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小説添削の講義を受けてみた

小説本文を書く始めにあたる、プロット添削、あらすじ添削と違い、
10万文字を超える『完成させた小説』を添削していただいた記事。
受賞まで二歩足りない、技術や陥りがちな悪癖についてのお話です。

 さて、昨年、第22回角川ルビー文庫さまの公募結果発表がありました。
 書籍化される受賞、B賞、C賞。D賞、F賞と続き、わたしはC賞に入っていました。
 内容は大奥BL。そして初めてのコメディもの。
 歴史物なので調べることだらけで、江戸時代の上様の生活、大奥の仕組みなどに溺れそうになりながら書き上げたもので、胸を張れる作品でした。それこそ、

「どうかお読み下され! どうかー! どうかー!」

 と、お代官さまに直訴する農民みたいな気持ちで応募し、結果的にC賞の成績は悪くなかったけれど、なぜ二歩受賞に及ばなかったのかがわかりませんでした。

「自分的には面白い。なにが悪かった? あかん、さっぱりわからん」

 けれど、これだけはわかっている。ここで、学んでおかないと、また同じ過ちを犯す。そこで、わたしが選んだ選択は、

「黒田順子先生――! 助けてくだせえーーー!」

 めっちゃ他力本願。
 しかし、プロット添削二作、あらすじ添削一作をお願いし、黒田先生に絶大な信頼を置いていたわたしは迷いませんでした。ただ、今回は、

『物語を作る前段階』

 にあたる、あらすじやプロット添削ではなく、

『小説』の添削

 文字数10万文字超えなので、黒田先生は2時間以上かけて読み、どこがどう悪かったかを説明しなきゃならないのです。しかも、説明のいかんによっては相手の心をへし折るかもしれない仕事。
 講義のあとに伺って驚いたのですが、2時間なんて甘いものではありませんでした。

 350枚近い原稿を読み込むには何日もかかっていて、冒頭の30ページは何度も読み直し、文章も直すので、ここだけで2時間はかかっています。
 100ページを読むのに6時間かかることもあり、読み終わった後も、どういう順序で話しをすればわかりやすいかを考えるのにまた数日かかる。
 私だったらどう直すか? わかりやすい伝え方、傷つかない言い方、代替案。
 だからお値段も高くなってしまうのですが、お金の大切さはわかっているので一生懸命やらせて頂きます。

 もう、頭が上がらない。確かに高額です。ですが、それに見合った講義内容でした。惜しかったとまったく思いません。

(料金について触れますが、400字×300枚の目安は、37,500円+消費税。
枚数によって変わるので、まずは黒田先生のツイッターDMで相談してみて下さい。最後に詳しく記しておきます。プロット添削や、あらすじ添削の記事についても、リンクしておきます)

 ちょっと良い旅ができる金額でしたが、投資するならここ。
 だって、わたしの目標は書籍化してデビューすること。
 自分の悪い癖を知ることは、長い目で見れば近道になる。二作、三作、四作と書いて、その都度プロット添削を受けていけば、物語を作るコツが身につく。自分でできるようになるまで意地は張らない。

 だって、できていないから受賞できない。

 悪癖を金で解決できるなら、わたしはそちらを選ぶ。
 あとは、自分の根性だけ。

「全部書き直してもかまわん! むしろ、それ当然!」

 そういう気持ちで添削講義を受けました。
 Wi-Fi接続が持ってくれることを祈りながら、いざ講義。メモでは取り切れないニュアンスを忘れないよう、ボイスレコーダーも忘れません。金をかけたからにはもとを取らねば。
(バイキングに行くと高級品から攻め、少量づつ全制覇を狙うたち) 

・恋愛が描けていない

 
 少し雑談をしてから講義に入りました。
 先生、開口一番褒めてくれます。

「エッチシーンよかったですよ! 色んな方のを読みましたが、一番よかったです!」

 やったー! BLにおいてエッチシーンは大事。そこができているなら、他も……と考えたわたしは、まだまだ激甘でした。

「ですが、あとは全部いけません。せっかくいい設定やエピソードなのに、活かしきれていない。もったいないなーと思いながら読んでいました」

 え? わたし、全部ドブに捨ててたの?

「まずね、大事なこと。恋愛が描けていないんです」

 根本がアウト。
 そりゃダメに決まっている。しかし、しかし、言わせて欲しい。わたしは描いたつもりなのです。両想いになって、やってくる困難を乗り越えて深く結ばれる。

 ほかの側室たちのいじわるも入れたし、主人公の絶体絶命の危機だって入れた。そう自信を持っていたのです。
 それが書けていないってどゆこと?

「出会いからお互いが好感を抱いてくっついちゃってますよね。上様も、ものわかりが良くて、主人公も一目惚れしています。恋愛の醍醐味は《どうして好きになったのか》という理由の積み重ねです。そこがまったく書かれてなくて、いきなり好き好きになっちゃってます」

 遭難――。
 わたしが書いたのは、くっついてから主人公たちの恋を邪魔する者たちをスカッと切っていくお話だったので、出だしからあかんかったわけです。
 となると、使えないエピソードの屍続出。
 黒田先生の講義は続きます。

「噂でしか知らない上様の側室になるんですから、主人公は不安に思うし、その不安を描かないと。不安があるから上様の優しさに触れたとき、初めて、《あ、この人、実はいい人かもしれない》って主人公が感じる。そこがないんです。あと、全体をとおして《上様がどういう性格か》がわからないかなー」

 せ、先生。こう、お花見とか、裃贈ったりとか、敵地に主人公取り返しに行ったりとかあるんですが、それじゃダメですか?

