ひとりで寝れるもん
いぬうた市の、ぐーちゃんは、きゅん君や飼い主には、
普段から横柄な態度をとって厚かましいところが、
あるのですが、根はとってもシャイな女の子で、
臆病な性格が出てしまう場面も多々あります。
そのひとつが、夜、寝る時の状況なのですが、
ぐーちゃんは必ずといっていいほど、
誰かにくっついて寝たがるのです。
その相手は大抵、ママだったり、
きゅん君だったりしますが、
そのふたりは寝返りを打つことも多いので、
明け方近くになると、仕方ないのか、
普段、軽蔑している飼い主の足元に、
触れて寝ていることもままあります。
それは何故かというと、
飼い主が1番寝返りを打たないからです。
でも、だからといってこれが、ぐーちゃんの本意であるか?
と、いうと全くそうではありません。
それどころか、朝起きて、それが飼い主の足元だったと、
分かるたんびに、
「あーあ、ぐー、お今晩も結局、飼い主の足元で寝てしまったわ。これは、ぐーのお美学、おポリシーと真っ向さんから反することなのにー」
と、しばし、落ち込んだりしていました。
そんな、ぐーちゃんの悩みの種を、
きゅん君も分かっていて、
ある朝、また飼い主の足元で寝ていた、ぐーちゃんを、
ふと、からかったりしたことから、
ぐーちゃんの決断は始まりました。
「ぐーも、いい加減、誰かにくっつかないで寝れないもんかね。僕だったら飼い主なんかに触れて寝るくらいだったら、迷わず、ひとりで寝るけどな」
と、この、きゅん君の言葉が、ぐーちゃんに、
ズキン!と突き刺さります。
ぐーちゃんにしてみれば、
まさにめちゃくちゃ痛いところを突かれた!
といった感じでした。
なので、ムキになって言い返します。
「あんまり、ぐーをバカにするもんじゃないわ!そんなの簡単さんに決まっているじゃない!ちょうど、ぐーも今晩さんからひとりで寝ようと思っていたところよ!」
と、売り言葉に買い言葉で、
早速、今晩から、ひとりで寝ますチャレンジを、
行うことになった、ぐーちゃんです。
それで、また、あっという間に夜が来て、
いざ、誰にも触れずに寝ようとすると、
不安で、不安で、たまりません。
野生の本能なのでしょうか?
夜、急に誰かに襲われる可能性に対して、
仲間に守って欲しい願望を隠せずにいるのです。
それでもしばらくの間、ジッと誰にも触れずに寝ていると、
ここであることを発見した、ぐーちゃんです。
「ぐー、今、ひとりだけど、でも、ひとりじゃないわ。確かに誰かいらっしゃる。あっ、これはスースーさんね」
それは、ぐーちゃんが、誰とも、くっついていないので、
自身の周囲に妙な隙間風を感じたのを、
スースーと表現したのでありました。
それに気付いた、ぐーちゃん。
それからは、
「今晩は、スースーさん、わたし、ぐーよ。これからはずーっと、ぐーとお休みして下さるかしら?」
と、ひとりで寝ることが出来た、ぐーちゃんです。
そして、朝になり、きゅん君が先に起きて、
ぐーちゃんが誰にもくっついてないで、
寝てるのに気が付いて、思わず、
ぐーちゃんに声をかけました。
「ぐー、やればできるじゃん」
ぐーちゃん、その、きゅん君の声で目が覚めて、
「だから言ったでしょ。そんなの簡単だって。ぐー、ひとりで寝れるもん」
うふふ。と、謎めいて笑った、ぐーちゃんです。
この際、きゅん君には、本当は、スースーさんと、
寝ていたことは内緒にしておいていいですね。