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今日への扉

さて、今日も、いぬうた市は、きゅん君と、
ぐーちゃんのお話で、今日の主役は、きゅん君です。
きゅん君と、ぐーちゃんの家には、
階段の1番上に転落防止のためのゲートがあるのですが、
きゅん君が朝起きた時点では、ゲートは閉まっています。
大抵、ママが1階に降りる時、ゲートを開放して、
そのタイミングで、きゅん君も下に降ります。
それが、きゅん君の朝の流れなのですが、
きゅん君は、ちょっとでも早く1階に行きたいのか、
ママがゲートを開ける、だいぶ前から、
ゲート前で待機をしています。
「何で、きゅんはママがゲートを開けるのを、わざわざゲート前で待っているの?」
ある日、ぐーちゃんが聞きました。
すると、きゅん君の答えはこうでした。
「僕は待つのが好きなんだ。待つって、何かわくわくしないかい。テレビで見たことあるけど、人気があるお店や場所には、行列をつくって待ったりするんだよ。ましてや僕はいつも一番乗りさ。こんなラッキーなことはないんじゃないかな」
それを聞いた、ぐーちゃんは、
何だかあきれてしまいました。
「ぐーには全く理解できないわね。待って行くとこって、せいぜい1階のソファでしょ。遅れて行ったって、誰もソファを取らないし、ソファは逃げないわ。そこに急いで行ってどうするの?」
「そうゆうんじゃなくて、待つのが楽しいのさ。いわば結果じゃなくて過程が楽しいんだよ。それにこれはただのゲートじゃないよ。新しい今日の扉を開けるゲートなんだ。今日一日がここから始まるんだ」
なるほど。
今日を開く扉ですか?
なかなかいい事を言う、きゅん君ですが、
どうやら、ぐーちゃんには伝わってないようです。
「今日にいちいち扉があるの?そんなのおかしいわ。だったらずっと2階にいたら今日はいつまでも来ない訳?ぐーが思うに、今日はこっちから行くんじゃないて、あっちから勝手に来るものよ」
確かに、ぐーちゃんの言う通りですが。
「それはそうなんだけど、何というか、ケジメというか、儀礼というか、考え方だね。今日を楽しみにする、その気持ちさ」
「やっぱり、ぐーには、きゅんの気持ちは分からないわ」
と、つぶやいて、ぐーちゃんは、
それっきり聞くのを止めて
「何だか、きゅんと話してたら疲れちゃったちゃたわ。ぐーはちょっと寝ます」
と、そのまま目をつぶってしまいました。
そんな、ぐーちゃんの態度に、きょとんとする、
きゅん君ですが、それ以降も、朝、ゲート前で、
待つ習慣は止めません。
ほら、今朝もまた、わくわく顔で今日を待っている、
きゅん君の姿が、そこにはありました。

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