、ガラス戸は閉まっているので、
出ることが出来ない、きゅん君です。
なので仕方なく、窓越しに話を続けます。
「この時間や暗闇は僕だけのモノで、僕だけの友達のような気がするんだ。何故かって?何だか上手く言えないけど、僕の心を預けられるような気がするんだよね。分かってくれるかな?窓越しに会っているから、なかなか伝えるのも大変だよね。でも窓越しに話するって、よく考えると何だか刑務所の面会みたいだね。何故知っているかって?この間観てたテレビでそんなシーンがあったんだよ。それだと、どっちが捕まった側なんだろうね?」
そう言って、きゅん君はひとり大笑いしました。
「でもとにかく君のこと考えると僕は心が落ち着くんだ。これからは陽が長くなっていくから、どんどん会う時間が短くなるけど、必ず会いに来るからね」
変わらず外を見ながらも、きゅん君、ぶるぶると震えました。
廊下はだいぶ冷えてきたようです。
「じゃあ、そろそろ行くよ。またね」
言ってからも、しばらく外を見つめたのち、
寝室に去って行った、きゅん君です。
寝室には、きゅん君を待っている、布団がありました。
温かい布団も、また、きゅん君の友達なのです。
「お待たせ。今度は君と話す番だ」
と、言って、嬉しそうに、きゅん君は布団に横たわりました。
そのように、きゅん君には友達がいっぱいいるのです。

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