切なさを表現する作曲テクニック
こんにちは。
作曲家の天休です。
今日は「切なさを表現する作曲テクニック」というテーマでお話させていただきたいと思います。
サウンドトラックの音楽制作をしていると、心情を表す様々なテクニックが必要になります。
嬉しさ、楽しさ、哀しさ、切なさ、怖さ、面白さ……などなど。
そういった感情を音楽で表現することは、劇伴作曲家の重要なテクニックのひとつです。
もちろん、その映像を見て、内から湧き上がるものをそのまま音楽にできればいいのですが、何曲も作らないといけない状況になると、そうもいっていられません。
テクニックに頼りすぎるのは良くないですが、テクニックを持っているといざというときの助けになります。
というわけで、今日は感情を表現するテクニックのうち、切なさを表現するテクニックをご紹介させていただきたいと思います。
アニメやドラマでも、重要なシーンで使われることの多い切なさを表現した音楽。
その仕組みについて、僕の考えをお話させていただきます。
それではいってみましょう!
1.ピアノ
これは分かりやすいと思います。
特にピアノの高音のメロディは切なさを表現する力があります。
これは、サントラでもピアノソロの曲が多いことから分かりやすいと思います。
ただし、注意点もあります。
それは、ピアノの音域についてです。
切なさを表現するピアノの音域は、僕の感覚だとA3~A5ぐらいです。
低すぎると哀しみになってしまいますし、高すぎるとキンキンした音になりうるさ過ぎてしまいます。
それに伴い、左手の伴奏も低すぎないようにしましょう。
特別な効果を狙わない限りは、A1ぐらいが最低音かなと思います。
音域が下になりすぎると、切なさというより、哀しみになってしまいます。
切なさと哀しさは明確に違います。
切なさは内にたまった想いを解消する方法が無く、やるせない気持ちです。
例えば、叶うことのない恋や、戻らない学生時代を思い出したときに感じるのが切なさです。
対して、哀しみは、人が亡くなったり、彼女と破局したときなどに感じます。
この辺は人によって少し定義が違うかもしれませんが、音楽表現上は分けた方が良いと思います。
切なさはよりノスタルジックで、哀しさはもっと深くて暗いです。
なので、ピアノひとつとってみても、音域だけで全然違うアプローチになるので注意しましょう。
2.バイオリンの高音の保続音
これもよく使われるテクニックのひとつです。
曲の始まりで、ピアニッシモのバイオリンの高音が徐々にクレッシェンドするのが多いかなと思います。
この音はC5~C6ぐらいのことが多いかなと思います。
バイオリンが出せるギリギリぐらいの高音にすることで、張り詰めたような切なさを表現することができます。
単音でも良いですが、オクターブ下をディヴィジで重ねたりするのも効果的です。
逆に、5度や3度と言ったハモリをつけるのはNGです。
音が厚くなりすぎて、繊細さが失われてしまうからです。
このバイオリンの高音の保続音が鳴っているところで、セカンドバイオリンやヴィオラでコードを変化させていく感じです。
また、ストリングスで切なさを表現するときは、小さめの編成の方が良いです。
これも、大編成すぎてしまうと繊細さがなくなってしまうからです。
具体的には6-4-2-2-1ぐらいの特殊6型とか、ダブルカルテットぐらいがちょうどいいかも知れません。
大人数のストリングスの場合は、積極的にディヴィジを使いましょう。
また、弱音器をつけてもらうのも効果的です。
僕がクラシック音楽の中で最も美しいとさえ思っているリヒャルト・シュトラウスの「ツァラトゥストラはかく語り」の序盤のバラードも、大編成のストリングスをディヴィジさせて繊細さを表現しています。
3.半音をぶつける
ここから、よりテクニカルな話になっていきます。
半音をぶつけることは、バラードなどではあまりやらない方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、切なさを表現する際には半音をぶつけることは重要なテクニックのひとつになります。
例えば、Am。
単純にラドミと弾くと、ただのマイナーコードです。
しかし、ここにシ、すなわち9thの音を入れてみましょう。
ラシドミ
一気に切なさが増したと思います。
これは、シとドが半音でぶつかっているからです。
このようにコードの中で半音をぶつけると、切なさを表現することができます。
ポイントは、内声でぶつけること。
先ほどのラシドミを転回させてミラシドと弾いてみましょう。
半音がぶつかっている部分シとドが、コード内で一番高い音になります。
そうすると、シとドの音のぶつかりが目立って、先ほどよりもうるさく聴こえてしまいます。
つまり、外声で半音をぶつけると、そのうるささが目立ってしまい、切なさが軽減してしまうのです。
なので、半音をぶつける際は内声でぶつけ、目立ちすぎないようにしましょう。
4.マイナーキーの中にメジャーコードを混ぜる
これは感性の問題かもしれませんが、マイナーキーの曲の中でメジャーコードを適度に混ぜると、切なさを表現できます。
これは、先ほどの切なさと哀しさの違いとも関連してきます。
マイナーコードの中に少しだけメジャーコードを混ぜると、ガッツリ暗いというよりかは、少しだけ希望の光が差しているような感じになります。
つまり、少しだけ光が差しているけど届かない、という切なさの表現に繋がってくるのです。
よく使わるのはIVメジャーと♭VIメジャーです。
Aマイナーキーで言うところのDとFです。
この辺りを適切に混ぜると良いでしょう。
ただし、Vメジャーには注意です。
Aマイナーキーで言うところのEです。
なぜなら、属音には次の音の性質を強調するという効果があるからです。
E→Amという進行を多用すると、それだけAmの暗さを強調してしまいます。
暗さを強調しすぎると、切なさではなく哀しみになってしまうので、その点だけ注意してみてください!
おわりに
いかがだったでしょうか?
今日は「切なさを表現する作曲テクニック」というテーマでお話させていただきました。
ちょっと高度な話になってしまいましたが、上手くハマると登場人物の心情に寄り添えますので、ぜひチャレンジしてみてください。
最後までお読みいただきありがとうございました!
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