第三回:「パクス=ブリタニカ」を知ろう!東大世界史1996年第一問・前編【敬天塾世界史】

こんにちは!敬天塾スタッフXです!
この記事は、弊塾の世界史授業・第三回で取り扱った、1996年世界史第一問の大論述の解き方・考え方についてまとめた記事の前半部分です!

・1996年世界史 第一問

 18世紀後半にイギリスで始まった産業革命は、世界全体に工業社会の到来をもたらし、現代世界の形成に大きな役割を果たした。そのさい、人々はイギリスの覇権を「パクス=ローマーナ」(ローマの平和)になぞらえて「パクス=ブリタニカ」と呼んだ。しかし、「パクス=ブリタニカ」の展開には、さまざまな地域において、これに対抗する多様な動きが伴った。現代世界はこのような対抗関係を重ねるなかで形作られたとも言えよう。そこで、19世紀中ごろから20世紀50年代までの「パクス=ブリタニカ」の展開と衰退の歴史について、下に示した語句を一度は用いて、解答(イ)に15行(1行30字)以内(450字)で述べよ。なお、使用した語句に必ず下線を付せ。

【指定語句】
自由貿易 南京条約 アラービー=パシャ 3C政策 マハトマ=ガンディー 宥和政策 マーシャル=プラン スエズ運河国有化


問題文を見て分かる通り、今回は、「パクス=ブリタニカ」についての大論述です!
前回の世界史第二回授業では、ロシアの南下政策について取り扱いましたが、そのロシアの南下政策と切っても切り離せないのが、イギリスの動向です。
不凍港を求め進出を進めるロシア。
自分が持つ「海」という利権に進出してくるロシアを全力で阻止したいイギリス。

世界最強のイギリスとそれに追随するロシアとの関係が、2014年世界史第一問のポイントでした。

今回の問題では、パクス=ブリタニカの「展開」と「衰退」について問われています。
指定語句を見てみると、アメリカの「マーシャル=プラン」が入っており、イギリスの話の中にどうアメリカの話を組み込ませていくのかが課題となりそうですね。

それではまず、パクス=ブリタニカ時代のイギリスについて押さえておくべきポイントを紹介しておきましょう。


イギリスはなぜ「大英帝国」となったのか?

古代世界で圧倒的勢力を誇ったローマ帝国。
「パクス=ロマーナ」を実現したローマ帝国と並べられるほどに世界を牛耳ったイギリスは、なぜそこまでの大帝国となったのでしょう?

キーワードは「蒸気船と鉄道」「金融市場」「財政軍事国家」です。

島国であるイギリスは、海運業に力を入れていました。
パクス=ブリタニカ以前は、オランダの船がほぼ全ての西ヨーロッパへの商品を運んでいました。
そんなオランダに対抗したイギリスは1651年に航海法を定め、英蘭戦争へと発展し、最終的に疲弊したオランダはついに海運業における優位をイギリスに明け渡してしまうことになります。

そこからはもうイギリスの独壇場。1870年代には、世界中のほとんどの商品がイギリスの船で運ばれていたといいます。

また、海運と同様に、商品や資源を運ぶのに重要だったのが鉄道
鉄道と聞くと、なんとなく「文明の象徴」のような印象を受けますが、実際は鉄道の裏の顔は、「植民地支配の象徴」だったのです。

植民地の奥地からも資源を効率的に港に送ることができますし、奥地の方で反乱が起こった時には、効率的に軍を送ることができます。
海運業と鉄道で、多くの植民地を次々と搾取して得た資源を使い、産業革命以降工業化をガンガン進めて、イギリスは莫大な富を築きました。

「世界の工場」から「世界の銀行」へ

そんなイギリスですが、工業力の面で次第にドイツやアメリカのような国々に抜かれ始めます。
かつては「世界の工場」とまで呼ばれたイギリスもそこから落ちぶれていく…と思いきや、イギリスはそれでも世界の中心であり続けました

なぜイギリスは、工業力で劣っていたにも関わらず、その圧倒的な地位を保てていたのでしょうか?

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