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あらためて、第6次エネルギー基本計画について

(以下、一昨年に日本経済新聞に寄稿した「私見・卓見」の元原稿です。原発推進に転じたことを考えるにあたって、アップします)

「エネルギー基本計画への過剰な信用は禁物、企業は長期的なシナリオを」
 

 
7月21日にも、政府・経済産業省は、「第6次エネルギー基本計画」の素案を提示するといわれている。そこで関心を集めているのが、2030年の電源構成だ。しかし、そこで示される数字を過度に信用すれば、経営を誤ることにもなりかねない。数字は政府がこれから「3年間」どのような政策をとるのかを示したものにすぎないからだ。
震災前の2010年に、「第3次エネルギー基本計画」が策定されている。ここでは2030年以降の温室効果ガス大幅削減のため、原発30基の新増設が盛り込まれている。しかし、仮に震災がなくても、この数字が達成されることはなかっただろう。なぜなら、当時すでに、電力需要が伸びないため、電力会社は原発の建設計画を毎年のように繰り延べしていたからだ。そうであるにもかかわらず、経産省にとっては政策をリードする都合上、当時の民主党政権と環境省が示していた2020年温室効果ガス25%削減という目標と被らせない必要があった。それが原発30基の背景である。当時の企業にとっての問題は、誤った目標を前提に事業計画を立ててしまうと、計画の修正が必要になるということである。その後のエネルギー基本計画でも原子力を過剰に見積もり、太陽光以外の再エネの開発が遅れたことにつながっている。
 さて、今回のエネルギー基本計画では事前に、原子力20%程度、再エネ38%あたりといった数値が報道されている。今回の数値目標についても、過剰に信用することは問題となるだろう。原子力については、再稼働が進んでおらず、今後も大きな進展は見込まれない。むしろ老朽化が進むといえる。かといって再エネ38%からさらに上積みということも難しいだろう。太陽光発電と陸上風力を最大限やっていくことになるとしても、簡単ではない。したがって、目標数値にこだわると、無理な計画になりかねない。
 事業計画において重要なのは、2050年カーボンゼロに向けたシナリオと、そこに至る世界のトレンドを正しく捉えることだろう。その上で、足元のエネルギー基本計画は、政府における短期的な重点政策と予算に関する方針だと捉えておけばいい。イメージとしては、直近の林地開発による太陽光発電よりも、2030年には間に合わないかもしれない洋上風力のほうが、現実的かもしれない、ということだ。あるいは、原発再稼働が進まない以上、再エネや省エネが想定以上に必要になるというシナリオである。いずれにせよ、政府の目標を鵜呑みにせず、冷静に世界を見ることがなければ、日本企業はカーボンゼロから取り残されかねない。
 

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