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秋の味覚を食べ尽くしたい

いぬうた市に住んでいる、きゅん君と、
ぐーちゃんに新たな好物ができました。
それは梨です。
毎年、この時期になると、
知り合いの農家さんがいっぱい送ってくれるのです。
種類は幸水です。
とにかくシャキシャキという歯応えがたまりません。
だから、ふたりは梨のことをそのまんま、
シャキシャキと呼んでいます。
「シャキシャキって本当に美味しいわね。きゅんは去年も食べたの?」
ぐーちゃんは、きゅん君にそう聞きました。
「うん。僕もすっかり大好物さ。でも秋はシャキシャキだけじゃなくて、他にもいっぱい美味しいモノがあるよ」
これは聞き捨てならない情報です。
「えっ?まだ秋には美味しいモノがあるの?それは何?詳しく教えてもらえるかしら?」
「いいよ。そうだなあ。まずはホクホクかなあ。それとホックホクもあるし、そうそう、ジュアジュアもたまらなく美味しいね。あとはトロトロも最高だね」
「何と!シャキシャキだけじゃなく、ホクホクにホックホクにジュアジュアにトロトロもあるなんて!ぐー、全部早く食べたーい!」
きゅん君はシャキシャキが梨のように、
他の食べ物も全部、擬音で呼んでいるので、
誰もそれが何の食べ物か皆目見当つきません。
その分、ぐーちゃんは想像が膨らみます。
その日は、それ以降ずっと、
ホクホクとホックホクとジュアジュアにトロトロが、
一体どんな食べ物か?そればっかり考えています。
「ホクホクとホックホクはきっと兄妹ね。シャキシャキは冷たくするとより美味しいけど、ホクホクは温かい感じがするわ。ホックホクは更に温度が高いのかも」
ホクホクとホックホクはそうイメージしました。
「ジュアジュアはかなり水分が多いんじゃないかしら?残るトロトロはやっぱり身が柔らかい感じよね」
これで、大体の想像はつけた、ぐーちゃんです。
あとはこれらをいつ食べられるか?ですね。
そんなことがあって数日経って、
とりあえずまたシャキシャキを食べることが出来た、
きゅん君と、ぐーちゃんです。
「今日もシャキシャキ、美味しかったね。あとは、ぐー、ホクホクとホックホクとジュルジュルとトロトロを早く食べたいわ」
と、ぐーちゃんが、きゅん君に言うと、
「ホクホク?ホックホク?ジュルジュル?トロトロ?何それ?モコモコとモッコモコとジュアジュアとグチュグチュじゃなくて?」
そんな風に答えた、きゅん君です。
きゅん君としてみれば、ちゃんと、
食べ物の呼び名を決めている訳ではなく、
その時の気分で適当に呼び方を変えていたので、
前に、ぐーちゃんに言った呼び名は、
すっかり忘れていたのでした。
さて、一体、きゅん君は、
どれをどう呼んでいるのでしょう?
謎は深まるばかりで、ぐーちゃんは困惑するばかりで。

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