私だけのヨーグルト
今、昼下がりの、のんびりのんびりと、
時間が流れている、いぬうた市です。
そんな平和な空気の中で、ぐーちゃんはどうしているか、
というと、自宅の2階の寝室のベッドの上で、
何やら嬉しそうです。
何がそんなに嬉しそうなんでしょうか、ぐーちゃんは。
あっ、よく見ると、伏せをした状態の格好の、
ぐーちゃん、両前足で何かを抱え込んでいますね。
ぐーちゃん、そんな大事そうにしているそれは何ですか?
「見てお分かりにならないかしら?これはもちのろん、ヨーグルトさんよ。ぐー、さっきママにもらったの」
ああ、なるほど。
その抱え込んでいるのは、ヨーグルトの空箱ですか。
ファミリーパックといいますか、
ちょっと大きいサイズの容器です。
その中にまだまだヨーグルトが中にこびりついているので、
結構舐めごたえがあるヤツじゃないですか。
「そうなのよ。さっきママ、こっそりと、ぐーにだけくれたのー!でもお1階で舐めると、きゅんに気付かれるから、ゆっくりお2階で舐めようと思って、わざわざ持って来たのー!」
それはよかったですね。
口に咥えて持って来たんですね。
それは優雅な昼のひとときになりそうですね。
「うん。ぐー、おひとり時間をじっくりたっぷりと楽しむー」
と、ぐーちゃん、鼻先をヨーグルトの空箱に突っ込むのでした。
最初の頃は壁面にも結構ヨーグルトが、
こびりついて残っていたので、ぺろぺろと、
それで満足していた、ぐーちゃんですが、
壁面をほぼ舐め尽くすと、一回顔を空箱から抜きます。
そして、ジーッと空箱の底を見ました。
すると何と、底にはまだいっぱいのヨーグルトが、
残っているではありませんか。
「あの底さん、何て素晴らしい輝きをしているのかしら。あそこにはまだたんまりとお宝が沈んでいるのね。ようがす!この、ぐーがあのお宝ヨーグルトさんをお救出させるざんすー!」
と、次なる目標を空箱の底に狙いを定めた、ぐーちゃんです。
しかし、ぐーちゃんのマズルは、
いかんせんそんなに長くはありません。
何度かトライしますが、やっぱり届きません。
そこで、ぐーちゃんは考えました。
「かくなる上はー、届かないなら無理矢理届かせようホトトギスさん!」
と、容器の上の方からバリバリ噛み始めたではありませんか。
なるほど。
噛みちぎって、箱を破壊して、何が何でも舐めようと、
そうゆう訳ですね。ぐーちゃん。
そんな実力行為に出た、ぐーちゃん、
無事に底に溜まっていたヨーグルトも全部、
舐め尽くしたのですが、優雅どころか、
戦いに暮れて、疲れ切って、へとへとな、
ぐーちゃんのある日の昼下がりでした。