温かい夢が見たい
いぬうた市にまた夜がやって来ました。
ここのところの、いぬうた市はすっかり寒くなって、
特に夜は冷え込むようになりました。
なので、ぐーちゃんは思います。
「今晩は何か温かいお夢が、ぐー見たいなあ」
って。
「温かい夢ですか。夢の中に暖房を入れましょうか?」
と、答えたのは、ぐーちゃんの夢の国の支配人です。
ぐーちゃんはすでに眠りについて、
夢の国に来ていたのですね。
そして支配人に今晩見る夢の相談をしていたのです。
しかし支配人の答えはどうやらまずかったようです。
これは支配人なりの冗談だったのですが、
ぐーちゃんには上手く伝わりませんでした。
「お暖房ですって!支配人さん、それお本気でおっしゃっているのかしら?ぐーはイメージさんのお話をしているのよ。そんなお暖房を入れればいいなんて、お発想がお無粋よ」
と、バッサリ、ストレートに返す、ぐーちゃんです。
続けて、ぐーちゃんが言います。
「ぐーが見たい温かなお夢は、ぐーの心さんが暖かくなるようなそうゆうお夢よ。ぐーの心さんが温まれば、ぐーもぽっかぽかになるからよ。だから支配人さんはそうゆうお夢のアイデア出しさんしてちょうだい」
すっかり釘を刺された支配人はもう逃げ場はありません。
なのでそれからは真面目に、
ぐーちゃんの心が温まる夢を考えました。
「えーっ、ではこうゆう夢はどうでしょう。ぐーちゃんがお仲間のわんこを助ける夢。お仲間が迷子になっているところを、ぐーちゃんが見つけて一緒にお家を探してあげる夢。これは心温まりますよ」
と、まず思い付いたひとつ目のアイデアを、
ぐーちゃんに発表しました。
が、ぐーちゃんの反応はどうかというと、
大変しぶいものでした。
「それでお心が温まるのは、ぐーのお夢を見守っている支配人さんだけよ。ぐー、きっとはそれどころじゃないわ。必死にそのお犬さんのおウチを探す訳だからお心温まるどころの話じゃないわ?だからそのお夢はおボツね」
その、ぐーちゃんの言葉を聞いて、支配人はハッと思います。
確かに。確かに、ぐーちゃんの言う通りだ。と。
と、同時に痛いとこを突かれた!と焦ってしまって、
えーと、えーと。と。
なかなか次の案がなかなか出てきません。
でも何か言おうと、苦し紛れに口から出たのが、
次の案でした。
「えーっ、ぐーちゃんがテレビを観ていて、そこに感動するドラマがやっていたとか。それで心温まるとか」
それを自分で言っていて途中からしまった!
と思いましたが、時すでに遅く、
「支配人さん、それ本気で言ってる?はあ。本当に分かってないわね、支配人さんは」
と、ぐーちゃんは呆れ顔で、
その後もセンスがない。
とか、さんざんダメだしされた支配人です。
でも、ぐーちゃん、そもそも、
そんな温かい夢を見る必要があるのですかね。
今現在、ぐーちゃんはママと一緒に、
温かい布団にくるまって寝ているではありませんか。
ママの温かい手に撫でられなから。