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風の子、きゅんの失言

「ゴー!ゴー!ゴー!風を切って走れー!僕ー!北風よりもっと速く走れー!僕ー!風なんて追い抜けー!追い越しちゃえー!僕ー!」
と、言いながら走っているのは、いぬうた市のきゅん君です。
寒風吹きすさぶ中、ママと、ぐーちゃんと、
ドッグランにやって来まして、
この寒い中、走る気になるかなあ。
と、思われたところ、全くその心配は、
無用な、きゅん君なのでした。
「あら、元気なのは、きゅんだけじゃないわ!ぐーだってほらこの通りー!」
と、きゅん君に感化されたのか、
ぐーちゃんも走り出しました。
本当、おふたり共、元気ですね。
まさに風の子だあ。
すると、そこでピタッと止まった、きゅん君です。
「何だって?僕が風の子だって?」
いやあ、だって、風に負けじと走るではないですか。
それは風の子と言ってもいいのでは?
「でも、ぐーはママの子よ。だからお風さんのお子さんではないわ」
と、いつの間にか、ぐーちゃんも止まっていて、
そう言いました。
あら、ぐーちゃんまでそこに引っかかりますか。
これは例えみたいなものでして、
風にも負けない元気な子という意味なのですが、
ではこれでどうでしょう?
おふたり、ママと風の子ということでは?
「だったら、ぐーはそれでいいわ。ぐー、お風さんも好きだからー!」
と、ぐーちゃんは納得してくれましたが、
きゅん君はそうはいきませんでした。
「僕が風の子だとしたら、さっき僕は大変なことを言ってしまったじゃないか。風なんて追い抜け追い越せとか。さ。仮にも親にそんなこというなんて」
と、言って落ち込んでしまった、きゅん君です。
いやあ、きゅん君、それは言葉のアヤですから、
それに子が成長して親を追い抜き追い越すのは、
親だって嬉しいのでは?
って、一体何の話をしているのでしょうね。
訳が分からなくなってきました。
そこに、ぐーちゃんがもっとややこしくなることを言いました。
「それよりも、きゅん、さっきはもっとひどいこと言ってたわよ。お風さんを切って走るって。それは親さんを切るって言ったのも同じよ。よりにもよって、きゅんは親さんを切るって言ったのよ。とっても嬉しそうに」
いやあ、ぐーちゃん、そんな、きゅん君が、
ふと言ったこと、ちゃんと聞き逃さずによく覚えていましたね。
嬉しそうに言ったか、は別としても、
全く意地が悪いですよ。ぐーちゃんは。
ほら、きゅん君、もっと落ち込んじゃったではないですか。
「言った。確かに僕は言った。親を切って走るって」
いやいや、きゅん君、きゅん君が言ったのは、
風を切って走る。って言ったのですよ。
親ではないですよ。
「だって僕は風の子なんでしょ?だったら親を切るって言ったのと同じことだ。ぐーの言った通りに」
もう、きゅん君たら、そんなに深刻に考えないで下さいよ。
さっきは、きゅん君、自分が風の子だって知らなかった訳だし。
「これは知らなかったじゃすまない話だよ。このままじゃ親に申し訳が立たない」
と、落ち込む一方の、きゅん君です。
ここはちょっと風に当たって頭を冷やしましょうよ。
ねえ、きゅん君。
と、また、きゅん君、更に更に、
ややこしくなることを言いました。
「風に当たるって!親に当たるって、一体どうゆう意味さ!親に当たると頭が冷えるの?」
もう、やめときましょう。きゅん君。この辺で。

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