取引先企業から「テンポスの社員さんは大変ですね…」と哀れみの眼を向けられる理由
テンポスグループは、厨房機器の販売にとどまらず、飲食店経営支援も手がける企業への転換を遂げるために、様々な事業に挑戦しています。テンポスをよく知る取引企業さんや、会社説明会に参加される投資家の方々からは「こんなに新しいことをやって、テンポスの社員さんは大変ですね…」と言われるほどです。今までやったことがない仕事は負担だと感じる社員をどう巻き込み、変化させていくか。テンポスの人材育成論についてご紹介します。
強制的に勉強させる
今までやったことがない仕事は負担だと感じる社員が大勢いる中で、それでも新規事業を作り上げていかなければなりません。そこで1人当たり週5時間、年間240時間のZOOM研修を行ってきました。この研修は大学のように必修科目と任意科目があり、社員は定められた数の研修を受講するというものです。「仕事が忙しい」という社員、「こんなのやる意味があるのか」という社員を「ごちゃごちゃ言わずに参加!!」と、研修を受けさせてきたテンポス。今では、テンポスではZOOM研修は当たり前の文化となり、今もなおカリキュラムはどんどんレベルアップしています。社員の大半を物売りからコンサルもできる営業マンにしようとしているのです。勉強は自主性に任せていられません。新しい取り組みが辛いと人にとっては、テンポスは大変な会社といえます。
賞与は公開制
社員にとって給料を上げるならたくさん粗利を上げることが一番の近道です。しかしこれでは、粗利をあげやすい既存事業を頑張り、新規事業はおざなりになってしまいます。そのためテンポスでは粗利(主に既存事業)の実績以外にも、新規事業での取り組みを評価します。昨年の幹部評価では、既存事業は伸び率、新規事業は取り組み度合いと実績を重視しました。特別賞与「RS(譲渡制限付き株式)等」の支給対象者の選定するときは「新規事業に積極的に挑戦しているか」を要件の一つとしました。チャレンジする社員をしっかり評価したいと考えています。
また、テンポスは賞与公開制です。誰がいくらもらっているか、分かってしまいます。そんなの、ふつうは嫌ですよね。でも、なぜ公開するかというと、説明がつかないことをできる限り無くし、会社の成長に貢献してくれる人をなるべく公平公正に評価したいと考えているからです。賞与額だけでなく評価方法も公開し、賞与支給時は評価方法も含めて説明します。
昨年の冬は、賞与総額の20%を原資とし、部署内で話し合い、自分達で支給配分を決めるという取り組みをしました。仲間目線で見て、上司からは見えないとんでもないやろうと、頑張ってるけどなかなか成果があがらない人は誰かを話し合い、頑張っている人に賞与支給の配分比率を高くするという狙いです。
社員が挑戦したが、失敗したとき
新しい取り組みに挑戦しても失敗したとき評価はどうなるのか。社長の森下は「新規事業の失敗はマイナス評価にはならない」と社内で公言しています。「新規事業というものは単なる実験で、実験が成功するまでは、その間にうまくいかないことが起きても、それをいちいち失敗とは言わない」とのことです。とはいえ、新規事業は大量のエネルギーを注ぎ込んで、それでもうまくいくか分からない難しいものです。手抜きをしようものなら、泣いちゃうくらい怒られます。
仮に何千万円もかけて投資をした新規事業が失敗したとき、その時の事業責任者の評価はどうなるかと森下に聞くと「我々の規模なら、責任者は社長と一緒に進めているだろうから、社長がずっとフォローしている中で、責任者が怠けて事業が失敗した、とはならない。だからもし失敗したなら、責任者と社長は肩を組んで、失敗したぁ、、、と顔をなめあって慰め合うんだよ」と答えました。だからテンポスは失敗を恐れない文化なのかもしれません。でも顔はなめ合いたくないものです。
社員は“変化”を選ばざるをえない空気づくり
入社式や会議など、様々な場面で社長の森下は「困難な道を選べ」と社員に常々伝えています。会社の成長のためはもちろんですが、社員自身の成長のためにも難しい道(変化する道)を選び、知識経験を積み上げて、自分のキャリアを築いて欲しいという想いがあるからです。
また、テンポスは若手からシニア社員、パート・アルバイトまで、工夫改善することが求められます。どんなに小さなことでも、昨日より今日、今日より明日と変化させることが大事だと考えているからです。各事業会社では、「今日、どのような工夫や改善を行ったのか」を日報で提出させるなど、意識付けと行動をさせています。
その中でも通販の(株)テンポスドットコムや、新規事業開発を担う(株)テンポスフードプレイスでは、工夫改善するには視野を広げること、知識を身に着けることが大事であるという考えから、社員は毎日、日経新聞/日経MJを読み、それをヒントにゴールを設定し、朝礼で発表するということを行っています。
アイディアを生み出す人材の育成⇒テンポスの課題
テンポスグループが100年企業として強固な経営基盤を作っていくためにも、事業においては新しいアイディア・新規事業を発案できる人材の育成が課題です。現状、テンポスの新規事業の発案の多くは社長の森下です。発案の量や、質も森下レベルに到達している社員はまだ育っていません。
そこで現在、「成果をあげる」「人格を高める」の観点から役員及び幹部社員向けの研修を行っています。ここでは新規事業の立案や、社員の働きがいの追求など様々なテーマのもと実践的な研修を行っています。
森下は「社員には2つのタイプがいて、改革派と現状維持派がいるが、幹部には全員、改革の練習をさせていく。でも現状維持から抜け出せない人は、新規事業から外し、既存事業をやってもらう」と話します。
幹部社員は役員研修に加え、日々の森下との定例MTGを通して、新規事業の企画から実行までのスキルアップに取り組んでいきます。