
ホシノコエ
広げたアルバム並ぶ色褪せた写真達
懐かしい姿や面影が心に花を咲かす
無邪気な笑顔の側で真面目な顔のあなた
今では懐かしいその表情は記憶の中で眠る
どんなに願っても時間だけは戻せない
螺旋の日々は今日もまた少し周っていく
夜空に輝く誰かの灯火よ
そのやさしい時の重なりは
ずっとずっと語っている
何かを歌っている
ガラスの引き戸の中で少し欠けたカップ
色褪せて茶渋に塗れても捨てることはできない
二つ並んでいるのに片方だけ汚れてく
あなたと"あたしとの思い出"を今日も少しだけ啜る
どんなに願っても時間だけは過ぎてゆく
螺旋の日々は明日もまた少し周っていく
夜空に瞬く誰かの志よ
白檀薫る夏に蝉達と
ずっとずっと叫んでる
何かを歌っている
どんなに願っても時間だけは止められない
螺旋の日々は今もまた少し周っていく
夜空に煌めく誰かの眼差しよ
花火が咲いて散ったその後も
ずっとずっと願っている
何かをみつめてる
そのやさしい時の重なりは
ずっとずっと歌ってる
誰かを守ってる
★以下備忘録★
<作曲の経緯>
この曲はメロディとコードの作曲はかなり早い時期に終えています。時期的にいうと公開済みの「生きる。」「春月夜のアンダンテ」とほぼ同時作曲です。曲ができた時にこの曲は星をテーマにしたピアノバラードにしたいと思っていたのですが、当時の私ではどうにも歌詞が思いつかず一旦お蔵入りになります。
その後2024年7月〜8月頃に再び作詞に着手し始めました。理由としてはピアノ弾き語りカバー曲を2つ作っていたので、ピアノの打ち込みも当時より自信があったこと。前作の「まぁいいや」とは違う雰囲気のものを作りたかったことがあると思います。
そしてもう一つの理由が、この頃丁度セイカフェス2024の開催がニコニコサイバー攻撃の影響で延期になり、当初は「まぁいいや」での参加を考えていたのですが、すでに発表してしまったためセイカフェス参加に向けた新しい曲が必要であったことです。セイカフェスは何か精華町にちなんだものがいいのかな?と思ったのですがそもそも精華町のことを知らなかったため、お隣木津付近に住んでいた友人に精華町について何か知らないかと話を聞いた所「精華町にはその付近では1番大きい病院があり祖母が入院していた思い出がある」という話しをしてくれました。聞く所によるとその病院に長いこと入院していて、その後施設に入り最近亡くなられたとのこと。(祖父様もすでに他界されている)精華町ならではのエピソードではなかったものの、旦那様に先立たれ入院していた祖母様はどんな気持ちで病院から精華町の夜空を眺めていらっしゃったのだろうか…という所から着想を得られそうでこの未完の曲に歌詞をつけて出すという気持ちの後押しになりました。また私の父も小学生の頃に他界しており、母が父のことを話す内容や行動なども歌詞を作る際にかなり参考にしています。
<歌詞のポイント解説>
上述の経緯から歌詞を進めました。Aメロでは現実のエピソードを交え、1番では祖母様の気持ちになり写真を見て祖父様の昔の表情を記憶から呼び戻す様子を、2番では遺族が残された物を大切にしている様子を描いています。少々わかり辛いですが、「あなたと"私との思い出"を今日も少しだけ啜る」というのはカップを亡くなった人に見立ててそのカップを使うことで(少しだけ)まだその人と会話しているような気持ちに浸るという様子です。(なので汚れていくのは自分のカップではなく亡くなられた方のカップです。)これは母がしていた事を参考にしました。Bメロは時間という自然の摂理の中で私達がもどかしくも前を向くしかないという普遍性を、サビは星の輝きを亡くなった人の想いや感情、歌として考えたいと言う気持ちを載せました。また季節感を出すために白檀香る(線香の意味)夏や、花火が咲いて散るなどの表現を所々加えていますが、「星」という言葉はタイトル以外終始使わないようにしました。見上げる人にとってそれは「星」ではなく「人」である必要があったためです。
<曲のポイント解説>
上述の通り歌詞に気合いが入ったのは良いのですが、おかげで曲が仮の段階で5分を超えてしまいました。5分超えると飽きられるというのが通説ですので、少なくとも6分超えは避けたいと曲を見直したのですが、歌詞を削ることができず、考えた方法がイントロとアウトロをほぼカットするということでした。Aメロからいきなり始めるというのは一度やってみたかったのですが、実際にやるとかなり難しく、Aメロ前半のアレンジだけでかなりの時間を費やしてしまいました。また曲のキーはDメジャーにしましたが歌の最低音G3は正直セイカさんには低いと思っています。それでも採用した理由は、いろいろ試した結果得意音域よりもやや低いこのキーの方が歌の歌詞や世界観にあっていると感じたためです(セイカさんごめんよ…)。その分半音転調したときの音の抜け方の違いは効果的だったかなと思っています。いつもはセイカさんの得意キーに合わせているので私としては新しい試みでした。
いろいろと書きましたが、結果としてとてもお気に入りの一曲に仕上げられたと思っています。まだまだ至らない所ばかりではありますが、曲を聴いて少しでも何かの思いが伝わっていただけたら幸いです。
2024.9.8 10%man
<追記>
本曲でセイカフェス2024の歌部門グランプリを受賞しました。
多くの方に聞いていただき賞までいただけたことを大変うれしく思っております。今後とも京町セイカさんの声を活かし、皆様に喜んでいただける作品を作っていきたいと思っております。
2024.12.6 10%man