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白クマ現る

「じゃんじゃじゃーん!さて、今月のぬいぐるみは何だあ?」
と、いぬうた市の、きゅん君が、
突然ノリノリな声を張り上げましたね。
「ぐー、ドキドキとワクワクが止まらないわあ!一体今月はどんな方がいらっしゃるのかしらあ?」
同じく、ぐーちゃんも興奮がクライマックスなようです。
そうなんです。また今月もやって来たのです。
わんずボックスが。
わんずボックスとは、わんこグッズが、
いっぱい入った宅配のボックスで、
ママがそのボックスを毎月ふたりのために注文してくれていて、
その中に必ずその季節に沿ったぬいぐるみが、
入っているのですが、さあて、ママがボックスを開いて、
ぬいぐるみを取り出しましたよお。
で、そのぬいぐるみの正体は?というと。
「白クマだあ!」
その通り!
おふたりが声を揃えて言った通り、
出て来たぬいぐるみはマフラーを首にした、
白クマだったのですー。
「まあ、ようこそいらっしゃったわね。白クマさんって普段、いぬうた市からずいぶんと遠いところにお住みなんでしょう?ぐー、おテレビで観たことあるわあ。それはそれはお疲れ様でした」
と、まずは旅の疲れを労う、ぐーちゃんです。
でもまあ、これはぬいぐるみですからね。
そんなに遠くからは来てないと思うのですが。
しかし、おふたり、新しいぬいぐるみに夢中で、
聞く耳を持ってないようで、
「そう簡単に遠いっていうけど、ぐー、白クマが住んでいるところって本当に遠いところなんだぞ。これもテレビでやっていた情報だが、何しろ白クマはめちゃくちゃ寒いところに普段すんでいるんだ。それはどうやら北極というところらしい」
と、きゅん君もまた、テレビで聞きかじった情報を口にします。
「ほっ、ほっ、ほっ、北極!とな!きょれは、きょれは、ほっつきょうにお疲れ様れす!」
と、今まで全く聞いたことない、
北極という言葉の響きで、すでに、
ビックリした、ぐーちゃんです。
「それはどんなにかお寒いところから来たのでしょうね。だっておマフラーまでなさっているし」
と、続けて言った、ぐーちゃんに、きゅん君が反応します。
「あっ、本当だ!この白クマ、マフラーしてるよ。確かに北極は寒いかもしれないけど、ここは今や、いぬうた市だ。北極に比べれば寒さも大したことなかろう。いや、むしろ暑くすらあるのでは?だったらもうマフラーは取ったほうがいいんじゃないかな。ちょっとは涼しくなると思うよ。そうゆう訳で、この白クマの首にかかっているマフラーを取ろう。取ろう」
って言って、白クマのぬいぐるみの首に垂れ下がっている、
マフラーの片方の端っこを、
口で引っ張り始めた、きゅん君です。
「ぐーはもう片方の端を引っ張れよ」
「ようがす」
と、あら、この光景は何でしょう。
まるでいつもふたりが遊んでいる、
引っ張りっこではありませんか。
「まあ、何て楽しいんでしょう。白クマさんのおマフラー引っ張りっこー!」
なんて、ぐーちゃんは歓喜の声を上げまして、
「本当だよー!ぐー!よーし、ぐーと僕とどっちが勝つか対決だあ!」
と、きゅん君も一転ノリノリになって、
こうなると、もうおふたり、当初の目的を完全に忘れて、
引っ張りっこに夢中になっている、
きゅん君と、ぐーちゃんです。
「オーエス!オーエス!」と、楽しそうなふたりとは正反対に、
白クマの目が悲しそうなのは、もしかして見間違いでしょうか。


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