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意味ある1on1の実践

1 on 1とは、チームリーダーとメンバーが定期的に行う面談のことである。もともとアメリカ、シリコンバレーで企業文化として生まれたものであり、国内ではヤフーの導入が有名である。ヤフーの1 on 1の導入については書籍があるので、紹介しておく。私自身も購入し、大変参考にしている。

1 on 1は「メンバーのための時間」と呼ばれる。メンバーが自身に関わる課題を発見し、解決に向けたプランを考える時間であり、リーダーはそれをうまく支援する。リーダーとメンバーは対等な存在としてコミュニケーションをとり、終了後にメンバーが「スッキリしたぁ」と感じられればゴールである。通常かなり頻繁に行うことが多く、企業によっては周1で行うところもある。私の委員会のメンバーはこの仕事が本業ではなく、多忙なメンバーがほとんどであるため、月1開催にしている。一見1 on 1は簡単に見えるが、実際にやってみると色々と大変であることがわかった。いくつか文章化しておこうとおもう。

気を抜くと「雑談化」し、価値がなくなる

1 on 1を実践する中で、おそらく一番陥りやすいのが「雑談化」してしまうことだと思う。勿論、1 on 1と雑談は紙一重なのだが、リーダー側が丁寧にアプローチをかけないと、単純な近況報告で終わってしまう。「ただおしゃべりするだけの時間」に、メンバー自身が価値を感じなくなってしまうのだ。これを回避するには、「自身に関する課題を発見し解決プランを考えるモード」に入ってもらう必要があり、メンバーに自身のスイッチを切り替えてもらう必要なのである。

最初に簡単なアンケートを実施するようにしてみて、雰囲気が変わったように思う。メンバーには「ちょっとだけ最初の時間でリサーチしてる」と伝え、1 on 1には含めない感じを出すが、この簡単なアンケートに答える3分くらいの時間が、実はメンバーにとってはスイッチの切り替え(チェックイン)になる。

実際のアンケート内容(例)
・あなたのリソースを100としたときの、大学やバイトなども含めた、リソースの分担比率
・この仕事に自分が一番貢献できている部分とできていない部分を1つずつ。あと簡単な理由

たった数分で答えられる内容だが、このようなアンケートに答えることで、「現在の自分を分析するモード」に入ることができるのだ。このアンケートをしてから、「何か御悩みはありますか?」と尋ねることで、解決の必要がありそうな適度な問題がゴロゴロ出てくるようになる。また、質問の内容をうまくコントロールすることで、プライベート寄りに雰囲気を変えたりすることもできる。あまり話題を制約しすぎるのもよくないが、アンケートの実施は話題を生むための良い刺激になる。

どうしても喋りたくなってしまう

2つめに陥りやすいのが、「リーダー側が喋り過ぎてしまう」ことである。1 on 1はあくまでメンバーの時間であるため、基本的にリーダーは「聞き手」に徹するのが良いとされる。メンバーがたくさん話し、言語化していく中でメンバー自身が解決策を見つけていく、それが1 on 1の理想的な姿である。だが現実はそうは行かない。どうしても「アドバイスしたくなってしまう」のだ。

例えば、メンバーが1つ「お悩み」を提示してくれたとする。あぁ、そういえば2年前の自分もそうだったなぁ、などと思い出し、「そう言う時はこうするといいよ」と思わず解決策を言ってしまうのだ。これでは台無しである。解決策はメンバー自身が探し見つけるから意味があるのであって、いきなり答えを聞いてしまっては自分の物にならないし、それはレクチャーである。リーダーは答えを言いたい気持ちをグッと抑え、「なぜだろうね」「どうしてかな」と問いかけていき、メンバーを誘導しなければならない。これが実はとても体力を消費する活動で、10名も行うと相当疲れてしまう。だがこれを継続することで、メンバー自身の課題発見・解決能力の向上につながるため、とても重要なものである。

相手を見ること、見られること

1 on 1で重要な要素として、リーダーの態度がある。1 on 1は相手との対話であるため、向き合わなければならない。体を相手に向け、目を見て、うなずきながら話すのである。さてこれをオンラインでどう実現するか。

今年、私が行っている1 on 1は全てオンライン上である。そもそもメンバーは全国に散らばっているため、コロナ関係なく1 on 1はオンラインである。そんなオンライン1 on 1で工夫したことが3つある。

・絶対にカメラをONにすること。
・画面ではなく、カメラを見て話すこと。
・自分の手が相手に見える状態にすること。

カメラをONにするのは当然ながら、実は私は「カメラを見て」1 on 1を行っている。少しでもメンバーと目線が合うようにするためである。オンライン特有の「カメラの位置と画面の位置がずれている問題」。それによる目線が合わないままのコミュニケーション。カメラを見て話すことで、真っ直ぐ向き合っているように感じてもらう工夫である。
また実は行っていることとして、「手を映す」がある。映し方はさまざまあって、腕を組んでも、手を合わせても、ジェスチャーにしてもOKである。要はメンバーに対し、1 on 1以外のことをしていませんよ、という意思表示である。オンラインは通常手元が見えないため、手元で何をしているかわからない。スマホもいじれるし、パソコン上で別なタブを開くことも可能である。まあそもそもリーダー側は相当集中しないと良い1 on 1を開催できないので、そのような「内職」をしている暇などないのだが、相手に安心してもらうため、わざと手を映すようにしている。

リーダー側がお悩みをシェアする時間は?

1 on 1をしていて気づくのだが、実は「リーダー自身がお悩みをシェアする」機会がないのである。リーダーは1 on 1の主催者なのだが、参加者ではない。最もお悩みが溜まるはずのリーダーの課題発見・解決の時間をどう作るか。私は1 on 1が慣れてきたあたりで、もし時間が余れば、自身のお悩みをシェアするようにしている。「私もちょっと悩んでいるんだけどさ」と言う感じで立場を逆転させてみるのだ。これはかなり面白く、メンバーがリーダーを体験することで、メンバーも「何か理由はあるんですか?」や「どうしてなんですかね?」などの問いかけができるようになる。メンバーからすれば、ちょっとした「リーダー体験」であると同時に、リーダーも俯瞰してお悩みをみることができる。


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