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そっちがそのつもりなら

先日、いぬうた市の、きゅん君と、ぐーちゃんが、
いぬうた湖に日帰り旅行した際に、
こんなエピソードがありました。
いぬうた湖畔に大きな白鳥の形をした遊覧船と、
本物の白鳥が2羽いたのです。
これを目撃した、きゅん君と、ぐーちゃんは、
まず本物の白鳥に近づきます。
「あらー!これは、これは、初めまして。私、ぐーよ。いぬうた市から来たの。どうぞよろしくね」
ぐーちゃんが丁寧かつ友好な態度で、白鳥に言いました。
「ハロー!僕は、いぬうた市の、きゅんだよ。どうやら長い付き合いになりそうだね。で、君らはまだ子供なんだよね?兄弟なのかな?」
きゅん君はいささか馴れ馴れしく声をかけました。
しかし、白鳥は、ふたりの言葉は通じないのか、
全くの無視で、他の観光客がくれるエサに夢中で、
きゅん君と、ぐーちゃんを見ようともしません。
その白鳥の態度にカチンときた、ふたりは、
自分たちも一転して、ケンカ腰になったのです。
「何よ!せっかく、ぐーが下手に出て、接してあげたのに!まさか無視するだなんて!全く礼儀がなっていないわね。そんなことでは後ろにいらっしゃる遊覧船さんのようにはなれないわよ!」
怒りの、ぐーちゃんはどうやら、白鳥は大きくなったら、
白鳥形の遊覧船になると思っているようです。
当の遊覧船はニコニコとした表情のまま、
ちょうど桟橋から出発していきました。
それを見た、きゅん君は、ぐーちゃん以上に、
激怒しました。
「そもそもリーダーの遊覧船があんな、小馬鹿にした態度だから、この白鳥もこんな感じになるんだよ。これは、いぬうた湖における白鳥の教育が代々なっていないんだな。本当、なっちゃないよ」
きゅん君も、ぐーちゃん同様、
遊覧船は白鳥の大人の最終形態と思っているのです。
「それに比べて、少なくとも、いぬうた公園の池のスワンボートはそんな態度は取らないぞ!
ちょっとは見習え!君とは短い付き合いだった」
と、言い捨てて、いぬうた湖を去り、
その数日後、いぬうた公園に散歩に行った、
きゅん君と、ぐーちゃんは、
池のスワンボートに声をかけました。
「ちょっと聞いてくれよ。この間、いぬうた湖の白鳥の遊覧船と子供の白鳥に会ったんだけど、その態度の悪さったらなかったよ。あれは自分が、いぬうた湖の白鳥だっていうプライドからくるもんかのかな?どう思う?君らは?」
しかし、きゅん君が話かけても、ぐーちゃんが、
「その点、スワンボートさんはそんなことないわよね。いぬうた公園は庶民的な公園ですから、あなたたちは気さくでいらっしゃるわよね?」
と、聞いても、うんとも、すんとも、
言わないスワンボートでした。
「何だ!君らも、僕ら犬とは話ができん!というのか!」
「もう、いいわ!金輪際、ぐーは白鳥さんと口を利きません!覚えてらっしゃい!」
と、これ以来、白鳥と仲は、犬猿の仲となった、
きゅん君と、ぐーちゃんなのでありました。

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