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シッポと戦う

いぬうた市の、きゅん君も、ぐーちゃんも、
わんこという、シッポ族の一員でありますからして、
おふたり共、それぞれに立派なシッポをお持ちであります。
そうですよね?きゅん君、ぐーちゃん。
「お持ちだなんていうと、誤解を生むよ。別に所持しているんじゃなくて、れっきとして、僕の身体の一部なんだからね。でもってそれはそれは頼もしい存在さ。ある時は僕の感情を僕に代わって、訴えたりしてけれたり、そしてある時は、僕のお尻をガードしてくれたりと、まあ相棒と言っていい、素晴らしい奴さ」
と、嬉しそうに、そう答えてくれました。
相棒のシッポも、きゅん君と同じ意見なのか、
ふりふりと頷くように揺れています。
ぐーちゃんも、シッポに対する思いは、
きゅん君と同様な感じですかね?
しかし、ぐーちゃんは違うようです。
ぐーちゃんのシッポも、ノーと言うかのように、
思い切り振れていますね。
「ぐーは、ぐーのシッポさんを正直よく思っていないわ。だから最近はなるべく見ないようにしているし」
えっ!そうなんですか?
寝ている時とかで、丸まっている時、
シッポを間近にしていると思うんですけど。
「そうゆう時も目をつぶって、目を合わさないようにしてるの。あちらも、ぐーのことはいつもは知らんぷりしているわ」
シッポには目がないから、目は合わないと思うのですが。
でも何で、シッポと不仲なんですか?
「だってあんまりじゃない。ぐーが、ぐーの気持ちを隠したい時に限って、シッポさん、揺れたりして、勝手に、ぐーの感情をバラすし、何よりも、すぐお下がりになるのよ。ぐー、そこまで臆病さんではないわ。それなのにやたら大げさに反応されるから、ぐー、カッコ悪いったらありゃしないわ」
いろいろ不満がおありなんですね。
ぐーちゃんのシッポは、シッポで、
ぐーちゃんに不満があるようで、
文句を言うように、大きくぶんぶんと振れています。
でも、こう見ると、何だか仲良しに見えるんですけどね。
相手に不満があるのは、実は自分自身に、
問題があったりしますけどね。
すると、ぐーちゃんのシッポが更にも増して、
物凄い勢いで、ぶんぶんぶんぶん!とスイングしています。
このシッポの反応に、ぐーちゃんがカチンときたようで、
「もう!そんなに動いて、うるさいわよ!ちょっとは落ち着きなさい!」
と、振り向きながら叫ぶと、
ぐーちゃんの顔に、ペシン!とシッポが当たったのです。
これで、ぐーちゃんは完全にキレて、
「何、されちゃったりして下さってんのよ!ふざけなさるのもいい加減になさい!」
と、敬語と文句がごっちゃになって、
おもむろに、自分のシッポを噛んだ、ぐーちゃんです。
「痛いっ!」
当然ですが、痛みを感じたのは、ぐーちゃんの神経なので、
ぐーちゃんが叫び声を上げて、それでまた、
その怒りで、
「シッポさん、許すまじ!」
と、シッポを噛んで、また痛くて。と、
この不毛な戦いはしばらくと続いて、
ぐーちゃんはまた更にシッポと不仲になるのでした。

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