【作曲技法上級編】ブルーノートとレッドノート
こんにちは。
作曲家の天休です。
今日は「ブルーノートとレッドノート」についてお話させていただきたいと思います。
ブルーノートは有名かもしれませんが、レッドノートは初めて聴く方も多いかも知れません。
レッドノートは寺内克久さんの不定調性論という理論の中に登場する概念です。
簡単に言うと、ブルーノートと真逆の音です。
ブルーノートについては、いろんなところで取り上げられていると思いますが、このレッドノートについて体系的に取り上げられることは少ないと思います。
今回はそんなブルーノートとレッドノートについて、劇伴音楽という観点からお話させていただきたいと思います。
ブルーノートもレッドノートも面白い印象を与えることができる手法なので、ぜひ参考にしていただければと思います!
それではいってみましょう!
1.ブルーノートって?
ブルーノートとは、ブルースで使われ始めた西洋音楽にはない音程のことです。
ブルースはアフリカ系アメリカ人発祥の労働歌です。
ブルースは、奴隷としてキツイ労働環境にあったアフリカ系の黒人が、その日あった哀しい出来事や、働くのが辛いというテーマで歌ったことが始まりとされています。
そして、ブルースには、黒人特有の"なまり"のような音程が使われていたのです。
それこそがブルーノートです。
本来、ブルーノートは"なまり"なので、ピアノの鍵盤上にはない音になります。
つまり、ミ♭とミの間ぐらいの音だったりするわけです。
しかし、現代の音楽ではこれを無理やり五線紙に当てはめて、♭Ⅲ・♭Ⅴ・♭Ⅶの音をブルーノートと定義しています。
Cメジャースケールでいうところのミ♭・ソ♭・シ♭の音です。
これらをCメジャースケールに加えた音階……
これをCブルーノートスケールと呼びます。
ブルーノートを使った曲を作る際は、このブルーノートスケールを使うのが一般的です。
2.ブルーノートの特徴
ブルーノートは、もともとブルースで使われていたので、アンニュイな哀愁を表現することができます。
例えば、ブルース初期の名作ロバート・ジョンソンの「Crossroads」。
クラシック音楽にはないような寂れた感じが特徴的ですね。
ただ、劇伴をやる上では、もうひとつの特性の方が重要です。
ブルーノートはコミカルな表現をするときによく使われます。
例えば、僕が以前から何回も推している「マーリー 世界一おバカな犬が教えてくれたこと」のサウンドトラックより「Walking The Plank」。
これはCブルーノートスケールが使用されています。
コミカルなんですが、どこかカッコよさ、オシャレさがある名曲です。
このように、劇伴音楽的にはブルーノートはコミカルな表現として使われることが多いです。
また、ブルーノートを使う上でもうひとつ重要なのがブルース進行です。
いまいちど、Cブルーノートスケールを見てみてください。
ブルーノートが加わったことにより、C7とF7がスケール内の音で構成できるのがお分かりいただけますでしょうか?
ブルース進行は、このブルーノートスケールで特徴的なC7とF7を使った進行になります。
具体的には
C7→C7→C7→C7↑
のようなコード進行です。
通常の音楽は4小節ひと固まりを偶数回繰り返しますが、ブルース進行では3回ずつ繰り返します。
このコード進行を使うだけでも、コミカル感を演出することができます。
僕がよく使うのはこのコード進行を少し変えた
C7→C7→C7→C7→
F7→F7→C7→C7→
G7→F7→C7→C7
のようなコード進行です。
こちらの方が劇伴でも耳にすることがあると思います。
3.レッドノートって?
つづいてレッドノートについてです。
冒頭にも述べましたが、レッドノートは寺内克久さんの不定調性論という理論の中に登場する概念であり、一般的な用語ではありません。
概念的にはブルーノートの逆です。
ブルノートが♭系で、下から到達する音であれば、レッド―ノートは#系で上から到達する音になります。
具体的にはメジャースケールの#Ⅳ、マイナースケールの♮Ⅵをレッド―ノートと呼んでいます。
ちなみに、この定義は寺内さんの定義と若干違います。
寺内さんはマイナースケールの中の♮Ⅲと♮Ⅵをレッド―ノートと定義していますが、マイナースケールの♮Ⅲは劇伴で使われることは少ないので、少しだけ定義を変えてしまいました。
いずれにせよ、上から到達する♯系の音だということは変わりません。
4.レッドノートの特性
文章だけだと分かりづらいと思いますので、具体例を見てみましょう。
まずはメジャースケールの#Ⅳの例から。
一番有名なのは「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のメインテーマだと思います。
メインテーマはD♭メジャースケールですが、3音目にソ♮が出てきます。
このソ♮の音がレッドノートです。
このソ♮があることによって、推進力とか前向き感が演出されています。
続いてクラシックの例。
ハリウッド映画音楽の原点、コルンゴルドのバイオリン協奏曲の最終楽章。
Fメジャースケールで、ドファドーシ♮ーというシ♮の音が出てきます。
このシ♮が#Ⅳ、すなわちレッドノートです。
こちらも前向きで、開けた感じが印象的です。
この部分を聴くだけでも、ハリウッド映画音楽がコルンゴルド風ということがお分かりいただけると思います。
ダメ押しで、プーランクの組曲「典型的動物たち」より「恋するライオン」。
これもDメジャーキーでソ#の音が出てきます。
こちらはオシャレで、音楽に輝きがあります。
つまり、レッドノートには音楽をより明るく、前向きにする力があるのです。
ちなみに、以上の例全てからそうなんですが、レッドノートを使う際は、Ⅰ→Ⅱ(ないしはⅠ→Ⅱ/Ⅰ)というコード進行が大きく影響しています。
Ⅱメジャーのコードを使うことで、自然と#Ⅳの音を取り入れることができるのです。
このⅠ→Ⅱ→Ⅰというコード進行は劇伴でもよく使われるので、覚えておきましょう!
さて、マイナースケールのレッドノートである♮Ⅵの例も見てみましょう。
これは以前「梶浦由記さんの音楽の秘密」という記事で紹介させていただいた、ドリアンスケールが一番の例になります。
ドリアンスケールはマイナースケールのⅥ度の音が半音上に上がった音階のことです。
なので、自然と♮Ⅵの音程が出てくるのです。
梶浦由記さんの音楽の中でもいくつか紹介させていただきましたので、今回は別の曲を。
「Fate/Stay Night」のサントラより「孤独な巡礼」。
冒頭からGm→C/Gというコード進行でミ♮、つまり♮Ⅵの音が出てきます。
どうでしょうか、ミ♮の音があることによって暗さが和らぎ、暗い中の一筋の光という感じがありませんか?
このように、マイナースケールのレッドノートも、音楽を少し明るくしてくれる効果があります。
マイナーで取り入れる際はもっぱらドリアンスケールを意識すると取り入れやすいと思います!
おわりに
いかがだったでしょうか?
今日は「ブルーノートとレッドノート」についてお話させていただきました。
このように、どんな音を使うかによって印象をだいぶ変えることがきますので、ぜひ自分の技術として取り入れてみてください!
最後までお読みいただきありがとうございました!
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