潮風とシェリー
風が運ぶ波音に耳を澄まし 静かな夜
窓に浮かぶ三日月に笑みを返す 独りの夜
君からのMessege 既読も付けずに
グラスのシェリーと口づけを交わしたら
涙は潮騒の風に消える
夏のなごり残る風を頬にうけ 想いめぐる
線香花火の匂いをふと思い出す 一人の夜
忘れられたCigaretto 火をつけ吸いもせずに
眺めてシェリーと口づけを交わしたら
後悔は立ち昇る火煙に消える
君からのCalling 気づかないふりして
グラスのシェリーと口づけを交わしたら
想い出は潮風と闇に消える
<作曲の経緯>
この曲はVOCAJAZZフェス2024のために作曲しました。投稿祭の存在を知ったのはセイカフェスが終わった辺りだったと思います。XでFFさんがちらほらと創作の様子や参加の意思表明をしているのを見て、以前からJAZZに興味があったので参加したいなと思っていました。そこで少しJAZZについて勉強を始めたのですが、これがあまりにも難しい笑。JAZZはフィーリングだ!なんて言う話を聞きますがあれは嘘ですね笑。クラシックと同等かそれ以上に複雑で理論的な音楽だということがよくわかりました…。時期的に「あたし、ギター弾きのうさぎ」と並行して作らなければいけないこともあり、ちょっとこれは諦めようかと思いました。
そこから暫くして9月の終わりぐらいに友人達と湘南でBBQをする機会がありました。BBQの後浜辺で花火をしたのですが、このとき夜の浜辺とそこにいる人々を眺めているうちに何となく夏の終わりの恋愛をテーマにJAZZっぽい曲が書けそうだなと思いました。そこから作詞と作曲にもう一度着手し、無事完成できました。やっぱりインプットって大事ですね。
<作詞のポイント解説>
ストーリーについて一応私の中で考えたものはあるのですが、今回はその点は解説しないことにします。聞いた人が各々で想像していただけたらなと思っています。
その代わりタイトルにもなったシェリーについて少し解説を。シェリーというお酒はスペインのヘレスで生産される酒精強化ワインです。当時船の上でも傷まないワインとして航海で重宝された歴史があります。またいくつか産地や生産方法によって種類が分かれますが、その中で「マンサニージャ」という種類があります。ヘレスの一部の港町近くの地域で生産されるシェリーで、本作に出てくるシェリーはこれをイメージしています。要するに海と関係が深いお酒な訳ですね。私が湘南で飲んでいたのはウイスキーですが(笑)、シェリーはウイスキーより度数が低く、ワインより高い…程よく強いお酒です。女性にも人気が高く、夏の終わりに物思いにふけながら飲むのには最適かなと思いました。(セイカさんならストレートで焼酎をがぶ飲みしそうですが…)
その他にも、messageがcallingになったり、独りが一人になったり、涙が後悔から想い出になったり言葉の変化でいろいろと主人公の心情を想像しながら聞いていただければと思います。
<作曲のポイント解説>
JAZZが難しいことを知った私の選択肢はただ一つ、とりあえず定番コード進行を使って曲仕上げてみるという事でした。まずはJAZZの王道と呼ばれるコード進行をいくつか試し、思いついたメロディと合わせていきました。また内容がシンプルな分音作りにかなり時間を割きました。いくつか分けて解説します。
◆編成
アップライトピアノ、ウッドベース、ドラム、フリューゲルホルン、ボーカルです。最初はグランドピアノで作っていたのですが、あるときXでFFさんがアップライトピアノで曲を作っているのを聞いて、お、これは良いかもと思い変更しました。よく考えるとそもそも小さなジャズバーではアップライトがおいてあることも多く、そういう意味でもリアリティを感じさせることができたのかもしれません。また今回はトランペットでなくフリューゲルホルン採用しました。聞き馴染みのない方が殆どかと思います。簡単に言うと少し大きなトランペットで、低域を得意とし、より柔らかく、太く、渋い音色がします。JAZZでは割とよく使われる楽器ですが一般的にではないかもしれませんね。正直今考えるとA.Saxでも良かったかなと思ってます笑。
◆サウンド作り
中々生音に近い雰囲気を出すのには苦労しました。特にフリューゲルは元の音源がちょっとデジタルっぽくて色々と試行錯誤しています。(この時点でSaxにすれば良かったのに金管吹きの変な拘りが笑)
全体のサウンド作りも今回はライブハウスで聞くような籠もった音を目指しました。複数のサーチュレーターを使い、リバーブもほぼショートリバーブのみの音作りです。セッション感も重視し楽器のタイミングもぴったりにならないようわざとずらしています。
◆調声
今回はセイカさんも渋さとハリのある声を目指して調声しました。よくCDなどでは柔らかな歌声で収録されたりもするジャズボーカルですが、実際ライブで聴くとむしろ迫力が強く、ダイナミックマイクの低域のこもりがある様な記憶があり、そのイメージに寄せたつもりです。発音もなるべく曲の雰囲気に合わせたハネを出すため試行錯誤しました。また珍しくコーラスはセイカさんのダブリングではなくMaiさんを採用しました。これもライブで同じ声がコーラスしていたらリアリティが失われてしまうという理由からです。Maiさんはセイカさんよりずっと大人な声質なので、このコーラスに大分助けてもらっていると感じる部分もあります笑。ちなみに今回改めて思いましたが、Maiさんもセイカさんと同じぐらい好きな声なのでいつかはMaiさんで曲を作ってみたい気持ちも持っています。(多分だいぶ先ではありますが…)
<イベントについて>
VOCAJAZZフェスは本当に凄いイベントでした。とても刺激になったし、かなり本格的なJAZZを作ってる方もいらっしゃいました。どの作品も音楽的に充実度の高いものが多いので是非聞いてみてください。来年もタイミングが合えばちゃんと勉強して出たいなと思います笑