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マジックアマリリスは偉い

ある日、いぬうた市の、きゅん君と、
ぐーちゃんの家にアマリリスがやってきました。
やってきたと言っても、勝手にトコトコ歩いて来たのではなく、
ママが花屋さんで購入して玄関の棚に置いたのです。
「そりゃそうでしょ。花が歩いたりする訳ないじゃん。なんせ植物だから。僕らみたいに歩いたり出来ないもんね」
とは、きゅん君のコメントです。
あら、きゅん君、その口ぶりだとアマリリスより、
自分の方が上だと思っていませんか。
「えっ、そりゃそうでしょ。だって花だよ。確かにキレイだったりはするけど、僕みたいにいろいろ出来ないでしょ。歩いたり、ましては走ったりさ」
と、あくまで、きゅん君は自分が上だと言い張ります。
でも、きゅん君、何かが出来るのが別に偉いのではないのでは?
このアマリリスはマジックアマリリスといって、
土も水もいらないのに立派に成長するのです。
きゅん君みたいに何かを食べないとダメッ!
では全然ないのですよ。
マジックアマリリスは何もないのに元気に花を咲かすのです。
これはある意味、きゅん君より上なのでは?
「へえ、マジックアマリリスさんってお偉いのねえ。きゅんみたいな食いしん坊には考えられないお話ね」
途中で加わった、ぐーちゃんが、きゅん君を茶化しますが、
「そんなことある?そんなの絶対ウソだよ!何にも飲み食いしなくて大丈夫だなんて!ふん!僕は信じないよ。誰も見てない隙に盗み食いとかしてるに決まっているよ!」
って、まずはマジックアマリリスを疑ってかかる、
きゅん君でありました。
そんな、きゅん君を、ぐーちゃんは笑い飛ばします。
「マジックアマリリスさんが盗み食いですって?あはは。あはは。きゅんはなんておバカなの。だってこの方はお口がないのよ。それをどうやって盗み食いするというのよ。みんながみんな、きゅんみたいに盗み食いなんてしないのよー」と。
それでも、きゅん君は反論します。
「バカはどっちだ。ぐー。このマジックアマリリスをよく見てみろ。大きな花を咲かせているじゃないか。この花びらが実は口なんだよ。それで誰もいない時に何かを食べてるんだ」
何てことまで言って、あくまで盗み食い説を譲らない、
きゅん君でありました。
「きゅんたら、おバカ、おバカだとは思っていたけど、そこまでおバカだと、ぐー思わなかったー」
っと、呆れた、ぐーちゃん、そう言い残し、
2階に上がって行ってしまう、ぐーちゃんです。
「何だよ。ぐーのヤツ。僕の言ってること、まるっきり信じてないな。よーし、今に見ていろ。僕が盗み食いの現場を目撃してやるー!」
そう言った、きゅん君、でも一体どうするつもりですかね。
と、それからの、きゅん君の行動はこんな感じでした。
夕食に出されたフードを泣く泣く数粒残して、
玄関のマジックアマリリスがある棚の近くに置きました。
そして夜通し、玄関ホールに居座って、
マジックアマリリスを監視し続けたのです。
しかし当然マジックアマリリスはフードを食べたことなく、
時間だけが虚しく過ぎていったのでありました。
いやあ、きゅん君、いい加減眠いでしょ。
そろそろ意地を張ってないで素直に負けを認めたらどうですか。

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