「うーん、恋愛の過程要素として使うのはありですが、恋が実っていて使っているので、上様がどういう人かが伝わってこなかったです。全体的に物語に都合良く当てはめちゃってるって感じました」

 刺された。痛いところを。
 実はこの話を書き終えてから、次に挑んだお話の、あらすじ添削、プロット添削を受けたとき、先生にこう指摘をされていたんです。

・整いすぎで面白みに欠けている。
・主人公が困っていない。
・ここで、このキャラがこの台詞を言うのは無理がある。

 わー、指導ガン無視のオンパレード。よくC賞に入ったもんだな……。
 こんな感じで、ひとつづつ、丁寧に、

・どうしてダメなのか?
・この使い方はよくない。
・このエピソードは要らない。

 などを教えていただきました。ただ、わたしも書いた身なので、ここは譲れないというものや、こういう意味で書いたけれど、どうしてダメなのか? ということは質問しました。
 そのなかで、先生も「じゃあ、こういうのは」と提案してくださって、脳みそフル回転させて食らいつきました。

 お陰で、プロット練り直すときにレコーダー聴いて吐きそうに。テンパってる自分、主張激しい……。声、裏返ってる、単語言い間違えてるし、聞こうとしているけど、こういう狙いだったとつい言葉にしてしまうなど、プロットが書き上がるまで地獄でした……。
 先生が何度も、大丈夫ですか? 心折れませんか? と気に掛けてくださったのですが、先生。レコーダー聞き返す方が心折れそうでした。
 毎回言ってる気がしますが、ごめんなさい。

・構成について


 あとは、物語の後半のページ数について指摘がありました。

「主人公がさらわれて、クライマックスが終わってからページ数を割きすぎです。40ページは多い。それなら前半に、お互いが好きになるエピソードを入れた方がいいです」

 はい、文字数1万文字稼ぎたかったです……。なぜにバレるのか……。素人の小細工など通用しない。悪いことはやっちゃだめだね……。
 あとは、江戸時代の出産が自分的に「へえ!」と面白かったので詳細に書いてしまったのもありますが、

「好きな人は好きかもしれないですが、説明になるのでうっとおしく感じる方もいると思います」

 この辺りが歴史物の難しさなんだと、今後の課題になりました。
 著名な歴史小説を書かれる方の本を読むと、『知ってるでしょ』と前提になっていることが多く、「この役職は、主人公と比べてどれくらい差があるのか、政治においてどのていど影響を及ぼすのか?」がわからなくて困った部分だったのです。
 なので、現代の会社の役職に置き換えて説明していたのですが、

「江戸時代を楽しんでいるのに、いきなり現代を持ち込んでしまうと冷めてしまいます」

 こんな感じで、『あえて』した部分がすべて裏目に出てしまうという結果に。
 例えば主人公の危機のシーンで、『《上様に迷惑をかけられない》と自力で脱出させて、受けの強さを描こう』と狙ったつもりが、

「上様が寄越した忍びの人が助けちゃって、上様に、はいって渡しちゃっていますよね。これ、もったいないです。主人公が自力で脱出を図るけれど、また捕らえられて、それを上様が助ける方が絶対にいいです」

 あと、上様の弟が謀反を起こす設定なんですが、

「謀反ってクーデターです。それをやるくらいなんですから、大奥の正確な情報をどこで得ていたのかそこも書かないと。弟との対決もシリアスに書くべきです。兄と弟の確執大事ですよ」

 わたしは言いました。

「歴史物として重みのあるものに書き直します」と。

(ただ、すごくよかったと褒めていただいたエッチシーンはそのまま使います)
 あとですね、江戸時代でも自立した女性を書きたくて作ったキャラがあったのですが、主人公たちが動きやすいように使っていたのもバレました……。

「むしろ、味方だと思っていたのに裏切られたというふうに使いましょう。どうしても良い人でいさせたいなら、主人公にバレないところで、助け船を出すという形で使うと良いです」

『主人公を困らせる』

 とにかくコレに尽きると骨身に染みました。他にも、現代人が江戸時代の人間に転生するお話だったので、

「どうして転生したのかという理由と、突然、江戸時代へきたことの戸惑いを書かないと。あと、なぜ、側室になる必要があるのかという理由を書いてから大奥入りさせた方がいいです。時系列に沿った方が読者は読みやすいですから」

 冒頭から事件を起こそうと狙いすぎていました。転生物という点を疎かにしちゃあかんですよね。そして、悪癖のひとつ、

『物語に都合良くキャラを当てはめる』が自覚できました。

 もうやらないとは決めても一朝一夕では直らないと思うので、今後も指導を受けて、一作ごとに力をつけていくつもりです。先へ行く人を見て焦らない。今年は他にやっていることもあるので、まずは一作きちんとしたものを書きます。

 小説添削は、あらすじ添削や、プロット添削と違って高額です。
 ですが、完成させた小説を見てもらうことは、すごくプラスになると実感しました。

 すでに書き上げているので、どこがダメか振り返ることができます。それらを踏まえて改稿すれば別の物語として生まれ変わるので、受賞にいたらなかった作品なら、別の出版社に応募することだってできます。
 急がず、書いたものを振り返り、それを直して基礎を固める。わたしは、それが性に合っているので頑張りたいと思います。

 黒田先生の添削、是非受けてみてください。
 あらすじ添削、プロット添削は内容の濃さから考えるとお得すぎるお値段です。

・黒田順子先生のご紹介

・放送作家
・京都造形芸術大学講師を経て「公募ガイド」等小説講座講師
初心者向け小説講座
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 記事(料金についても触れています)

あらすじ添削をお願いしてみた
勝率上げたいので、プロット添削をお願いしてみた


なるほどと思えるような記事を書いていきますので、コーヒー代としてありがたく使わせていただきます。