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3カ月のトライアル期間で無理なくスタート。『見せる保育』で生まれた喜びの輪|保育所まぁむ東大前園
東京都文京区にある認可保育園・保育所まぁむ東大前園。2023年1月に「てのりの」を導入し、行事の様子や食育の取り組みを配信してきました。しかし、当初は保育者の負担が気がかりで、動画配信に乗り気ではなかったそう。そうした中、一歩を踏み出した理由とそれによる変化を取材しました。お話してくれたのは、伊藤朋子園長とてのりの担当係の武田実里先生です。
気になる動画配信も、
保育者の負担が懸念で進まず
東大前駅から徒歩2分。
園の入口には、毎月発行する園だよりや給食だより、英語のニュースレターなどが掲示されています。
「このおたよりはみんな、連絡帳アプリで配信しているんですよ」
そう教えてくれたのは、伊藤朋子園長です。
ICT化を推進している同園では、保護者とのコミュニケーションに連絡帳アプリを導入。その他、園での子どもたちの様子を伝える手段として、写真販売も行っていました。
伊藤園長が最初に動画配信に関心を持ったのは、コロナ禍。
系列園で保育参観をZoomで配信した園があると聞き、「うちの園でもやってみたい」という気持ちがわいたそうです。しかし、職員の負担が増えてしまうことから、なかなか決心できずいました。
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初のZoom配信は、想像以上の保護者満足度
でも、続けるには負担が大きかった
「子どもたちが給食やおやつを食べている姿を見たい!」
悩む伊藤園長の背中を押したのは、保護者の声でした。
手作りを基本に、こだわりのお米やひじき、切り干し大根など自然で優しい食材を使った給食が魅力の同園。コロナ禍に実施した保護者アンケートにも、食に関する声が多く集まりました。
そうした保護者の声を受け、伊藤園長は2022年10月にZoomのライブ配信を試みることに。ハロウィンイベントで仮装してお出かけする様子やハロウィンカレーを食べる様子を配信し、結果は大好評でした。
(伊藤園長)「1回限りの特別企画だったのですが、保護者の方から『もっと見たい』というお声をたくさんいただいて。あまりに喜んでくださっていたので、職員とも続けていきたいねと話していました」
しかし、イベントを進行しながらの配信はテレビ中継をしているようなもの。リアル配信だからこその気遣いもあり、職員の負担に対する心配は拭えないものでした。
はじめやすく、終えやすく。
3カ月のトライアル期間で業務量を確認
そうした中、本社から紹介されたのが、動画配信アプリ「てのりの」でした。
保育者の負担の面から敬遠していた動画配信が、
てのりのを使うことで無理なくはじめられるかもしれないーー
そうした本社の思いもあり、2023年1月に「保育所まぁむ東大前園」と「保育所まぁむあざみ野園」、2月に「保育所まぁむ大宮園」で導入がスタートしました。
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保育所まぁむ東大前園の運用でハッと気づかされたのは、はじめてみて、やはり負担が大きかったという際に終えやすいようにトライアル期間を設けたこと。1月~3月はトライアル期間として保護者に周知し、職員の業務量の負担を確かめていきました。
(伊藤園長)「わたしにとっては何もかも新鮮です。時代でしょうか。若い先生はサッと使いこなして、上手に編集もしてくれる。トライアル期間に節分やひな祭りのイベントの様子を配信しましたが、保護者の方も喜んでくださっています」
伊藤園長も、保護者からの期待を実感することが多いとのこと。
アクセスコードがなければ視聴できないといったセキュリティ面は保護者にとっても安心のようで、導入時は保護者全員が動画視聴に関わる同意書を提出してくれたそうです。トライアル期間で手ごたえを得た同園は、2023年度からは「てのりの担当係」を決め、本格的に導入することを決めました。
『見せる保育』を大事に。
動画に慣れ親しむ若手保育者の意欲にも
入社3年目で、てのりの担当係の武田実里先生にもお話を伺いました。
