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車の音が聴こえたら

突然、真夜中に、車が走る音がして、
それが、いぬうた市の、きゅん君と、
ぐーちゃんの家の付近で、
しかし、ぐーちゃんはその音に全く気付かず、
そのまま、ぐーすか寝ていたのですが、
きゅん君は、モウロウとする頭の中で、
「あっ、車の音だな」
と、思ったのでありました。
「こんな真夜中に一体、どんな車だろう」
そう、考えた時、きゅん君は、
その車のナンバープレートが頭に浮かんで、
それが1010だったので、ずいぶんとビックリしました。
と、いうのも、きゅん君がこの家に来る前に、
住んでいた先代わんこが、てんてんといって、
1010というナンバーは、てんてんと、
読むことが出来ることを、何故か知っていたからでした。
女の子わんこの、てんてんのことを、きゅん君などは、
てん姉と呼んで、何度か、今は写真の中にいる、
てん姉と話したことはあるのですが、
「そういえば、最近、てん姉と話していなかったな」
と、気付いて、てん姉の名前のその車に興味を持ちました。
「一体、どんな車だろう?」
すると、その車の全体も見えてきて、
それが真っ黒い車だったので、
「なんだあ!てん姉じゃないか!そうかあ!今は車になったんだね!道理で最近、話ししてないと思ったよ!」
と、全てが腑に落ちたのです。
てん姉は、きゅん君と同じく、黒いわんこだったので、
この車は、てん姉に間違いない!
と感じ取ったのでありました。
そう思った次の瞬間、きゅん君は、
てん姉の車の中に乗っていました。
「てん姉は走るの速かったんだよね。前に話した時、確かそう言ってたよね」
きゅん君が、てん姉に話しかけると、
きゅん君の心の中で返答がありました。
「やっぱり!そうだったんだね。だから今は車なんだね」
きゅん君には、いろんなことが納得ばかりです。
てん姉が直接、きゅん君の心の中に語りかけてくる会話は、
どんどん弾んで、きゅん君は嬉しくて仕方がありません。
「うん、元気だよ。僕も、ぐーもすこぶる元気だよ。ぐーなんか元気過ぎて、ウザったいくらいだよ」
時には、ぐーちゃんの悪口も織り交ぜながら、
話しはますます続きます。
「えっ、てん姉、僕の走るのが見たいって。そんなのお安いご用だよ。僕も、てん姉に是非とも見てもらいたいさ。あっ、いい考えが僕にあるよ。いぬうた市のドッグランに行けば、思う存分走れるよ。てん姉も一緒に走ろうよ!」
きゅん君がそう提案すると、次の瞬間、
きゅん君はドッグランにいて、
「てん姉も入っておいでよ」
と誘いますが、
「えっ、車はドッグランに入れないって。それは残念だな。じゃあ、僕の走りをそこから見ていてね」
と、きゅん君は、てん姉にいいところを見せようと、
全速力で走ります。
何度も何度も走って、夢中になって走ったので、
てん姉がそこにいることも忘れて走って、
気がつくと、きゅん君はベッドの上にいたのです。
「あれ、てん姉、どこ行ったかな?てん姉」
思い出して、声にしますが、そこはやっぱりベッドの上で、
朝を迎えた、きゅん君の頬に一粒涙が流れました。

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