見出し画像

上から踏むな!

いぬうた市で朝から、とてもうるさい家があると思ったら、
案の定、きゅん君と、ぐーちゃんの自宅ですね。
どうやら、朝から2階の寝室のベッドの上で、
何かを言い争っているようです。
ちょっと聞いてみましょうか?
「せっかく、ぐーがふとんさんの中で、心地よい眠りについていたというのに、よりによって、ふとんさんの上から踏むことないじゃない!」
なるほど。ぐーちゃんが、きゅん君に文句があるようです。
それに対して、きゅん君が答えます。
「悪かったよ。でも、ぐーがふとんの中にいるなんて知らなかったんだから、仕方ないじゃないか」
まあ、それは確かに仕方ないかもしれませんね。
でも、ぐーちゃんは、それに反論します。
「じゃあ、きゅんは、家の中にいる時、巨大怪獣さんに踏み潰されてもいいの?それと同じことよ。お家があるというは、中に当然、誰かさんがいると思うのが普通の感覚よ。でも巨大怪獣さんはそんな感覚もなく、別に悪気もなく、平気で家の中にいる誰かさん踏み潰すわ。だから、きゅんは巨大怪獣さんと一緒ね」
と、だいぶ飛躍した意見を言った、ぐーちゃんです。
それを言われて、きゅん君は動揺しました。
その、きゅん君の表情を見逃さない、ぐーちゃんは、
ここで一気に畳み掛けます。
「あーあ、きゅんは野蛮!とっても野蛮!かなり野蛮!まじ野蛮ー!」
「誰が、や、野蛮だよ!ちょっと僕が誤って踏んづけたくらいで、それはさすがに言い過ぎだぞ!」
言われっぱなしで、マズイと思った、きゅん君が、
必死に反撃を試みますが、
イマイチ良い切り口が見つかりません。
「誤ってでも踏んづけたモノは返ってこないのよ。ぐーは幸いにも身体は大丈夫だったけど、ぐーの踏んづけられて傷付いた心は決して返ってこないのよ。そこのところどうしてくれるのよ。きゅん」
ここでダメ押しの決定打を放った、ぐーちゃんです。
これにはかなりのダメージを負ったようで、
もはや、きゅん君、全面降伏するしかないのでしょうか。
「それは悪かったよ。ぐー。僕が全部悪かった」
とうとう、きゅん君は自分が悪かったことを認めて、
謝罪をしてしまいました。
しかし、ぐーちゃん、それでもまだ攻撃の手をゆるめません。
「誤りを謝っただけでは、何もしていないのと、おんなじことよ。ここはちゃんと形に表してくれないと。そう、きゅんの誠意をよ。そうねえ、ここは、夜もらう、ご飯のフード10粒で手を打とうじゃないの」
いよいよ、ぐーちゃんは、
こんな一方的な、和解案を持ち出してきて、
どんどん、調子に乗る、ぐーちゃんです。
さすがに、きゅん君も悔しそうで、
奥歯を噛んで、こらえています。
ぐーちゃんは、しめしめ、フードをもらう、
いい材料が見つかった。
と、にんまり、きゅん君を見つめます。
それでも、なすすべがない、きゅん君は、仕方ないと、
「分かった」と言いかけたところで、
突如、ぐーちゃんの頭上から、足が降りてきて、
ぐーちゃんは、ちょっとだけ踏んづけられました。
「ぎゃー!」
と、ぐーちゃんは、驚きと、痛みで、そう叫びました。
一体、何が起きたのでしょう?
それは、今まで寝ていた飼い主が急に起き上がって、
ベッドの上を歩き、ぐーちゃんに気づかず、
ちょっと踏んづけてしまったのです。
その光景の一部始終を目撃した、
きゅん君は、こう思ってしまいました。
「ざまあみろ。飼い主こそ、まさしく巨大怪獣だ。悪いとも何とも思ってないぞ。いい気味だ」
と。
これはいい教訓になりますね。
あんまり相手を追い詰めると、逆恨みをされて、
やがて自分に返ってくると。
このあと、きゅん君が、ぐーちゃんを気遣ってあげて、
ぐーちゃんも、ちょっと言い過ぎた。
と謝ってくれることを願って、
今日は、この辺で、いぬうた市からお別れしたいと思います。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?