(武田先生)「てのりののお話をいただいたときは、現代的だなっていうのが第一印象でした。保護者の方も喜んでくださるだろうなと思いましたし、わたしも就職活動のときにSNSなどで園の様子が動画で配信されているのを見ていたので、『うちの園でもできるんだ』というのがうれしく思いました」
撮影・編集・配信と一連のプロセスを担当する武田先生は、編集に時間がかかることはあっても苦にはなっていないといいます。むしろ、「やりたい」という気持ちが強いそう。
(武田先生)「行事だけではなく手遊びの様子といった、普段、保護者の方に伝えることができない場面を伝えるようにしています。『子どもが普段、口ずさんでいる歌はこれだったんだな』とか。見せる保育ができるのが、てのりのだなと思います」
取材に訪問したこの日も、水耕栽培で育てた小松菜を収穫する様子を撮影。園の特色である食育につながるシーンも、意識的に取り上げているそうです。
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撮影・編集・配信のコツ
「場面展開は多めに」「保育の声はそのままに」
まずは月1回配信を目標に運用をスタートした保育所まぁむ東大前園。
園内にあるiPad4台のうち1台を使い、動画を撮影。編集はiMovieを使い、できあがったものを伊藤園長が確認し、配信するという流れです。
◎保育所まぁむ東大前園の場合
保護者が飽きないように場面展開を多くする(子どもたちの表情、後ろ姿、手元、製作物のアップなど)
動画の長さにはこだわらない
動画の右下には場面を説明するテロップを入れて、伝わりやすく
子どもたちの楽しんでいる声や保育者の声かけはそのままに(気になる時はBGMを付ける)
コメント機能は使わず、リアクション機能のみ活用(「お返事しなければ!」というプレッシャーを避ける)
配信時間は保護者も視聴しやすい17時に設定
遅番の職員が「今日は配信がありますよ」と保護者に声かけをする(アプリのため通知も届くが、対面での声かけを大事にする)
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(武田先生)「てのりのでの配信は、ぽんっとアップロードを押すだけ。手軽なので負担はありません」
撮影や編集は空いた時間に行っているようですが、その時々の状況に応じて他の先生が保育の時間を交代・調整してくれることもあるとのこと。こうした温かいチームプレーが、継続のコツとなっているようです。
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親子で繰り返し動画を見る姿。
保護者の喜びが、保育者の喜びにつながる
動画配信をはじめて半年。
保護者から反応をもらうことも多くなってきました。
(武田先生)「連絡帳や送り迎えのときに感想をくれる保護者の方が多いんですけど、なかには、お子さんと一緒に見たそうで、子どもも自分が写るので『いた!いた!』『もう1回!もう1回!』と繰り返し見てますというエピソードを送ってくださった方もいました。すごくうれしくて、ほっこりするなと思いましたね」
そう話すお二人は本当にうれしそうで、明るい表情をされていました。
そして、親子で一緒に動画を見て、子どもの育ちを喜びあう姿は、てのりのが目指す姿でもありました。
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(伊藤園長)「若い先生たちが本当にがんばってくれています。それが保護者の喜びにつながっていて、また私たちもがんばろうと思える。今後も、日常的な保育の場面も配信していきながら、より身近に感じてもらえるような園でありたいですね」
保護者の喜びや寄せられる期待を実感できることが、「続けたい」という気持ちや次のチャレンジにつながっているようです。
ーー伊藤園長、武田先生、取材にご協力いただきありがとうございました!
◎保育所まぁむ東大前園
東京都文京区にある認可保育園。0歳児から2歳児まで定員26名の子どもたちが通園。こだわりのお米やひじき、切干大根など自然で優しい食材を使用した給食が子どもたちにも大人気。ほか、外部講師によるリトミックや外国人講師による英語レッスンなどの取り組みを行っている。
https://www.mom.ed.jp/hoikuen/t_toudaimae.html